四ノ原早紀という鏖殺少女4
四ノ原早紀という少女は、世界を滅ぼす少女である。しかし、本人にはその情熱がなかった。彼女は今までやって来た事で躓いたことがない。
故に、情熱を入れるべき対象に出会わなかった、否。出会ったが、袖にされたのだ。
「いやいや、君の気持ちはボクも嬉しいと思うけどね」そういって怪人は柔和な笑顔でバッサリと一刀両断した。相手は未来を識る怪物、魔人の類であった。
早紀は親の要求する高学歴を実現し、早々に全過程を終えた。彼女は名門女子校の生徒のように振る舞っているが、実体は虚構に塗れている。
簑笠府イリスが新庄幸人に虚偽を申せない、と言う縛りが有るが、四ノ原早紀は新庄幸人だけでなく、許嫁の真行院幹雄にも虚飾で本性を隠している。
「御姉様、何か気に入らないことでもあるのですか?」四ノ原早紀のシンパの一人、対外的には彼女は親友の一人であるが、その親友の正体は異性に興味がなく、同性の、四ノ原の高遠な態度に参ったシンパの一人である。
「愛留、そうではないのよ」四ノ原早紀は先日の新庄幸人との会合で、話した内容に何かしら感じるものが合った。何かしらの違和感。
「そうね、"親友"の助けになって欲しいというのは、私の本心の筈。そして、彼は、新庄君は私の願望に見事に応えてくれた。イリスの日光の克服は、難しいと思われた。だからこそこれは彼には何か貸しを返さなければいけない」
「御姉様はつまりその新庄ってのが気に食わないんですか?」
「違うのよ、彼は出来すぎていた。勿論、偶然というのも考えうるのよ。それが今回はこれだっただけ」と早紀は話を打ち切った。
「御姉様……(珍しい。真行院と違う男の話をここまで饒舌にするなんて)」愛留が戸惑いを隠せない。
四ノ原早紀は、許嫁である真行院幹雄と添い遂げる、と。そういう話だったはずだ。
早紀本人も、どうしてこう新庄幸人が気になるのか?理解っては居ない。
今この時点では。
「あれは?」四ノ原早紀は、新庄に許可した、女子校の旧校舎の、託宣で使う、ターニングテーブルを使って、イリスの命に関わる発作を予め知る予定だったと言うから、そこへ新庄幸人と簑笠府イリスが来るのは当然のはずだ。
だが、その様子は違和感がある。
指を絡ませた、新庄幸人と、簑笠府イリス。確かに出会って、二人きりの部屋で会合をした。
だが、それは異能の昼歩行者の為であって、それ以上の繋がりは必要がない筈だ。。
「本当に?」四ノ原早紀の頭の片隅にその言葉が鳴り響く。
「"幸人さん"、じゃあ此処まででいいです」と言ってイリスは手を離した。
「そうだね、これからは他の人にも遭遇数するかもね」幸人も納得済みである。
「は?え?」早紀は狼狽えた、彼女らの言動ではない。狼狽している、当惑している自身と、喜びと喜悦を感じている自身にである。
(新庄君は、自惚れでなければ私に想いを寄せていたはず。それは先日の、イリスに会ってくれ、と言う話までは正しかった。だがあの距離感はなんだ?)
そこへ、新庄の言葉がよぎる。
『彼女は、昼歩行者のデメリットして、吸血鬼みたいな生き方を強いられるようになった(云々)』
『体液を欲しがるようになった、それは汗で誤魔化してますがね』
「ぷっ、アハハハハハハ!」腹を抱えて嗤う四ノ原早紀。同時に今までの倦怠感に苛まされていた自身が、今では驚くほど消え去っていたのを自覚した。
「ははーん、そうですが。そう、新庄君、君は私に隠す事をして、それで先日の会談での違和感、とまでは行きませんでしたが、その尻尾は隠しきれなかった」
「いやいや、これは明らかに不貞ですよね。だって、新庄君は私を好きな筈です、それが今ではイリスとの不貞を隠しながら、私に隠し通せると思っている」早紀はウットリとした笑顔で新庄幸人を慈愛の目で見つめていた。
「これは、私がイリスとの肉体関係を疑ったら、新庄君はどうやって言い繕うのか?ハハハハハハハ、可笑しい!!彼がどう言い訳するのか?これは目を離せませんわ!!」
早紀はずっと腹を抱えて嘲笑っていた。
彼女は次に新庄幸人が同掌で踊るのかに、楽しくて楽しくて仕方がなくなってきたのだ。




