簑笠府イリスという幻想少女9
新庄幸人が目を覚めた時に一瞬此処が何処かわからなかった。が、すぐ隣に居る存在の吐息ですぐに思い出した。
新庄幸人という人間の願望、しかし叶わないというその存在の名を「地獄への道連れ」という。どんなに過酷でも同行者が居れば紛れるというもの。
遂に根負けして、会ったばかりの簑笠府イリスをそうと受け入れた。
「今何時?」幸人はお腹が減っていた。
「お昼を回ったくらい」イリスはスマホの時刻を見せていった。
「……」さてどうしたものか?幸人は話題の選出に手間取った。下手なこと言えば即おっぱじめようってなるのがこの小悪魔イリスである、否。淫魔である。
「私達って相性が良いと思うんです」イリスはなんとなしに話題を振ってきた。
「何という露骨な」
「違いますよ!私はただこの部屋の温度設定に不満が出ない貴方を好ましく思っています。」
「確かに!」幸人は学校で冷房の温度で日々論争が起きるのにウンザリしている。寒すぎる、暑すぎる。こういうのとは一緒に居たくないと言えよう。
「ちなみに、今の設定温度は25℃、更に蛇足ですが四ノ原早紀は27℃が最適と言っています」
それを聞いて、仮に四ノ原と同室したら面倒くさい事になりそうと思った。少なくとも夏は控えようか。
「それはさておき割と早く起きたね。夕方のミッキーへの説明にはまだ時間が有る、どうしよう?」
「買い物に行きませんか?」
「何を買うの?」
「色々と、幸人さんはここを拠点に暫く居るそうなので着替えを買いたいですね」
「自宅から持ってきてで良くない?」
「私が書いたいんです。良いじゃないですか?全額私が出しますし」と言ってイリスは財布から裕福層が持っていそうなゴツいカードを出した。限度額が怖くて聞けない。つか学生が持てる物のか、それ。
「その代わりと言ってはなんですが、全部私が選びますので幸人産の意見は聞きません」
「まあ、きせかえ人形を務めさせてもらうかな」
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「ここは?」
「うちが懇意にしているお店です。まずは採寸から始めましょう」
「うわあ、オーダーメイドはじめてー」幸人は直立不動になりながらサイズを測られている。
「本当は、試着とかで"色々やりたかったんだけど"」イリスはニヤリと言った。
「やめて!!」
「まあ、手持ち無沙汰なんで何か雑談でもしましょうか?」
「昼飯の話?」
「昼はルームサービスでいいじゃないですか?それで幸人さんに楽を覚えさせたい」
「そうしたらもう、食事の用意とか面倒で戻れませんし」イリスは邪悪な計画を楽しそうに話す
「人の価値観、特に金銭感覚壊すのは辞めて!!」
「冗談はさておき、異能の頒布方法についても、話し合っておきましょうか」
「一応、女は占い、男は出会い系で配るって、感じになっているね」幸人は四ノ原と幹雄の方針を語った。
「まだ、それで十分というわけではないですよね?」
「なにか腹案は有るのかな?」幸人はイリスの発想力がどんな答えを出すのか?気になった。
「私と同じです。不治の病、間に合わないかもしれない手術、命の先がない人を救うというのは如何でしょう?」
「……、ありだな。ただ弱みに付け込みたくないかな」
「ええ、方向性はそれ、ですがそれを助けたいと乞い願う人も居ると思いませんか?」
「良識的な、善意の医療従事者、もしくは肉親、友人。その辺りか。それならミッキーの方針にも沿うな」
新庄はそう言ったがその線はとてもいいアイディアに思えていたのだ。




