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独立戦争

王都から私を討つために軍が出たという情報は、ファルカナス民主共和国の全員に伝わっている。新聞万歳。国民の情報の入手度合いが一定になるのも、新聞の良いところだね。それ以上に民意の誘導に役立つし、最近は広告料が結構入ってくるようになった。


広告はオークション形式なので安定した収入にはならないけど、思っていた以上に宣伝効果があるらしく、今現在はかなりの収入になっている。このお金のお蔭で、軍備を整えられるんだから感謝しかない。


新聞ではファルカナス王国軍が私達を全員奴隷にしようとしていることも書かれていて、当然それを不安に思う国民もいるし、中には私にふざけるなという感情を抱く人もいるだろう。勝手に独立されてその独立国の国民にされた人もいるしね。しかし私の能力に不満を持つ者はいない。この僅かな期間の間に、塩の販売価格を下げたり、自由化した産業がいくつかあるので、一般市民の生活は確実に向上したからだ。


前の領主であるナガーロさんは、王都へ歳入の8割ほどを送らないといけなかったようで、思っていたよりも裕福な生活は送れてなかった模様。その上で宝物庫に色々と溜め込んでいたんだから、そりゃ政策なんて何もできないよ。


とりあえず、戦える男を集めて槍を持たせる。僅か2週間とはいえ、訓練を受けられるなら何とかなりそう。その間、ほぼ完全に経済はストップするから私達の目標としては、お高い装備をしている騎士団の身包みを剥ぐこと。報酬なんて払えないから、相手の軍から色々と貰わないといけないね。


「……結構な数の村が協力してくれるんやな」

「下手したらそのまま騎士団に攻め滅ぼされかねないのに、よくやるよ。でもまあ、この戦争に勝てば南方地域の大半はこっち側に流れるんじゃないかな?」


既に民主主義に共感してくれた村や街から書簡が届いているから、軍隊が通り過ぎた後に反旗を翻して補給線を脅かすように伝える。すると早速大量の兵糧を奪ったという報告があちこちから伝えられたので、王国軍は今食べるものに困っているんじゃないかな。


この戦争に勝てば、南方地域の半分ぐらいはこっちの陣営になりそう。この国は王都がある北方、漁業が盛んな西方、交通の要衝で人口も多い中央、山岳が多い東方、人口がスカスカで森しかない南方の5つに区分できるけど、南方に住んでいる人口は100万人もいないね。


つまり南方地域に騎士団が足を踏み入れれば、村々から兵糧を徴収するのが難しくなる。しかもここらへん、まともな地図すらない。手書きの簡略な地図ぐらいならあるけど、どれだけ正確かは不明だね。兵糧を奪われたのなら、飢え死にしてくれないかな。


「いや、流石に本隊がある程度の兵糧を持っとるから飢え死にすることはあらへん。森は食べられるものも豊富やしな。だからうちらは、3日は戦いを保たせないと兵糧攻めすることすら出来へんで」

「うーん、こちらの軍規模的に、守りに徹していれば負けないよね?」

「王国騎士団を舐めたらアカンで?特に精強な魔法騎馬隊は、100人隊の規模で万の軍勢を相手に出来るしな」

「へー。やっぱりそういう精鋭兵はいるよね。そいつらって、モテるし高給取りだよねぇ」

「……なあ。未亡人や若い女を集めて何する気なんや?」

「ちょっと相手の指揮官クラスの人間を減らすだけ。大丈夫大丈夫。苦手だけど私、こう見えても結構戦えるから」


とうとうアンサルまであと少しの距離、というところまで敵が来たところで、私は妙齢の未亡人や美人さんを集めて敵の本陣に迫った。みーんなスケスケの服を着ているから、傍から見れば痴女の集団だね。




アンサルまであと3日という場所で王国軍はいつも通りに陣地の設営をする。そこへ、女性ばかりの集団が現れた。全員が美人であり、それらを率いるライラは飛び切りの美少女である。ライラはアンナと名乗り、一晩私達を買ってくれと懇願した。その値は決して安い値ではなかったが、王国騎士団は高給取りでもある。


ファルカナス王国軍が陣地を設置したのは、まだファルカナス王国側の村も存在する地域。しかもこういう女性の集団が言い寄って来たのは、今回の行軍だけでも初めてのことではない。そもそも、従軍している慰安婦が彼らには存在する。武器も一見すると持っておらず、彼らは完全に油断をした。


……進駐中、近くの村が挙って貢物を渡すことはよくあることだ。立ち寄った村々の、生娘や未亡人を買うことは従軍している者にとって楽しみでもある。


高値であったことから、彼女らは騎士団の中でも上の立場の人間に次々と買われていく。アンナと名乗ったライラも7000ゴールドで買われ、壮年の男の天幕へと入っていく。両者は裸となり、男がライラに近寄ったところで、ライラは伊達眼鏡を外す。


そのまま超至近距離で、ライラは眼鏡の耳にかける部分、その先端を男の喉に突き刺した。天幕の中が薄暗かったということもあり、奇襲は成功する。……ライラは男に抱かれる気がなかったので早々に殺したが、他の女性は行為が終わった後に鋭利に尖らせた髪留めや硬貨を包んだ衣服で殺しにかかっており、何人かは殺害に成功する。それだけ行為が終わった後の男というのは、無防備だった。


しかし作戦が成功したのは極一部だけであり、戻って来たのはライラを含めて6人しかいなかった。50人中、44人は捕まり、殺されたり凌辱されたりした。それでも一部では同士討ちを引き起こしたりと、50人の規模とは思えないほど大きな影響を王国騎士団に与えた。


翌日になって、全体の事態が呑み込めた王国軍だが、その対処をする暇もなく今度は冒険者集団の反乱が相次ぐ。従軍中の食事内容の差が明るみになり、騎士団の方は明らかに贅を尽くした食事なのに対し、冒険者集団に出た食事は限界まで削られていたからだ。


そんな状況の中、アンサルから進軍していた常備軍100人を中核とした2000人の共和国軍が騎士団に目掛けて突っ込む。指揮官クラスが何人も失われた騎士団は、それでも地力の差で共和国軍を追い返すが、王国軍側にも少なくない被害が出た。


初日が終わり、両軍は順当に数を減らす結果となった。その日の夜。ライラは冒険者ギルドを訪れる。その目的は未だに王国側の立ち位置に居ようとする冒険者ギルドのトップ層を相手に、交渉をするためだった。

明日から1日1話投稿になる予定です。

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