簑笠府イリスという幻想少女7
「ポテトがジャンクでとても美味しい。やはり朝食べるマッ○は格別ですね」イリスは美味しそうにポテトを摘んでいく、そして時折こちらを見つめながら指をぺろりと舐める所作はとても艶めかしい。昨夜の彼女との情事を嫌でも思い出させる。
「なんで、窓際の席で食事するんですかね」新庄幸人は奢ってもらったものを食べているが、気が気でない。窓際に向かって座るこの席を外から誰かがこちらを見たらイリスの股間に目が行くのではないか?と心配で味わっている余裕がない。
イリスの今の状態は、ホテルでの性行為からコートだけ羽織って日光浴という名の野外露出、そしてそのまま裸にコートだけ羽織ってマッ○に入店したのである。
「では、幸人さんには不名誉な役回りにさせたのと、幾つかの私の非礼に関してお詫びします、ですがその前にしなければいけない説明をさせてください、その後に私を思う存分気が済むまで扱ってくだされば幸いです」イリスは真摯な眼差しで喋りだした。
「聞くね。どうしてあんなに、性急に事を進めた?昼歩行者を付与した、だけで済む話じゃなかったのか?」
「早紀や、真行院君は"異能は犯罪者、もしくは準じる者が複数持てる"として、異能の頒布にとても慎重です、ここまでは正しいですか?」イリスは淀みなく話した。
「まあ、実際にミッキーによる異片鑑定の結果から、『スキル枠複数の人物が例外なく不良というか半グレが占める』と言う結論から法治国家に対して犯罪行為を行っているものが、破壊の種子である異能を複数持てるのが合理的であるとか、なんとか。言っていたね」
「私には、彼らとは違う視点で、この異能の所持枠決定の評価法則に関して手軽に、リスクがほぼ無く試せるという仮説が在ります。これを説明させて下さい」
「…え?リスキーじゃない方法…本当に?」
「ええ、私は貴方には虚偽は申せないので、それはもうかなりの精度で、彼らとは違う決定法によって決まると見ています」イリスはハムッと残ったバーガーを一口で平らげた。はむはむと咀嚼している。その間説明が止まる。じれったい。
「……正直に言うけど、口の中のものさっさと咀嚼して?話が進まない」幸人は話の先を聞きたい。
「もぐもぐ、その間、おっぱいでもモグモグ触ります?」と言った感じでコートから乳房を曝け出している。もう間違いない、こいつは露出狂だ。ドスケベ、ド変態淑女である。
「はーやーく。で?」
「要するに現行法で決まる、というのはまず有りえません、と私は考えています。ですが真行院君は既に知己が犯罪者になっているからそこに拘っている。だからと言って犯罪を犯して試してみる、というのは自他共にできない、故に検証が進んでいない、と言う所でしょう。ですがそうではないとしたら?今此処で証明してみせます」
「自信がありそうだね」
ニコリと笑うイリス。その笑顔はとても眩しい、がコートの下が普通であればいいのに、と幸人は思った。
「これはオカルト案件、いえ、そうですね、これは集団幻想案件、と言った方がいいと思います。最近のSNSなどでは悪人を吊し上げて、炎上させるのが流行っています。本来、あり得ない異能なんてものが"法治国家の取り決めでは動くわけがない"」イリスはそう言いながら彼女のスマホで撮影した写真をスワイプしていく。
「法治国家のルールは紛れもなく、現実です。勿論、そちらで"スキル枠の数が決定しない保証はありません"。ですがそれとは違う評価の方法があったら?それがオカルト、集団幻想、その類であるとしたら?こちらの方が試す価値があると思われます。法律だけでなく、人間を縛る秩序にはそれだけではない」
「それは一体何なの?」
「道徳規定と私は名付けました。人治、つまり感情で起こした裁判で決められる、有罪無罪が恣意的に決められる茶番。その舞台は人の群集心理の場、SNSとも言えるでしょう」
「これなら、犯罪者に為らずとも実験ができます」イリスはそう言ってスマホの画面を見せた。それは幸人とイリスの性行為直後の様子である。それはもうひどい有様でイリスの股間が、男の精液と、自身の愛液と出血で混ざった物に塗れている、強姦後と言っても納得する画像だった。
「いやああ、それ絶対に俺が悪者じゃんよー!!」幸人は昨今の男性の置換冤罪などの前例が有り、患者のせん妄による事実誤認、それでも僕は悪くない、などと叫びそうになる。
「幸人さん貴方には負担をかけませんよ、今ここで裁かられるのは貴方ではなく私です」イリスはスマホを操作して、自身の裏垢からその写真をSNSに上げた。
その内容は「婚約者が居るのに、会ったばかりの男との中出し不倫ックス、最高に気持ちよかった」という先程の画像を添えて投稿であった。
「うわぁ。これはひどい」幸人は、その写真が明らかに婚約者が投稿しても良いものではない。
「ちょっと待った??」幸人は気になるワードがでてきたのでイリスに問い詰めた。
「どうしました?」
「君、婚約者居るの?」幸人は他人の仲を壊すような人物ではない。
「まあ、居ますね。一度たりとも会ったことはないですが」イリスは「多分父も政略結婚しろとは言わないでしょう」と付け加えた。
だが、その投稿はフォロワー数が多いことも合って一瞬で拡散され、炎上した。
「ふふふ、早速人民裁判が行われましたよ、ふふふ、これはひどい」イリスはその炎上を意に介せずニヤニヤと笑っている
「なんつうか、鉄の心臓持っているよね、イリスさん」幸人はこの御令嬢のペースにどんどん慣れてきていた。容姿は抜群だが、中身は……ゲテモノなのでは?
「昨日までは絶望の日々だったんです、一転、今は最大の幸福を享受している、例えここでなんと言われようと知ったこっちゃない。幸人さん、私に異能の付与をお願いします」
「え?イリスさんはスキル枠、一つでしょ?」
「だからこそです、真行院君に合わずにこうして居るのは、そのためですよ。あの情事も私がこの"女性のクズ"ってなるために協力してもらったんです!私の仮説が正しければ、日付を跨いだ以上幸人さんの今日のノルマをこなしながらもう一つ以上は付与可能だと思われますが?」
「そう言えば今日のノルマは決まってないな。じゃあ、どんな強力な異能が欲しいの?」
「そうですね、真行院くんの異片鑑定を騙したいので、その観察結果を改ざんできる、そうですね『精密雁札』、と言う感じでお願いします」
「ああ、分かった」幸人は彼女の要望通りの能力を思い浮かぶ、そしてイリス付与する、これで余剰枠がなければ失敗に終わる。
だが、新しい能力の付与何ら問題もなく行われたのである。
「うっそ」幸人は驚愕した。イリスの投稿内容な嘘ばかり、確かに今日は彼女は猥褻物の露出をしたが、誰にも見られてないはず。という事は、現行法の犯罪ではなく、このSNSでの人治裁判の結果で犯罪者になったと見て間違いないだろう。
「ああ、これ。良いですね。早速私の能力無敵を『昼歩行者』と偽装しましょう」
「君はさ、これを何処まで昨日の時点で理解ってたの?」
「私は嘘を貴方には言えませんので、今は黙秘権を行使させていただきます」
「まだ言えないってこと?」
「いえ、まずは幸人さん貴方も、この人民裁判で焼かれてスキル枠を増やして下さい、そうですね、例えば写真は昨日のセックス直後の私の痴態が良いかと、おまかせはしますが例えば内容としては『昨日婚約者が居る女とゴムなしセックスで中出しを決めた』なんてのはどうかと。それが終わったらホテルに戻ってお話しましょう」幸人は頭が痛くなってきた。イリスが貞淑な御令嬢ではないと理解っていたが、この女はまずド変態で露出狂であり、理性で貞節を切り売りできる人物なのである。
昨夜の誘惑と脅迫じみた性行為の強要は、ここへ至るまでに全部必要だったのであろう。今なら幸人にも分かる。
そして、イリスの予測どおりに幸人の捨て垢で行われた当該ツイートは、即座にRTされ拡散され、大量のお気持ち表明者によってリプライが荒れまくりたちまちにその投稿は大炎上した。
結果的に新庄幸人の異能のストックスキル枠は3つまで増えた。おかしい、何故女性のイリスが+1で、自分が+2なのだろうか?これは男性差別ではないか?
そのスキルストック数をイリスは『精密雁札』によって隠蔽した。
「四ノ原さんには言ったほうが良くないかなあ」新庄はそういった。
「早紀、早紀とうるさい人ですね。そんなにあの女が好きなんですか?」イリスはそう言って睨んで来た、そしてナゲットの残りを幸人の口に優しく捩じ込んで黙らせた。




