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異能生産(Dehumanize)  作者: 赤石学
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簑笠府イリスという幻想少女7


「んで、どうやってミッキーや、四ノ原さんを言いくるめるつもり?」ホテルに戻ってきた新庄幸人は簑笠府イリスに問題の先送りに対して問い詰めた。

「んー、せっかくのシャワーですけど幸人さんも一緒に入りません?」イリスははぐらかした。


「で?どうやって四ノ原さんを言いくるめるつもり?」幸人はもう流されない。強い意志で絶対に流せないであろうワードで詰め寄った。

「……ちっ、もうちょっと下半身の声を聞きませんか?」イリスはヒントを出しすぎたか?と思った。


昼歩行者デイタイムウォーカーは、そうですね。強い理由がない、ノルマを満たすにはそれ相応の他者を害する能力がなくてはいけません」イリスは異能アビリティーを昨日知ったとは思えない程に正確に把握していた。そこも幸人には気になる所である。イリスの表情に見入る。

「簑笠府さん、異能アビリティーに詳しすぎない?説明の手間が省けていいけど、四ノ原さんとは今回の件でそんなに密に連絡取り合ってた?」幸人は気になったことを訪ねた、イリスは幸人が見ているのを良い事にニヤリとしてウェットティッシュでイヤラシく股間を拭いている。しまったこれならシャワーに先にすれば良かったと思った。それなら服を着せる様に仕向けられたと思った。


「ええ、詳しいのは昨日今日の事では有りません。実のところ貴方が死にかけて、異能アビリティーを得る前からオカルト案件に関しては私達二人は聞き及んでいます」イリスはとんでもないことを言い出した。

「は?知ってた?」


「はい、10年以上前でしょうか。私達、簑笠府イリス、四ノ原早紀は未来を知らされました。それは世界の滅亡という事実でした。以来私達はそれぞれが準備を整えていました」

「え?未来予知?ああ、そういえば」新庄幸人は先日、託宣の異能アビリティーを作成しようとしたが、相談しなければいけないという流れになったのだ。


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「未来予知を過去にして見せたのはあなた唯一人しか居ません、俺らは生き残りたい」幹雄は頭を下げて言う。新庄、四ノ原もそれに倣って頭を下げる。


「……君達が予想している未来観測というのはどう見えると思っている?」何某は出された紅茶を飲みながら鋭い視線で以て言い逃れを許さず答えることを強いた。

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「はい、その何某なにがしさんという方です、まあ真の名は知らないので適当に呼んでいたら、本人も訂正しないのでそのまま定着しているんですが、その人が未来予知をしてみせました」

「……えーと、念の為に確認したいけど、何を示してみせたんですか?」


「競馬、競艇、などの公営のギャンブルですね、あの人は未来予知のギャンブラーのジレンマだと言っていましたが」

「未来予知のジレンマ?」


「つまり、正確な未来予知は不可能だと言っていました」

「じゃあ、意味ないじゃん」


「いえ、この場合は本当に分かるようです。問題は未来予知の正答率が高ければ高いほど、他の方がギャンブラーの動向だけを見て当たりを引き始めます」

「あ、そういう意味なのね、つまり一人でも未来予知者がいるとそうでもない凡人全員がギャンブルで勝ち続ける、そして賭博場を開く胴元が店を閉めちゃう故に全勝できない、これが未来予知のギャンブラーのジレンマ。つまり当たると理解って上でハズレを引かないといけない、するとかなり高額を失わないといけない訳だね」


「その通り、ご明察です。私達は正確な未来予知を知りました。ええ、このオカルト案件に因って世界が滅ぶ、と」

「しかし、そうなると君達はジレンマを回避するためにハズレを引いている様に動いている、と」幸人は普段はもっと愚鈍だと思われたが今朝方に目の前の少女と性行為をして賢者タイムに突入していたのだろうか?とも考えていた。


「なお私はどうもそういう淑女タイムがないみたいです」

「嫌な人だな君は!ってそこまで理解が有るならそういう賢者タイムの男を、君側から二回戦目に誘うのは悪手じゃない?」


「いえ、わたくしと幸人さんはまだ逢瀬の1度目です。貴方の冷静沈着さが何時まで続くか?を探るには初夜の直後しか無いと思いません?」

「ああ、言えばこういう……つまり対策は全部済んでいるってことかな?」


「これまたご明察です。ええ、今回はレアケースの中でも最高レアを引きました、故に割りとアドリブとライブ感で流していますが綱渡り感が半端なくて独りが怖いですね」イリスはようやく年相応に背伸びをしている表情を見せた。その弱々しさが幸人には綺麗に映った。こういうのも行けるのか?幸人は自身の興味の多さにウンザリしそうになった。

「何処らへんが当たりだったのさ?」


「何某さんは、『君達の前に死者リビングデッドと、殺すべき生者が現れる。それを殺すか?活かすか?対処しないといけない』とアドバイスをくれました。四ノ原さんは殺すべき人間を殺すと決めていたようです」

「殺すべき人間、異能アビリティーではなく、普通の人間か」幸人は自身を殺した耕造の事を考えた。身内から犯罪者が出る。これは破滅の兆候だろう。


「それから、これは四ノ原さんには内緒なのですが、わたくしには何某さんから第三の選択肢が提示されました」

「第三の選択肢?」


「殺すか、活かすか、助けを求めろと」

「……助けを求めた?」幸人は何故イリスが自身に全てを投げ売ったのか?ようやく見えてきた。彼女には先が無かったのである。


「だいたい、分かった。一応聞いておくけどその何某なにがしってのが今回の真の黒幕でマッチポンプとは思わなかった?」

「まさか、あの人の目的は『最前列でこの行く末を観覧したい』であって、これ以上は無いかと」


「ああ、そうだね。あの人のヒントの出し方なら『本当につまらない所でロープから落ちるな』って感じは見えてくるね」幸人は託宣の異能アビリティーのやり取りが腑に落ちた。

「ええ、そこは間違い無さそうなのは早紀との共通見解です。あの人はその点では信頼できます」


「……へえ、そうか、俺も何某なにがしさんに色々聞いておくかな?でさ、簑笠府さんの昼歩行者デイタイムウォーカーの強さってどう説明しちゃう?」

「それはもう、決まってますよ。デイタイムウォーカー(吸血鬼)ならば"鏡に映らない"ですよ」


「ああ、なるほど。そこは真の異能アビリティー無敵アイギスではなくて精密雁札(Supernote)の隠蔽の一つだけで説明付いちゃうね。そこまで想定してたのか」

「ええ、勿論。もっともわたくしがオカルト側になるとは思ってませんでしたが」イリスはニッコリと微笑んだ。


「それからわたくしのことは簑笠府ではなく、イリスとお呼び下さい」

「会って即日で名前呼びは早いんじゃない?」幸人は重いなあと思った。


「いえ、四ノ原さんの前では是非にと。わたくしは彼女にだけは負けたくないのです」

「どうして?」


「早紀はわたくしの親友ですが、故にこの勝負はわたくしが勝ちます」

「何故張り合うの」


「勿論、彼女が『世界を滅ぼす』と決めているので。わたくしは世界の未来を守りたい。故にこのアンチオカルト活動です」

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