№3 筆は進むよエマの百合小説
特化。
「ったく」
エマは燭台に火をつけ椅子に腰かける。
「全く、興覚めだわ」
ちらりと視線に書状の束が目に入った。
「エリザ・・・」
ディオラ国の元女王エリザベートから、自身と姉を描いた官能小説を書いて欲しいとせがまれている。
この書状はその催促である。
二度見をし、彼女はため息をついた。
「ふむ、こっちにするか」
エマは立ちあがり、原稿の束を持って来るとお茶を淹れ直した。
自らの執筆による陶酔から醒め、火照りきっていた身体は急激に冷めはじめている。
一口、温かいお茶を口に入れる。
「さてと」
エマは依頼されていた官能小説を書きはじめた。
「駄目っ!お姉様っ!」
シャロットの目は、さながらハンティングをする獰猛な獣そのものであった。
「お前がっ、お前がいけないのだ!エリザっ、お前がアタシを目覚めさせたのだからな」
じりっじりっとその距離を縮める姉に後退りする妹。
「アタクシはお姉様をずっと前からお慕いしていました・・・だけど・・・」
「ならば愛し合うのが当然だろう」
「でも・・・アタクシは」
「なにをカカマトぶっておるのだ。高尚なお嬢様気取りか?エリザお前はそんなものじゃないはずだ!姉をこんなイヤらしい身体にしたくせに」
「ああっ、お姉様っ、それは言わないで」
「アタシは今、お前が欲しいのだ」
「アタクシは、そんな目をした・・・」
「何がいけないのだ。これはお前を欲した・・・」
「いけません・・・いけません・・・あっ」
エリザベートは姉の圧に押され、後ろの天蓋つきの寝台に足を取られベッドに倒れた。
「ふふふ、嫌も嫌も好きな内という訳か、自らベッドに入り込むとは・・・」
「これは違・・・っ」
シャロットはエリザベートの懐へ飛び込み、唇を己の唇で塞ぎ黙らせた。
それは熱くて優しい、とろけるようなメルティーキッス。
「お前はアタシのものだっ!絶対に離さないっ!」
「ああ、嬉しい、嬉しい、お姉様っ!」
2人は抱きしめ合い、子どものようにじゃれた。
それは幼い頃のような、だが2人は今や立派なレディなのだ。
ベッドの中の酸いも甘いも知っている。
そして、
「なあ?」
「はい」
そして深い深い2人だけの世界へと。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
エマは瞬きを一切せず、筆が進む進む、脳が命ずるまま、つらつらと書いていく。
書庫に響くペンの音。
紙に描く夜物語。
次第にインクが薄くなっていく。
本人はそれに気づかない、紙には描く物語はインクがすり減って文字が見えなくなっている。
「もう」
彼女は思わず独り言をいい、インク壺にペンを投げ込む。
ごとり。
「ああっ!」
壺が倒れて、インクが原稿に零れてしまった。
慌てて立ち上がり、台拭きで処理をする。
「ったく」
エマは苛立ちを隠そうとはしなかった。
なんちゃってえろ。