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異能生産(Dehumanize)  作者: 赤石学
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4つの塔、4つ首の怪物、その第1の塔、ハノイの塔


新庄幸人は自室の部屋に戻って、幾つかの荷物を確保していた。ノートPCと携帯の充電器と、ゲーム機だけである。


母親とは一言だけ「当分家に帰らないから食事はいらない」と伝えた。

母親は何も言わずにそのまま部屋に戻って籠もっていった。


母親は仕事を辞めてから急速に親ではなくなっていった。父が健在で家に居た頃はまともだったが、その兆候は有った。

「専業主婦がやりたかった、夫の稼ぎでは生きていけない」と仕方なしに共働きをしていた。という主張だった。


その頃には新庄は母親が狂っていくという確信があった。実際、父が単身赴任になって、そこから父の目が消えていた母は己が願望を抑制することがなくなっていった。


新庄の、女性が苦手なのと、女性を紳士的に扱いたいというよくありそうな性格が形成されていった。

母親が、夫のせいで婚約者と結婚できなくなった、というのを吹聴し、そんな乱暴な男になるのは嫌だと育成されていき、

しかしながら、父親の感情論的な振る舞いを恐れて、他者の機嫌を伺うようなそんな卑屈になっていったのも。


だからこそ、新庄幸人は男は静かに理性的であるべきだし、女性には紳士的に在りたい、と願った。

同性の友人として、穏やかさと強さを兼ね備えた真行院幹雄は理想的な友人だし、異性としては四ノ原早紀が理想的な存在である。


だからこそ、二人が婚約者同士というのは納得がいったし、理性はそれに反対していない。

だが、燻る奥底での感情は、どちらも自分が入る隙間がないというのを認めたくなかった。


いずれ、どちらとも親交が無くなるであろう、だからこそ何かが新庄に無ければいけない。

相応しい、自分に成れるだろうか?それともこの仮面に慣れるだろうか?

吐きそうだ、こんな時は覇主皇道に耽けるのが一番だ、と。


昨日初めて会った女との情事に、その内容に吐き気を感じた。

違うなあ、そうじゃない。ああ、そうか、彼女を素直に犯せなかったのはそう言うのではない。


幹雄や、早紀と同じだ。彼女もいずれ、新庄から親交が途絶えるであろうことだ。

いつか来るその別れの原因が嫌だ。真行院が結婚してしまえば、独身の自身が既婚者と仲良く出来るか?多分出来ない。


簑笠府イリスも、婚約者が居る。それと比べて自分はどうだろうか?今は若いから言い訳が出来るが、その内言い訳が出来なくなる。

爛れた肉体だけの関係であるが、契約恋人みたいな流れになったが、その契約は何時まで更新できるのか?

新庄の、現実に向き合うのを避けているのは、いずれ自身がなんの社会の役に立てない、と識るまでしか続かないだろう。


こんな男に何故何時までも付き合ってくれるのか?そんな女がこの世に存在するとは思えない。

母親すら、肉親の情を、疎いと思っている。父との関係を10年以上後に、過去に遡及して自身の責任ではないと言い出す始末だ。


この世の、一体何を担保に誰を"地獄の道づれ"に出来るのか?


吐きそうだ、自虐的な、それでいて合理的な理性が「そんなものはない」と心の奥底から這い出てくる。

死にたい、イリスには悪い事をした。やってしまった、犯してしまった。自分だけは親の轍を踏みたくなかったのに。

それしかなかった、として片付けて良いのか?いやよくない。


目眩がする。世界が揺らいでくる。まるで異能生産(Dehumanize)のノルマを熟さず日を跨いだかのようだ。死にたい。


「地獄の道連れとして同伴して下さい」イリスの声が聞こえた気がした。幻聴か?それにしいては再現性が高い幻聴であった。


どうして?理由は一つである。今までの新庄幸人に一番近づいた女性を、家族抜きでナンバリングすると四ノ原早紀が20cmであったなら、

簑笠府イリスは"新庄との距離をマイナス15cmまで詰め寄った事"で世界一位に躍り出た。その状態で囁かれた。彼女の声を一番近くで聞いたからだ。


ピロン。スマホが通知を知らせてくる。簑笠府イリスである。受け取った内容は「エロ写メ自撮り」であった。

なんなんだこいつ。シャッター押した指が見事に局部を隠した絶妙なアングルで、全裸写真を送ってくるのである。


間違いないこいつは真性のド変態であろう。取り慣れてる感が半端ない。どうしよう?裏垢でこいつ全世界に公開している可能性があると思った

問い詰めなければ。


新庄幸人は気づいていない。今まで彼の背後にのしかかろうとしていた怪物が、雲散霧消したことを。

人には見えない、その怪物を『破滅の塔』という。


それは未だに名付けが為されていない存在を確認されていない怪物である。

新庄幸人は3つの首を持つ怪物の一人である。


1つ目はハノイの塔、2つ目はジグラット、3つ目は破滅の塔。

新庄幸人はハノイの塔の一番上の円盤でもある。彼がこの世界から移動した時に、全ての円盤が破滅の塔に移動し終わったならこの世界が滅びるという怪物である。


新庄は一番上の円盤としてまずはジグラットに置かれた。次に破壊の塔に移動した。

しかし、誰もまだ認識していないが、この怪物は4つの首を持つ『塔』である。誰かが4番目の塔を打ち立てたのである。


その塔の名は「奈落の石の塔」。奇しくも地獄の道づれに相応しい者が、これを打ち立てたのである。


この軌跡と、奇跡を、未だなお誰も気づいていない。当事者も勿論知らない。


それ静かにこの時を待っていたのだ。


新庄幸人は簑笠府イリスに「ちょっと問い詰めたいことが有るけど良いかな?」とだけ返信して家を勢いよく飛び出た。

まずは、全世界に自身の痴態を配信しそうなヤベー女をどうにかしなければいけない。


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