簑笠府イリスという幻想少女3
簑笠府イリスはとても話が巧く、新庄は色々なエピソードを開陳することとなった。
イジメを受けていたこと、幹雄ことミッキーが密かに助力をしてくれたこと、イジメという言葉では収まらなくなってミッキーと二人で往生仕掛けたこと、実際には第三者的には死亡の瞬間を見られたが主観では死んでおらず自称神の胡散臭い申し出を断った秘密のエピソードすら話してしまったのである。
「……へえ、そう。本当に神秘的な、興味深い、神。そしてそのまま?」イリスは用心深く頷いた。
「そうそう、"何故か"一日前に戻っててね、家でご飯食べたのよね」新庄は気軽に言ってはいけないことを言ってしまった。この時点ではまだ気づいていない。
簑笠府イリスは実のところ、目の前の人物が自身を救えるという話を信じては居なかった、が。四ノ原早紀の性格とイリス自身の友情から準備は抜かりなく、そしてその可能性が絶無としても覚悟をしていた。それは無駄ではない可能性が生まれてきていた。
そして……
「じゃあ、そのフシミ天井の履歴、見せてもらっていいですか?」イリスはお互いにかなり遊んでいるスマホのアプリである『覇主皇道;RE』のログインボーナスとキャラ取得履歴をお互いに見せながら、というていで新庄幸人の"1日の時間遡行の証拠"を確認しようとした。
「そうそう、これがその履歴!」新庄は同じプレイヤーということでイリスに全く警戒せずに決定的な証拠を開陳してしまったのだ。
「……へえ」イリスはそれだけを言うことが出来た。本当は齧り付きたい心境である。
20**/0*/11 連続ログインボーナス198日目:召喚石1800
20**/0*/12 連続ログインボーナス199日目:召喚チケット
20**/0*/11 連続ログインボーナス198日目:召喚石1800
20**/0*/12 連続ログインボーナス199日目:召喚チケット
20**/0*/13 連続ログインボーナス200日目:特別指名召喚権
20**/0*/13 SSR フシミ
履歴が可怪しいのである。いや、正確には新庄幸人の時系列の支離滅裂な話が無矛盾であるとイリスも何百時間も遊んでいてよく知っているゲームの履歴が証明してしまっている。
日付の変更と、端末の設定が可怪しいのか?ゲームのソースコードに詳しくないただのプレイヤーのイリスには分からない、が仕様にはない想定外の履歴が端末が物語っていた。
"時間がない"。これは本来考えなくて良いケースだった。"まさか私が生き残れる可能性が本当だった"という幻想、願望が叶うのである。
故にこの展開は準備不足、イリスは四ノ原のような天才ではない。何度も練習して本戦の緊張を練度でねじ伏せる人間である。だからこそ、これからやることに震え上がった。
新庄は気付いてないが、椅子に座って居るイリスの足の振るえが自身でも止められないのだ。
そう、これから。イリスは目の前の男、いや自身を救える人間の、新庄幸人の信頼と、好意を勝ち取らなければいけない。
対人距離が、正しいかどうかは分からない。イリスは外に出れない、そして人に会えない。
日が沈めば人は家に帰る。友人は出来ない。ましてや異性など数えるほどしか知らない。
知っている異性とは、父などの家族、一族に連なる社交界での出会いで知っているものだけだ。
真行院幹雄は理性的であり、荒井庄市は政治家であり、その息子の耕三は分かり易いクズ。
新庄幸人はどうだろうか?幹雄君みたいであればとても厄介だ。耕三の様に下半身で制御できれば楽である。
会って数時間での情報から、新庄幸人がその中間と見積もるしか無い。
いわば、こちらからの積極的なアピールによってある程度はコントロールできる、と思いたい。
顔から火が出そうなくらい羞恥に苛まれるが、今はソレに浮かれる余裕もない。
「新庄幸人、さま」イリスは蠱惑的な表情で、吐息が首に掛かりそうな距離でそう囁いた。




