№5 エマ暴走
ワッショイっ!
前回までのあらすじ。
エマは二度の思わぬ執筆活動中断を食らったのだった。
「・・・どうしたのかなあ、今日は集中力がないのかしら」
エマはぶつぶつ言いながら、机上のインクを綺麗に拭き取ると、溜息をつき、コツンと自分の頭を叩いた。
「よしっ!」
エマはその場を後にし、自分の部屋に戻ると、薄着の衣装を身に纏って、豪奢な羽根のついた椅子を持ち運び書庫へと帰って来た。
「よいしょ、よいしょ、ふう。これで良し、気分、高めなくっちゃね」
彼女は三度淹れなおしたお茶を飲んだ。
「やっぱさむっ!ほう、でも心入りましたっ!」
エマはDELUXE椅子に腰掛け足を組んだ。
薄い生地の服に、ほぼほぼシースルーなスケスケ、胸ははだけ露出がやたらとEROMAXな服だ。
彼女にしては背伸びをしているような・・・いや、それだけ本気なのだ。
悪い服だ・・・いや、いい服だ。
その姿はさながら、エマにゅえる〇人のよう。
・・・あのテーソングが浮かんだ人は・・・いい年だねっ。
エマはひととおり、自分のエロさっぷりに酔いしれたあと、
「寒、寒いっ」
上から丹前(異世界なので風なやつね)を羽織り、結局書庫の椅子にまた腰かけた。
目を閉じ、気持ちを高める。
「ふん、そうね、趣向を変えましょうかね・・・思い切って新作・・・新たな境地開拓よ」
白い紙にペンが三度走りだす。
(・・・エマ、BL挑みます)
決意が漲る。
漢のタマの取り合い、くんずほぐれつ入り乱れ 作エマ=ブライド
深夜、誰しもが寝静まる頃、男の部屋に忍び寄る影があった。
部屋の主はルーラン=コォジィ、この世界の誰しもが知る英雄だ。
音もたてず、コォジィの部屋中に潜入する影。
ごくり。
ひとつ影が静寂を破り、喉を鳴らす音が聞える。
窓より闇夜に浮かぶ月が、影の顔を照らし出す。
影もまた英雄と呼ばれる男、その名はアーサー=バーン。
アーサーはじっとコォジィの寝顔を見つめた。
その視線は思いという愁いを帯びている。
(ああ、コォジィ・・・コォジィ・・・・コォジィ)
「・・・コォジィ」
アーサーは心の中で、目の前で寝ている男の名を呼んだはずだった・・・だが、彼を思うあまりに声に発してしまったのだった。
「誰だ!」
コォジィは目を覚ました。
刹那、アーサーはコォジィの喉元に聖剣エクスカリバーを突きつける。
「・・・アーサー・・・お前、なんの真似だ」
「・・・コォジィ、お前がいけないのだよ」
「・・・何が?」
「お前が欲しいんだっ!」
「・・・俺はその気はないっ!」
「お前の考えなどどうでもよい。私はお前が欲しいただそれだけなのだ」
「嫌と言ったら・・・」
「この場で、お前の喉を刺し、私もあとを追う」
「・・・・・・馬鹿な」
「馬鹿ではない・・・私は真実の愛に目覚めたのだ・・・お前という愛おしき存在に気づいたのだ」
「・・・アーサー」
「コォジィ・・・」
アーサーの瞳は涙で潤んでいた。
聖剣を持つ手が震えている。
コォジィは剣先を右手で掴んだ。
剣に血が滲みだす。
「コォジィっ、何を」
アーサーは慌てて剣を引こうとするが、コォジィはその手を掴んで離さない。
「・・・お前の苦しみに比べれば、こんな傷みなんて・・・」
「!」
「お前の気持ちはよく分かった・・・だが、俺には嫁たちがいる」
「捨てちまえ!」
「!」
「アーサー!」
「コォジィ!」
2人の箍が外れた瞬間だった。
熱い抱擁を交わす2人。
「ワッショイ!」
その時、部屋の壁が突然打ち破られた。
真夜中の無法者たちは上半身裸の屈強な12騎士の男達だった。
「おめでとうござります」
「我等薔薇族なり」
「新しい世界にようこそ」
「Wild Life」
「ともに祝いましょう」
「レッツ、エンジョイっ!」
「この胸の高まりっ!」
「ついに我らの思いが一つになる時が来たのだ!」
「熱い熱い熱帯夜を」
「くんずほぐれつ」
「辛抱たまらんっ!」
そうして・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
エマはペンをほおり投げた。
「無理っ!無理、やっぱ無理っ!」
その時、脳内にヒルダのテレパスが聞えた。
(大変ですう・・・早く来てっ!)
「なんてことだ!」
エマは大執筆の中断を余儀なくされた。
一方で危ない道に逸れそうになるのを回避し、ちょっぴり安堵した心持でもあった。
「ふぅ~」
彼女は一息をつき、助けを求めるヒルダの元へ駆けだした。
華麗にスルー(笑)。