幻想ちゃん2
「君が日光を克服できたのは僥倖としては別に地下街を通りながらもう少し話をしようか?」何某は簑笠府イリスを誘って地下鉄に隣接しているモール街を散策しようしていた。
「まさか、先程の相談の話ですか?」
「そうそう。君がどういうツラで、新庄幸人と向き合うって話の現実的な着地点についての提案だよ」
「珍しいですね、あなたがそう言うのに知恵を貸してくれるとは」イリスは何か裏があると思った。
「信頼がないねえ、まあ自身の言動に説得力がないってのは把握してるがね、それとは別によくよく考えたら君には対人対応経験が無い、というのを失念していた。その詫びみたいなものさ」
「たしかに私には欠如していないとはいえません、だからこそ巧くやれなかったのは痛感しています」
じろりとイリスのその言葉を咎めるように何某は睨んだ。いやイリスが何某の不興を買った訳ではない。何某はそういうのに関心が薄い。
「巧くやれなかった、か。時間には間に合った、それ以上を望むのは方向性としてはいけない。反省会も良いが、失敗した時のリカバリー術を覚え給えよ」
「失敗も何も、チャレンジする機会が突然来たので、もうどうしろと」イリスは自身の痴態に関しては出す順番が行けなかった、と考えている。反省しているのだ。
「いやさ、失敗は積み給えよ、そこからどう出るのか?距離は詰めた。ここまでは出来すぎだろう。後出しで批判というのは無限に可能だ。行動は迅速に、後は時間が解決する。人は都合のいいことを忘れたり覚えてたりするからね。では具体的なアドバイスに行こうか?」
「本当に宜しいですの?」イリスは食いついた。喉から手が出るほど欲しい物である。
「いいかい?君はド変態のドスケベ、これはもう覆せない。というか正体なんだから何時かは露見する。これに関して取り繕うな。しかし、別の方向性でカバーできる。例えば」
「例えば?」イリスの忍耐はもう切れそうである。
「君は地獄の住人だ。そこから這い上がった。だが何時までも現世には居られない、故にだ。里帰りはお手の物だろう。ならばこそ"地獄へ堕ちる時の道連れ"ならば君こそ適任は他にない」何某はそう言って微笑んだ。
「同行者、ですか?」
「そう言うことだね、今のうちに発声練習しておこうか?」
「恥ずかしいですね」イリスは全裸になるより恥ずかしいと思った。それは思春期でこそ許される様な方向性の発言ではないか?と。
「いやいや、股を自ら開いて強請る以上の羞恥がこの世に有るのかよ?」何某は呆れた。其処まで行けたなら何を心疾しいことが有るのか?と。
「……地獄の道連れとして同伴して下さい、って恥ずかしいですねもう!」イリスは羞恥で頬を真っ赤に染めた。
「いやいや、問題なかったね。『地獄の道連れとして同伴して下さい』、ふむ録音も問題なく出来た。まずまずの出来では無いかな?」と何某はヒラヒラと録音機を手で弄んでいる。
「図りましたね!!何を人に言わせて、それを残しているのですか?!」イリスはそれを奪おうと手を伸ばした、が何某は触れさせもせずに録音機を懐にしまい込んだ。
「その音声データをこちらへ寄越しなさい!今なら言い値で買いますが?」イリスは性交よりも恥ずかしいその音声を抹消したいのだ。
「交換条件と行こうか?この音声データがこの世から消えて欲しいなら、それより恥ずかしくない奴を寄越して貰おう。とりあえず君のスマホの自撮り画像で一番どうかしてる奴で手を打とうか?」ニヤニヤと何某は得意げそう。
「ほほう、私も舐められたものです。買いましょうか、その挑発」イリスはスマホを弄って画像を出した。
「それを新庄君に送れ、それで商談成立と行こう」何某は満足そうだ。ニヤニヤと要望を飲めるか?と言わんばかりである。
「送信しました」イリスにはこういう行為はハードルにすらなってない、何故なら"それを何時しようかな?"と考えていたのである。
「即決だな!疾すぎる。数秒くらい逡巡したり、躊躇し給えよ!」何某は素でそう言った。
「まあ、これでとりあえずは、なんとかなったか」何某は天を仰いで何かを見ている。この人物がそうしているという事は、今何かが在ったのだ。
「では、この辺でボクは失礼しよう。長々と付き合わせてすまなかったね」と言うが何某は何も悪びれていない。当然という態度である。
「あ、返信が。ヤバい……」イリスは何かが新庄の逆鱗に触れたのか?と心配になった。
「ふははははは。末永く連れ立ち給えよ。次の報告が楽しいものだとボクは願っているよ。くれぐれもつまらないログを見せてくれるなよ?」
そう言って何某は雑踏に消えていった。イリスはそれを見ることなく真っ青の顔で、返信の文面を考えていたのであった。




