簑笠府イリスという幻想少女1
四ノ原早紀と新庄幸人は二人で喫茶店に居た。
カップルが二人で訪れるに相応しい趣といった内装である。傍目にはどう見えるか?
新庄幸人はまあ大体、そんな風には見られない、相応しく無いだろうな?と思った。
「そんな事はありませんよ」早紀はコーヒーにフレッシュを投下しながら言った。
「そうかな?」
「幹雄くんが居なければ、私が貴方だったと思いますし」
「つまり、時間差に過ぎないってことかな?」
「はい、常識人で、自己を抑制できる、趣味を持っており、無趣味な人間より遥かにいい」
「無趣味だと何が行けないんですが?」
「人間で遊び始めるんですよ。その点、幹雄くんも、幸人くんもゲームで遊んでいる。誇っていいですよ」にっこりと魔性の笑顔で答えた。
「そう言ってどれだけの人間の人生観を狂わせるんですかね?」
「まさか、私はそんな気は毛頭ありません。幸人君は私が好きですよね?異性として」
「そりゃまあ、勿論。嘘は吐きたくないので」
「ではなぜ幹雄くんから私を貴方に振り向かせるようなことをしないのですか?」
「そりゃ俺はミッキーが好きだし。ミッキーも君が好き。僕はそれを応援したい、友人として」
その答えは早紀を満足させたのか笑顔でこう続けた。
「私も貴方と同じで、友人の貴方が幸せになって欲しい。と思っています」
「でも僕はモテないので……」
「私の一番の親友に簑笠府イリス、という難病に侵された女子が居ます、彼女には君の異能生産(Dehumanize)の話が通っております。
彼女は日常生活で油断したら無惨な死に方をしてしまうほど重い世界でも珍しい症例のもので治療法は確立されていません」
「……弱みにつけこむことになるのでは?」幸人は後味が悪いと思ってそう言った。
「それはどうでしょうかね?彼女は、そう例えば大学に進学できたとしましょう、そこで新歓コンパなどで酔い潰れたとしましょう。この時に彼女が朝まで放置されていたらそこで死ぬんですよ。
彼女の祖母は同じ症例で似たようなケースで早朝に全身火傷で発見されました。
それ以来彼女の家ではどれだけ親友が外に出たくても、それが窓を完全に塞いだとしても、死ぬよりはマシとされてます。
ですが当の本人は『水着を着て海水浴に行きたい、お洒落をして昼間にデートをしたい、朝起きたら朝日で火傷で死ぬ悪夢を毎日みる』と弱音を吐く普通の女性です。
私は幸人くんには親友を預けられると思っています。そして君は私のお願いを無下に出来ますか?」
「……先方は本当に承諾済みなんだよね?」
「ええ、そこは再三確認しましたのでご安心ください」
そこから幸人はしばし逡巡した。
「とりあえず有って見る方向性で話を勧めてください」幸人はこの選択肢を後で後悔することとなる。




