№4 違和感
このお話の落差、どうだい~(笑)?
ヒルダは長い間、自分より先に若くして逝った愛息の絵を見つめていた。
ぽとり涙の雫が絵に落ちる。
「・・・アベル」
息子の名を呼ぶ。
「アベル・・・アベル・・・」
(・・・母さん)
絵から声が聞えた。
彼女は我が耳を疑った。
(馬鹿な・・・)
息子は死んだ・・・だが、
(こんな世界だものですう)
と、ヒルダは息子が生きていると一縷の望みがない訳ではなかった。
「アベル」
ヒルダは愛しいその名を再び呼びかけてみる。
(母さん)
「アベルですう!」
ヒルダは驚きと喜びの入り混じった感情となる。
くるくるとその場を踊り回った。
その姿は幼稚園のお遊戯会で子どもが踊っているような・・・。
(母さん会いたかった)
「ヒルダもですう・・・?」
母にかすかに感じた違和感。
(・・・母さん)
「はいですう」
(お願いがあるんだ)
「なんでも言ってくださいですう」
(ボクをこの絵から出してくれないか)
「・・・アベルはこの絵の中に閉じ込められているのですか」
(そうなんだ。頼むよ)
「・・・・・・お安い御用ですう」
(ありがとう)
ヒルダはじっと絵を見た。
ヒルダとアベル絵の間にしばしの時間が流れる。。
(どうしたんだい)
訝しがるアベル絵。
「アベル・・・母さん?」
ヒルダはぼそり呟いた。
(ん)
「なんでもないですう」
(良かった。じゃ、お願い)
「・・・アベル」
(ん)
「一つ聞いてもいい?あなたの好きな色は?」
(・・・白だよ。お母さんのその綺麗な髪の毛のような)
刹那、ヒルダは翳りのある笑みを見せる。
「そう・・・わかったですう。今からあなたを出してあげますう」
(ありがとう)
ヒルダは背を向けそっとテレパスを送った。
「あなたは、誰」
彼女は聞こえない声で呟く。
それから、身体を戻し、アベルの肖像画に向かって解除呪文を唱え始めた。
ヒルダの違和感。




