№1 エマ執筆三昧~ノーマル編~
あぶない、アブナイ。
エマは大図書館に戻ると、地下の書庫へと篭る。
栗色の髪に三つ編みのおさげ、そばかすがいまだ残る顔は年齢より幼く見える。
彼女は大きな丸眼鏡をかけると、両頬を手で叩いて気合を入れた。
アンティークの長机に、数百枚の紙を置き、インクに羽根ペンを用意する。
それからあったかいミルクティー。
準備が整うと座り心地の良い、椅子に腰かける。
「さてと」
ミルクティーをひと啜りした後、エマは自ら作った世界へと没頭する。
静かな部屋に、ペンが走る音だけが聞える。
ついに2人は結ばれる時が来たのだ。
その時を迎えた男女に、もはや欲望を止める枷などない。
「エマ」
「コォジィ様・・・」
どちらからでもなく唇を重ねる2人。
どこまでも優しく。
どこまでも深く。
睦み合い貪り合う。
それが夢だとしても、女が焦がれる夢だとしても、何の問題があるのだろうか、いやない。
想像の世界は無限である白い紙に書かれるのは、珠玉の愛の物語。
虚構の偽り、それ故、業は深い・・・だが何の意味がある物語の前に倫理などは不要、ただ自身が 思うままに書き連ねればいいだけだ。
ここはエマ(私)の世界なのだから。
エマはペンを走らせる。
思うままに。
コォジィは絡み合った互いの右の指たちをそっと外すと、エマのそのやわらかなふくらみへと手を伸ばす。
朱色に火照る一人の女は今、恥じらい背を向ける。
男はそっと女の背中を両手で抱きしめ呟いた。
「恥ずかしがることはないよ」
そう言うと、女の首筋にやさしいキスをした。
「はふ」
女の口から甘い吐息がこぼれる。
「夜はこれからだ」
男は戦闘態勢に・・・。
本能のままに獣と化した男と女・・・。
ごくり。
エマはミルクティーを一気に飲み干した。
(さあ、これからだ)
腕まくりをするエマ。
密室のどこで吹いたのか風が起き、燭台の火が突然消えた。
「いいとこなのに!」
静寂の部屋にエマの叫びが響いた。
セーフっ(笑)。