地固め
本格的に小国ファルカナス民主共和国としてのスタートを切ったところで、南方地域の伯爵様であるガリオ伯爵が兵を集めて中央地域のレンクス伯爵を攻めようとしているという情報が入る。国王への忠誠心とか全くないなと思ったらこいつらは兄弟らしい。あー、はい。兄弟間で財産は分割するものなのかこの国は。
一応ファルカナス王国にも法律というものはあるようなので、ざっと目を通す。すると予想通り、男子優先の分割相続が法で決まっていた。たぶんこの国が腐敗した最大の要因だろうね。伯爵領や男爵領を増やしても、兄妹がいると次世代になれば分割されるのは色々と遺恨も残しそうだし……地味に大きな力を持つ貴族の登場を抑止しているのか。そこら辺は考えてあるな。
しかし実態としては、兄弟間で分割相続をした後に決戦をするのが主流な模様。国外との戦争が少ない最大の理由は、国内での戦争が多いからか。というかこの封建契約、よく見たら主人の侵略戦争に配下が付き従う必要ないのか。すげえ関係。
流石は異世界だと思いながら、ファルカナス民主共和国の国境を定める。実はファルカナス王国の最南端には砦があって、そこにはファルカナス王国軍が300人ほど常駐している。引退した騎士とかが余生を過ごす場所になっているから、この砦を強引にファルカナス民主共和国の国土に入れるのは難しい。半独立勢力化してるし。
……まあ、しばらく放置していたらこちらへ攻めてくるでしょ。砦への物流を止めたし、そのうち干上がると思う。ウィルフレッド王国は外交官を開放するためにお金をくれたし、そのうち攻めて来るだろうからその時の先駆けとして使おう。
「……なあ、何でウィルフレッド王国はお金払ってるん?」
「私が新入り君に持たせた書簡に『貴国の外交官が無礼な態度を取ったため投獄した。返して欲しければ100万ゴールドを払え』って書いたからじゃない?」
「ああ……外交官は一応偉い家の長とかが務めるものやし、国関係なく家がお金を出した形っぽいな」
「というかジュリアさん道路の敷設ちゃんとやってる?まだ合計13キロしか敷設されてないんだけど」
「むしろこの短期間で13キロも敷設したうちをほめてーな……。まあ男手は足りんで。もう少し金払いは良くせんと、人は集まらんやろな」
国民の長期的な生活環境改善政策は、まあ当たり前のことだけどインフラの改善と治安の良化から。公共事業を行って、国が賃金を渡して、インフレも加速させる。兌換貨幣だからインフレには絶対歯止めがかかるけど。
……今のところはファルカナス王国で使っている貨幣を利用しているけど、そのうち新通貨に切り替えないといけない。だって今ファルカナス民主共和国で出回っている貨幣、金と銀と銅の含有率が低いやつだし。公共事業を行った後に払う賃金、全部この偽造通貨だし。金山銀山を保有している上、毎月山のように金銀銅を掘削しているジーノ公国が支援してくれているとはいえ、金銀銅は貴重なんです。
そのうちファルカナス王国全土へ輸出して、向こうの経済が混乱したところでこちらは新貨幣に切り替えよう。ファルカナス民主共和国の経済が死ぬか、ファルカナス王国の経済が死ぬかのチキンレース。まあこっちは農民が多いし物々交換もわりと行われているから、こちらが先に死ぬ確率は低いね。
インフラの敷設は、まずアンサルとアンヘルを中心部に周囲の村々と道を繋ぐ。これをきちんと我が国が利用しないと、将来的に来る敵軍のために敷設したことになるから、ちゃんと活用しないとね。
「北で行われる戦争が終わったら、南方地域の完全支配に動くからそれまでに地固めしないとあっという間に崩壊するだろうね」
「あの兄弟戦争か。まあ軍の衝突は時間の問題やな。
……また徴兵するんか?」
「いや、民兵って侵略戦争だと生存優先で力を発揮できなくなるし、そもそも力を貸してくれないでしょ。常備軍だけで行くよ」
「どっちも、動員兵力は1000人を超える伯爵様やで?」
「戦争が終わった頃に、2000人も動員出来るわけないでしょ。……こっち今280人ぐらいだけど」
ファルカナス王国で貴族同士の争いのどさくさを狙って領土を拡張していきたいけど、ただでさえ懸賞金がかかっているのに独立した後ろ盾のない勢力ということで狙われやすい立場であることは自覚している。
……ウィルフレッド王国からお金も来たけど、それでウィルフレッド王国へ戻した外交官達によってウィルフレッド王国が動く可能性もある。わーい。四方八方敵だらけだ。しかし現状、供託金やウィルフレッド王国から分捕った金のお蔭で、僅かだけど国庫にお金がある状態。そして戦争が起きそうな時、お金のある場所に集う奴らがこの国には存在していることは確認済みだ。




