しょうがないからさ
「いらっしゃい!」
ドアベルと共に、バケリおばさんの元気の良い声が聞こえてきました。
おやつどきですから、パンカフェの店内はお客さんがたくさんです。
大人も子どもも、動物や妖精も、お茶やお菓子を楽しんだり、おしゃべりに興じたりしています。
「わ、フラハちゃん、いらっしゃい……」
にぎやかなお店の音にかき消えそうな声で出むかえてくれたのは、ムギちゃんです。
「今日も編みパンのような髪と、小麦粉のついたほっぺたが可愛いわ」と、フラハは思いました。
「今日はトムもいっしょなの」
「トムくん、こんにちは」
「こんにちは!」
トムは大きな声であいさつをします。
「本当は、あたしもいっしょにおやつにしたいんだけど、今日はとてもいそがしいからお預け……」
ムギちゃんはあいさつもそこそこに、ほかのお客さんのテーブルによばれて行ってしまいました。
フラハとトムは、“アップルティー”と“フルーツコンポートとチーズのパイ”を注文しました。
アップルティーは紅茶の妖精のセイロンさんと、リンゴの妖精の“プルッパ”さんの共同開発です。
今日はセイロンさんもカフェの手伝いに来ているようで、いつものカンフーの拳法着を着て、自慢の紅茶をお客さんのカップへと注いで回っています。
フルーツコンポートとチーズのパイは、季節のくだものを砂糖水につけたものと、香りの良いチーズをぜいたくに乗せたパンカフェ人気のメニューです。
フルーツの砂糖水漬けは、リンゴの妖精プルッパさん、ミカンの妖精“オレッポ”さん、モモの妖精の“プリッピー”さん、それからパイナップルの妖精の“ピネ”ちゃんがしたくをしました。
チーズは、ウシとネズミ一家の合作で、まきばからどとけられています。
それらを集めて、パンの妖精のイーストさんの作ったタルト生地に乗せて、オーブンで焼いて出来上がりです。
「少し待ってね、食べやすいように切ってあげるから」
フラハはナイフとフォークを使って、タルトをひと口サイズに分けました。
「どうして、切ると食べやすいの?」
トムがたずねます。
「お口よりも大きいと、入らないし、こぼしちゃうわ」
「どうして?」
「どうしてもよ」
「フラハお姉ちゃんのタルトは大きいよ?」
「それは、わたしのお口がトムのより大きいからよ」
フラハは返事をしながら、「自分のお口が大きい」なんて言ったのは初めてだと思いました。
それから、お客さんに料理をほめられて大きな笑いを見せているバケリおばさんの大きなお口を見て、ちょっとだけゆううつになりました。
これはムギちゃんのなやみでもあり、何度も聞いているうちにフラハにもうつってしまったのでした。
「タルト、おいしいね」
トムはもぐもぐしながら、タルト生地のかけらをほっぺたにくっ付けています。
小さく切ってあげても、まだ上手に食べられないみたいです。
フラハも自分のぶんを食べようと、フォークを手にします。
すると、トムがフラハのタルトを指差して、「お姉ちゃんのタルト、お口より大きいよ。いけるの?」とたずねました。
単に、もう少し小さく切ればいいだけのことですが、「いけるの?」と聞かれたら、フラハはこう答えるしかありません。
「いけるわ」
フラハはフォークをタルトの大きなかたまりにつきさして、それをお口へと運びました。
それをトムは、目をきらきらさせて見守ります。
大きくお口を開けて……こぼさないように……押し込んで……。
「いへは」
砂糖漬けのくだものをかむめば、お砂糖とは別の甘みと酸味もしみ出てきて、それらがすてきな合唱をかなでます。
そこへ、さくさくしたタルト生地と、うすくしかれたカスタードクリームの層があとからやってきて、ミルクとタマゴの風味がそよ風のように通り抜けるのでした。
「おいしい?」
トムがにこにこしながらたずねます。
フラハは「おいひい」と、お口を幸せでうめながら答えました。
「おいおい。妖精ともあろうものが、品の無い食べかたをするもんじゃないぜ」
このあきれ声は、手ぶくろの妖精のグロブさんです。
かれは、おとなりのテーブルにいたようで、真っ黒なチョコレートケーキとホットミルクでお茶をしていました。
いつもの子どもっぽい赤い毛糸の手ぶくろではなく、なめらかな白の手ぶくろでカップを持っています。
「はっへ、ほむが」
「飲みこんでからしゃべれよな。フラハは妖精でもあるけど、レディーでもあるんだぜ」
レディーと言われるのは悪い気はしませんでしたが、これはトムのせいですし、話しかけられて返事をしただけのことです。
フラハは「レディーはレディーできゅうくつなのね」とため息をつきました(はしたないので心の中で、です!)。
それから、“クリームパンみたいな手でクッキーわしづかみにして、大きなお口に放りこみつつも、お客さんに出す料理を作っているバケリおばさん”を見て、ため息を重ねました。
「言っとくけどな、そのタルトをオーブンから出すときに使われたパンミトンは、おれがこさえたものだからな」
グロブさんがえらそうに何か言っています。
フラハはもぐもぐしと顎を動かすついでに、うなずいておきました。
「ねえ、手ぶくろさん」
トムが言います。小さなトムは、グロブさんのことを“手ぶくろさん”と呼ぶのです。
「なんだい? ちびすけ」
「手ぶくろさんの羽は、どうして小さいの?」
「そ、それはだな……まあ、そのうち大きくなるよ」
グロブさんはなんだか言いづらそうです。
「どうして大きくなるの? ココロ先生が、ぼくは子どもだから小さくて、だんだん大きくなるって言ってた」
「そうだな。トムはいつかでっかくなるぜ。手ぶくろがはまらなくなったら、いつでもおれに言いな」
「うん! ねえ、手ぶくろさん!」
「おう、なんだ」
「手ぶくろさんは子どもなの?」
フラハは口の中のタルトを吹き出しそうになりました。
“手ぶくろさん”は痛いところをつかれたようで、チョコレートケーキを切り分けるフォークが、がちがちとふるえています。
「おれはだな、子どもでは、ないぜ!」
声もちょっとうわずっていますね。
かれはいつも「子どもじゃないから遊ばない」とか言いつつ、子どもたちと遊んでいます。
羽も生えかけみたいに小さいですし、背の高さも子どもたちとだいたい同じです。
「魔法は使えるの?」
「おれの作った手ぶくろには魔法がかかっていて、ふつうのよりもがんじょうだし、暖かいんだ。地味すぎて分からない魔法だけどな……」
「魔法が分からないの?」
「そういうことじゃなくてだな、派手さが無いってだけだ。長生きしたら、もっといろんな、どでかい魔法が使えるようになるんだよ」
「ふうん」
トムは首をかしげながら“手ぶくろさん”を見つめました。
「意味分かんない」
「だーっ! これだから子どもは!」
グロブさんは頭をかかえました。
「いいか? ちょっとこの手ぶくろをはめてみろ!」
グロブさんは赤くて小さな手ぶくろをとりだすと、トムの小さな手にはめました。
それから、「スッポリホッポリシッポリポン!」と魔法の言葉を唱えます。
すると、トムの手ぶくろから、お風呂のような湯気があがり始めました。
「どうだ? これがおれの魔法よ。暖かいだろう?」
グロブさんは「ふふん」と鼻を鳴らします。
「暑い。お食事のときは手ぶくろはしちゃだめ」
「そ、そうだな……」
トムは手ぶくろを外してグロブさんに返しました。
「ねえ、フラハお姉ちゃん」
フラハはまたお口がいっぱいだったので、首をかしげて返事にします。
トムが見ているあいだは、タルトを小さく切るわけにはいきませんからね。
「手ぶくろさんは子どもなんだって」
「ぶっふ!」
フラハは両手でお口を押えました。もう少しで、タルトが爆発してほっぺたがやぶれるところでした!
「子どもじゃない! バケリおばさーん! ブラックコーヒーひとつ!」
グロブさんは真っ赤になって注文をします。
「おやおや、大人アピールのためにブラックコーヒーとは、発想が子どもですね」
別の男の人の声が割りこんできます。
燃える拳法着に身を包んだ妖精、紅茶の妖精のセイロンさんです。アチョー!
「紳士なら、優雅に紅茶を飲みこなせばよいのではありませんか?」
「今日はコーヒーの気分なんだい! セイロンこそ、ブラックコーヒーは飲めないくせに」
「そんな苦いものは飲めません」
「野菜だってきらいじゃないか。野菜ぎらいなんて、いちばん子どもっぽいぞ」
グロブさんは意地悪く笑います。
「ねえ、アチョーさん」
トムが言います。カンフー好きのセイロンさんのことは“アチョーさん”です。
「なんですか?」
「紅茶は、どうして赤いの?」
「よい質問ですね。それは、茶葉からしみ出す色素が影響しているからですよ」
「しきそってなあに?」
「色のことです。緑茶なら、緑の色素が出て、お湯を緑にするんです」
「緑茶と紅茶の色がちがうのはどうして?」
「それは、酸化しているからですよ。じつは、緑茶も紅茶も、もともとは同じ茶葉なのです。酸化することによって、緑から赤みを帯びた色に変わるのですよ」
「酸化? ふうん……」
セイロンさんは手のひらの中に、「ぱっ」と二種類の茶葉を出して説明をしてくれました。
これも妖精の魔法のようです。
トムはふたつの茶葉を見比べ、“アチョーさん”と“手ぶくろさん”を見比べ、それからフラハのほうを見ました。
「ねえ、お姉ちゃん」
「なあに?」
「つまんない」
ふたりの妖精は、がっくりとしました。フラハは苦笑いです。
どうやらかれらでも、トムの「どうしてこうげき」には敵わないようです。
退屈をしたトムは、いよいよ「どうして病」の発作を起こして、カフェにいる人へ、手当たり次第に質問をくり返し始めました。
「どうして、風車はぐるぐる回ってるの?」
次のターゲットは村の大工さんです。
「そりゃ、風を受けてるからだよ」
「風車は目が回らないの?」
「目がねえだろ」
「どうして、目がねえの?」
「そりゃー……つっ立ってるだけなのに、要らねえだろ」
「でも、風車の上はすごく景色がいいよ。なのに、風車には目がねえの?」
「確かにもったいねえ話だな……」
大工のおじさんは腕を組んでうなりはじめました。
「ねえ、神父さん」
今度は村の神父さんが餌食になるのでしょうか?
「なんですか?」
「死ぬってなあに? どういうこと?」
「それは……もう二度と動かなくなってしまうことですよ」
意外と現実的な回答ですね。
「お花も死んでるの?」
「お花はもともと動かないだけです」
「死んだら、だるまさんが転んだで勝てるね」
「死んだ人は、もう何も見えませんし、聞こえもしないのですよ。だるまさんが転んだもできません」
「ふうん……真っ暗なの?」
「それは分かりません。真っ白かもしれません」
「真っ暗だったら、こわいね」
トムは心配そうです。
「大丈夫ですよ。死んだあとは、たましいは妖精に生まれ変わるようになっていますから。妖精はわたしたち人間よりも、とうとい存在ですから、お祝いです。お祝いはこわくないでしょう?」
そうなのです。この世界では、死んだあとはみんな妖精に生まれ変わると言われているのです。
だから、死んでしまっても悲しくなくて、おそうしきの代わりにお祝いをするということなんですって。
フラハも、砂漠の長老ガラガラヘビから聞いたことがあります。
オアシスから遠い丘のかげで、けものの骨を見つけたこともあります。
でも、妖精に生まれ変わるというところは少しだけ疑問でした。
黄色の丘には、フラハしか妖精がいなかったものですから。
「ぼく、妖精より“ぼく”がいい」
トムはそう言って、神父さんからはなれると、「だ、る、ま、さ、ん、が、こ、ろ、ん、だ!」と拍子を取って、ふり返りました。
すると、神父さんはむずかしい顔になって、固まってしまいました。
「ねえ、バケリおばさん」
今度はバケリおばさんです。
「なんだい、トム坊や。おかわりかい? 今ちょうど、ミルフィーユを仕上げてるところだけど、食べるかい?」
「ううん、お腹いっぱい。バケリおばさんは、どうしてそんなに大きいの?」
「あたしかい? そりゃ……こうしてつまみ食いをしてれば、大きくもなるさね」
バケリおばさんは、お客さんのフィーユちゃんからミルフィーユの注文を受けながら、クッキーを口に放りこみました。
「どうして、お口が大きいの? たくさん食べるため?」
「食べたからでかくなった、とも言えるけど……。あたしの口が大きいのは、大きな声を出すためさ」
「バケリおばさんはどうして、声が大きいの?」
「そりゃ、静かだとさびしいからさ」
バケリおばさんはわけもなく「さびしい」と答えます。
フラハは、それをちょっとすごいと思いました。
さびしいと思っても、がまんをすることが多いのです。
言うのがはずかしかったり、いっしょにいてほしい人がいそがしかったりして、なかなか言えないのですね。
これは、フラハだけでなく、子どもたちはみんな、けっこう同じなのです。
クローディアもモモもマルティンも、ミミクだってそうです。
“かぜはなの家”に来て、フラハが学んだこととのひとつなのでした。
「どうして、さびしいの?」
「それは……」
ほんのいっしゅん、お店の中が静かになりました。
静寂の中を、ムギちゃんがお客さんへ「ありがとうございましたー」と言うのが小さく聞こえます。
「……しょうがないからさ」
「しょーがない?」
「そうさ。しょうがないのさ。さびしいことは、しょうがないのさ」
「でも、パンカフェはうるさいよ」
トムは首をかしげます。
「がっはっは! うるさいときたね! あたしは、さびしさをまぎらわすためにいそがしくして、大きな声を出しているが、確かにお客はうるさいだけさね!」
バケリさんは大笑いです。
ここのカフェのマスターは結構な言い草ですね。
「あのね、あのね」
トムはまだまだ聞きたいようです。
「どうして、ムギちゃんにはお父さんがいないの?」
「それも、しょうがないからさ」
「どうして?」
トムは食い下がります。
お店はまた静かになっていました。
フラハは、その静けさと、トムを連れてここに来たことへの後悔で、頭がふらふらしてきました。
トムが聞いたことは、このパンカフェでは、言ってはいけない――禁句――なのです。
「どうして、いないの?」
「それは、あの人がしょうがない人だからさ。パンカフェを改装するために、いろんな国のカフェを見て回ると言って、出かけていってしまったんだ。三百六十五件も見て回るなんて言うから、一年も留守にするって寸法さ! おかげであたしは大いそがしだよ!」
バケリおばさんは、これまでにないほどでっかい声で話し始めました!
それから、旦那さんへの文句をつらつらとならべ始めます。
文句を言うたびに、ゾウがどしんどしんとゆかをふみ鳴らすようにお店がゆれて、食器たちががちゃがちゃと音を立てました。
バケリおばさんの声はでかすぎです!
ムギちゃんは「こわい!」と言って、フラハのすわっているいすの背もたれのかげに逃げこみました。
フィーユちゃんの注文したミルフィーユのクリームがくずれて、台無しになります。
グロブさんはちょうどコーヒーを飲もうとカップを口につけたときにゆれたものですから、鼻からブラックコーヒーを飲むはめになりました。
ほかのお客さんたちもみんな、声のしんどうでお皿がゆかに落ちたりしないように、押さえるのに必死です。
それでも、バケリおばさんの文句は止まりません。
「どうしよう。こんなに混んでるときに、お母さんがこんなに大声になるなんて」
ムギちゃんはぶるぶるふるえています。
「ごめんね、わたしがトムなんて連れてきたから」
フラハはムギちゃんの背中をさすってあやまるほかありません。
と、そこに……。
「こんにちは~」
ふんわりとした声がドアベルの音とともに入店です!
「ありゃ、ココロ先生じゃないかい。いけないいけない。はずかしいところを見せるところだったよ」
「いつものミルクティーとー……今日は、お花のパイをくださいな」
ココロ先生はにこにこ笑顔です。
「ミルクティーと、お花のパイですね。ムギ、ちょいと手伝っておくれ!」
バケリおばさんは旦那さんへの文句をやめて、声もいつもくらいの大声にもどりました。
お客さんたちはやっとカップやお皿から手をはなすことができて、ほっと胸をなでおろします。
「ココロ先生、ココロ先生」
「あら、トム。どうしたの?」
やっかい者のトムがやってきました!
ココロ先生に「どうしてこうげき」をしかけるつもりです。
「どうして、さびしくなるの?」
「トムはどうしてだと思う?」
ココロ先生はにこにこしながら質問を返します。
「あのね、あのね。ぼくはね……ずっとひとりのときとかね、起きたらだれもいなかったときに、胸がぎゅっとなって、さびしくなると思う」
「そっかあ。どうして胸がぎゅっとなるんだろうね?」
先生は、ちょっとだけ「さびしい」の顔になってたずねました。
「それはね、さびしさの妖精さんがいてね、いじわるするから」
「いじわるするの?」
「うん。でもね、さびしさの妖精さんも、やっぱりさびしいから、お花とかぬいぐるみとかいっぱい持ってるの。だから、さびしくなってる人のところに置いてくれるんだよ。でもね、いじわるだと思われてるから、ないしょでやるの」
「すてき! すてきなおはなしを聞かせてくれて、ありがとうね」
ココロ先生は両手の指先を合わせて、にっこりとします。
「えへへ、すてきだった? じゃあね……どうしてぼくには、お父さんとお母さんがいないの?」
「先生も知らないの。どうしてかな? どうしてだと思う?」
「うーん……。わすれていったのかも」
トムはお花がしおれるように、みるみるうちにしょんぼりとしていきます。
「さびしい?」
「うん、ときどき。でも、先生とか、クローディアお姉ちゃんとか、マルティンとか、モモがいるから、だいじょうぶ。フラハお姉ちゃんもいるから、いけるよ」
「よかった~。さびしくなったら、いつでも言ってね。先生、ぎゅーってしてあげるからね」
そう言ってココロ先生は、トムをぎゅーっとしました。
「あのね、あのね」
先生はさすがですが、トムは少しよくばりかもしれません。まだ聞きたいようです。
「宇宙ってなあに? どうやってできたの? モモも分かんないって言ってたの」
ココロ先生は「うーん、うーん」とうなり始めます。さすがにこれは無理でしょうか。
「先生はね、おっきなおっきなお花のつぼみがあって、それが開いたら、中に宇宙があったんだと思うな」
「お花が?」
「うん、それでね、お花から生まれた宇宙だから、お星さまもきらきらできれいで、お星さまの中にもお花畑がたーっくさんあるの。そうだったらいいな、って思うの。すてきでしょ?」
「うん、すてき。おはなし聞かせてくれて、ありがとうね」
トムはそう言うと、ココロ先生をぎゅーっとしました。
それでトムは、ようやく質問をやめて、先生と同じテーブルにつきました。
さっきは「お腹がいっぱい」と言っていたはずなのに「ドーナッツが食べたい」なんて言っています。
フラハは「ココロ先生は、どうしてこんなに上手にやれるのかしら?」と首をかしげます。
そのひみつが分かれば、自分も先生と同じようになれるかもしれません。
でも……「なぞのままだからこそ、ココロ先生はすてきなのかもしれないわ」なんて、結論をみちびきだして、すっかり冷めた紅茶を口にしたのでした。
冷たい紅茶は、いつもよりちょっとしぶい味がしたようです。
* * * *
* * * *
☆妖精の世界のひみつ、その十六☆
「お父さんは、こりしょうなの。それでいつもお母さんとけんかになっちゃうんだけど、お父さんが出ていってからのほうが、お母さんがおこることが増えたと思う……」




