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黒の継承者は太平を望む  作者: 米の王
第1章 黒の継承者
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第6話 食料調達

(リース、近場に丁度いい食料は無いか?動物じゃなくていい)

(植物で良いのであれば、ここから2キロほど先に果樹が群生してるところがあります)

(よし、じゃあそこまで行くか)

 

 速足で移動する。【黒光】で生成された平たんな道からそれるから、少し進みにくいが、身動きの取れない程に木々が生い茂っているわけでは無い。


 木々を払い除けられるような剣があれば丁度いいが……。せめて金属の棒でもあれば少しは違うのかもしれないな。 


 馴れない道で時間はかかったが、20分位で目的の場所まで辿り着いた。種類は2種類しかないが、延べ20本ほどの果樹が群生している。


 結構な数生えてるな。種類は……アルプとジアランか

 

 アルプはシャキシャキとした歯触りと、甘みの強さが特徴の木の身だ。ここの木に生っているのはどれも大ぶりで、真っ赤だ。十分すぎるくらい熟している。

 ジアランは強い酸味と香りが特徴だ。見た目はオレンジでざらざらとした手触りをしている。外果皮のなかには薄い皮膜に包まれて鮮やかな橙色の果実が眠っている。

 まあ、知識だけだから、実際に食べたことは無いのだけど。それにしても、ジアランって部位ごとにいろんな名称がついているんだな。調べてみてびっくりした。

 

 それはさておき。これだけの量あれば今後しばらくはここで生活できるだろう。といっても、ここにとどまり続ける訳にもいかないから、幾分か収穫したらまた、先に進むが。


(マスター、ここから500メートルほど先に小さな洞窟を発見しました。魔物の巣にもなっていないようですし、向かいますか?)

(そうだな、先にそこに行って環境まで整えてから、食料を確保しよう)


 都合よく、食料と寝床の場所が重なっていたみたいだ。


 少し歩くと目的の洞窟が見えてきた。小さな洞窟と言いながらも人1人生活するには十分なスペースがある。横幅はそこまでないが、奥に続いているようで、入り口も狭い。


 これなら魔物に発見されることもなさそうだ。一応、洞窟の奥に少しだけ水が湧き出ているから水属性魔法が使えない状態でも何とかなるだろう。


(今日の寝床はここに決定だな)


 あとは、食料を確保して、完全に入り口を偽造すれば寝込みを襲われることもない。偽装自体もそこら辺の岩や木々で隠すだけだ。


 その後は、食料や水の確保、洞窟の偽造に時間を費やし、気付けば日は暮れていた。少しだけ魔法の復習もしていたが魔物に襲われたわけでもないから細々と発動してみただけだ。分かったことと言えば、魔法で作った水はそこまでおいしくない、と言うことぐらい。道中の澄んだ池で飲んだ水の方が何となく、新鮮な気がした。


(そろそろ完全に日が暮れると思われます)


 暫くのんびりとしてたらいい時間になんていたようだ。


 洞窟の最奥に身を潜め、光も最小限に抑える。確かにこの洞窟は安全だが、もし襲われればこの密室空間で洞窟の壁を背に戦わなければならない。今のところ近接攻撃手段が無いからその状況に追い込まれるとマズイ。


 戦闘の際も、この中で魔法を使うのは無理がある。風属性ぐらいなら使えないことは無いが、あいにく未収得だ。


 魔物に関しては注意しておけば大丈夫とは思うが、何が起きるか分からないのが自然。備えあれば患いなし。今打てる手はすべて打っておきたい。肝心の打てる手と言うのが殆ど無いことが問題なのだがね。


(今何時くらいだ?)

(もう直ぐ7時です)


 もう、食事を摂ったら寝よう。明日はなるべく早く起きて昼行性の魔物が少ないうちに動きたい。朝方であれば夜行性の魔物も眠りにつくころだろう。最も危険が少ないのがその時間帯なのだ。


(リース。5時くらいになったら起こしてくれないか?)

(分かりました。夜間も周りに意識は向けておきますので、何かあれば起こしますね)

(頼んだ)


 その後は、回収しておいたアルプとジアランで腹を満たし、横になった。不安の大きい睡眠だが、リースが監視しておいてくれるのなら、心強い。寝なくてもいいのかと聞いたら、不眠で行動し続けられるらしいから、心苦しいが夜番は頼んだ。


 明日からは、今日と同じような1日を少しずつ繰り返していく。まだ、1日目だ。これを少なくとも180回は繰り返す必要がある。

 

 そんな、取り留めのない思考は徐々に体を微睡みの中へ沈めていき、眠りについた。




―リースside―


 マスター、あなたは……


 その声は彼女の心の中でなったもの、マスターにすら伝わることのない独り言。

 だが、もしこの声が現実世界で響いていたら、その声に込められた思いの重さ、複雑さに驚いたことだろう。それほどまでに色々な想いの籠った一言だった。


 どうしてあの時王は私を共に連れて行っていただけなかったのでしょうか。何故私に次代の王を任せたのでしょうか。私はあなたと共に逝きたかった。政を司る者たちがあの国に残るのは分かります。ですが、私はあなたの付き人として動いていました。その役目を下賜してくださったのもも王です。であれば、最後まであなたと共にいたかった。最後の最後で「見守ってくれ」なんて、酷い命令を残しあなたは逝ってしまった


 もし、マスターがあの方と同じような方であれば、私は一生を捧げます。ですが……


 この思いが王の意志に背くことは重々承知しています。ですが、少しだけ、今回だけはわがままを言わせてください。


評価やブックマークしていただけると励みになります。

良ければよろしくお願いしますm(__)m

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