№2 ヒルダ真夜中に黄昏れる
ヒルダの寂しさ。
ヒルダはエマと別れた後も、アメリア国に山積した問題、陳情などの事案を書面と睨めっこをしつつ精力的にこなした。
御年百ウン歳の彼女である。
髪は白髪ながら、その顔は童顔で、身長も低く子どもと見間違えるほどである。
白のゴスロリドレスを纏っている。
その瞳は充血していた。
「あ~もう年ですう」
ヒルダは政務室の椅子に背をもたれかけ、大きく伸びをする。
「今日はやめるですう」
独り言を呟き、帰り支度をはじめる。
「お風呂に入って癒されるですう」
アメリア城の風呂は大理石で出来た巨大な浴場である。
ヒルダは一人、湯船につかり目を閉じる。
「あ~う~しみるですう・・・♪旅ゆけば~♪」
彼女は完全BBAモードに入り、お風呂を心ゆくまで楽しんでいる。
しかし、ヒルダの身体は不思議なほど、若さに満ちている。
透き通るような白い肌は水や湯をはじき、小さなお胸にお尻を見る限り若さ爆破なのである。
まさに頭脳はBBA、身体は子ども、その名は百ウン歳ヒルダなのである。
「は~でもですう」
ヒルダのため息が、白い湯気に混じる。
「寂しいですう」
ヒルダは城からでると自宅へと戻った。
女王の座から降りた後は、城から離れた小さな家に一人住んでいる。
ヒルダは赤ワインを飲んで、ほろ酔い気分になっていた。
窓を開けると、美しい大きな満月が見えた。
しばし、じっと見つめていると、寂しさからか涙がこぼれてくる。
(はっ・・・そうですう)
ヒルダは窓を閉めると、引っ越しの梱包類の中からある肖像画を取り出した。
それは亡き愛息アベルの絵だった。
「ああ、アベル会いたいですう」
また、涙が零れた。
なにやら不穏な空気・・・。