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黒の継承者は太平を望む  作者: 米の王
第1章 黒の継承者
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第16話 黒国

「なっ!?どういう、事だ?さっきまで確かに森の中の遺跡にいたはずじゃ?」


 努めて冷静さを失わないように、と心を落ち着けるが。流石に動揺が大きい。


(リ、リース。どういうことだ?)

(……分かりません。私ですら気が付いた時には外に。……まさか転移魔法?それにしては、魔力の動きが……)


 リースが小声でぶつぶつ言っているが、要約すれば何も分からないということだろう。リースに分からないことが俺やステアに分かるはずがない。確かにステアは直観に優れているが知識面では分が悪い。

 不明点しかないことに恐怖を感じるが、先ずは周囲の確認だ。全く知らない場所に移動していた場合、かなりマズイ状況になる。


「ステア。ここはさっきまで、森に入る直前までいた場所だよな?」

「そうなのですよ。さっきまでは目の前に森があったのです。本来はちょうど森の入り口当たりなのですよ」


 良かった。知っている場所の様だ。

 だが、今は森の姿は見えない。幻のように霧散してしまい、後に残ったのは周りと全く同じ草原だけ。遺跡も何もかもが草原に飲み込まれたように跡形もなく消え去ってしまった。

 今までの光景が夢では無いのかと疑ってしまうが、右手に持った例の本が、それは偽りだと教えてくれる。

 左手側には今までと変わらぬ黒国の姿が見える。やはり場所は変わっていないようだ。

 これが幻影魔法の力なのか?しかし、本には実態がある。全てが幻という訳でもないのか。魔法を学習する際に転移魔法というものがあることは知っている。だが、転移魔法の特徴に「莫大な魔力を消費し、魔力の移動が多い」というのもがある。一応俺は魔力知覚を常に使用しているのだが、今回は何も察知できなかった。


「本当に、何が起きたんだ。……いや、だが進むしかないか。悩んでいても仕方ない、先を急ごう」

「不思議なのです」


 この現象も旅をしていれば何かわかっていくかもしれない。今現時点で分からないことは問題ではない。だが、いつかは本気でこれについて調べる必要がありそうだ。白骨化した遺体についても何者なのか気になる。

 俺の関係者である可能性は非常に高いだろう。


「まあ分からないなら仕方ないのですよ。殺されたりしないのであれば大丈夫なのです」


 さっきまでのほとぼりも少しずつ冷めていき、周りを流れる風に涼しさを感じてきた。


「そうだな。憂うより、これからの生活に期待した方がいいか」

「ロドスさんは黒国についたら何したいのです?」


 そんなこんなで遺跡のことはすっかり忘れて雑談に花を咲かせていると、黒国が目の前迫っていた。聳え立つ漆黒にの城に、強固な石材で形成された城門。両サイドには兵士の詰所が、外壁の上部には戦争や魔物の襲撃に対応するための兵器が、兵士が立っている。


「これが黒国か……。あの一際大きな建物が黒城」

「ふにゃー。おっきいのですよ」


 ぱっと見100m程の高さ。このせかいでは最高峰の建造物では無いだろうか。外壁に阻まれながらも、その巨大さ故に視界に収まりきらない程。


「それに検問もあるっぽいな。流石にこれだけの都市となるとそこらへんもしっかりしているのだろう」

「何か、引っかからないです?」

「多分大丈夫だと思うが……」


 そんなにみられてマズイ物なんかないと思う。もしかして、金銭を払わなければ入れなかったりするのか?入国税を課している国は少なくない。


(特に入国税などはありませんよ。他種族共存を謳っている国家ですから)

(そうか種族によっては金銭を使用しないところも多くあるのか)

(はい、検査されるのは手荷物に極端に危険なものを持っていないか、ぐらいです。都市内部での犯罪は防ぎにくくなりますが、そもそも犯罪率が低い為案ずることはありません)


 それなら心配する必要もなさそうだ。


「それじゃあ、行こうか」


 検問所には少ししか人は並んでおらず、大した待ち時間もなしに俺らの順番が回ってきた。

 検問をしているのは、リザードマンと普通の人間だ。

 

「本当に他種族が共存して生活しているのだな」

「実際に見てみると驚きなのですよ」


 その呟きが聞こえていたのか、リザードマンの門番が話しかけてきた。全身を青い鱗と鉄製の防具に身を包み、得物は槍。


「あんたら、この国に来るのは初めてかい?」

「ああ。獣人が仲間にいるのでね。この国は差別が無いと聞いて訪れてみたんだ」

「そいつは良い判断だ。世界どこを探しても全く差別のないと言い切れるのはこの国だけだろうよ。噂だが、聖国なんかは本当に酷いって聞くからな」


 隣にいた魔術師風の人間もそれに同意しているようだ。全身に魔力を纏っているところを見ると、防御魔法あたりかな。まだ俺が習得していない魔法だ。


「俺みたいな人間と、リザードマンが同じ場所で同じ仕事をしてるのが確たる証拠だ。この国に差別が無いことのな」


 現地の人にこう言ってもらえると安心できる。聞きかじった話だけじゃ不安があったのは否めない。


「所で、そっちの嬢ちゃんは猫獣人か?」

「そうなのですよ!」

「見たところ成人していないようだが、っとすまねぇ。悪いことを聞いたな。忘れてくれ」

「全然いいのですよ」

 

 ステアに何か事情があるであろうことを察したみたいだ。

 というか、検問は良いのか?

 門番も若干忘れていたようで、「あっ」あっという呟きの後に「覚えていたぞ」と念押しをしながら検問の説明をしてくる。


「検問と言ってもたいそうなものじゃない。魔法で少し検査するだけだ」

「それじゃ、そこに立ってもらってもいいかい。魔法に抵抗しようとはしないでくれ。魔法がかからなくなってしまうからな。じゃ、行くぞ」


 魔術師の男が魔法を唱える。


「『魔力知覚』『魔力解析』」


 すると、衣服や俺らの体が薄い青で包まれた。


「ほう、かなりの魔力量だな。まあ大丈夫だ。通っていいぞ」


 なるほど、この世界のものは万物に魔力が宿っている。その魔力を識別して相手がどれだけの力を持っているのか把握し、解析するという方法か。これは俺も覚えておいて損はなさそうだな。

 ああ、1つだけ聞いておきたいことがあったんだった。


「この国で俺らが泊まるような丁度いい宿ってあるか。生憎一文無しでな」

「金が無いのか。……何か手に職をつける気はあるか?」

「いや、旅をして過ごそうと思っている」

「それなら、探索者か冒険者、変わり種で言えば商人ギルドあたりに登録しておくといいぞ。ギルド系の組織は国家間の移動に制限がなくなる上にどんな国に行っても一定の支援は受けられる。宿も会員専用の宿をギルドが保有しているから、普通に泊まるよりも安く済むだろう」

「なるほど、ありがとう。因みに魔物の素材を売る時は商会に持って行った方がいいのか?」

「商会でもいいが、お勧めはギルドだな。だが、商会だと専門的な素材に関しては対応できないときがあるからギルドの直接持っていた方がいいかもしれない。解体についても正直ギルドの方が腕がいい。商会は貴重品や嗜好品辺りを手に入れた時だけだ」


 なるほどかなり有益な情報のようだ。

 一先ず知りたいことは全部聞くことが出来た。


「色々と答えてくれて感謝する。助かった」

「いや、俺らも暇だったしな。それじゃあ、改めて」

「「黒国へようこそ!」」

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