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黒の継承者は太平を望む  作者: 米の王
第1章 黒の継承者
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第15話 黄金の遺跡

(それで、目的の場所はこの森の中でいいんだな?)

(はい、ここだと思うのですが……)


 マップで発見したところまで向かっていたら急に何もないところに森が現れた。何も前触れもなく、目的の場所を隠すかのように森が出現したのだ。

 あまりに奇怪だったため、入り口で待機しながらリースに解析を任せている。リースの知識や記憶と照らし合わせることっで何か整合するものが出てくるかもしれない。


「でも、余り危険な匂いはし無いのですよ」

「それでも、念には念を入れておきたい」


 ステアの直観は時としてリースの分析すら上回るが今回は情報が無さすぎる。直観は頭に留めておくぐらいにしておきたい。当然戦闘中とかはステアに頼った方が良いだろうが。

 そのまま暫く待機していると粗方解析できたようだ。


(ここ一帯に超高位の幻術魔法がかかっていると思われます。それに他人をここに接近させないようにする精神操作魔法も。しかし、特に迎撃用の攻勢魔法などは無いかと思われます。内部の確認もしてましたがさすがに幻術魔法までは打ち破れませんでした。内部に何があるのかまでは不明です)

(危険は無いか?)

(今のところは。但し1つだけ、幻術魔法には十分注意してください。この魔法、幻術と呼べるものではありません。もっと、そう、世界の理に干渉するような強大な力です。幻術に関してはもう少し詳しく解析できるかどうか試してみます。もし入るのであれば最大級に警戒を強めて監視しておきます。何かあれば逃げろと言うので直ぐに従ってください)


 入るか。不用心だが、何より好奇心に勝てない。旅をしてるんだ。この草原に隠されるように置いてある森なんか、興味の対象でしかない。誘われている感がしなくも無いがな。


「ステア。入ろう。だが、俺の指示に絶対に従ってくれ」

「分かったのですよ」


 ステアも入るのに賛成のようだ。やはり好奇心には勝てないのだろうな。何となく目がキラキラしている。

 慎重に森に踏み込む。目的の死体の周りを取り囲むように現れた森は、まるで何かを守護するかのように佇んでいる。というか森と言えるほどのサイズもないが、わざわざここに隠す必要はあったのか?木を隠すなら森の中とは言うが母数が小さければ意味がない。どちらかと言えば、俺らがさっきまでいたレファスト大森林の方が適しているような気がする。

 それにしても普通の森だな。危険な植物がいる訳でも、門番のような魔物がるわけでもない。幻術がかかっているだけの森。

 すると、ステアが何かを発見したかのようで声を上げた。


「ロドスさん、何かあるのですよ」


 そう言われて指差された方を見ると、遺跡のような何かがある。

 注意深く観察してはいたが、よくこの距離で見つけられたな。


「これは……。取り敢えず外周でも見て回ろうか」


 金色に輝く外装。確実に金製だ。金箔を貼っている可能性も否定できないが、感覚として金だという確信がある。装飾自体はそこまでカビでは無い。どちらかというと金そのものの魅力を引き出すための構造だ。

 中央部分には入り口が。その他に内部に入れるようなところは無い。マップを確認してみてもやはり目的の場所はここだ。この丁度内部。少し地下に潜る様だが、可笑しな構造は無い。


(何にせよ、リース解析を頼む。この距離なら幻術もないだろ?)

(ええ、恐らく解析できると思われます。と言うかもう解析終わってます)


 流石に仕事が速い。


(解析が終わった理由は単純です。特に解析するものがありませんでした。分かったことと言えばさっき言った2つの魔法の発信元がこの遺跡と言うのと、攻勢魔法はやはりかかっていないことだけです)


 入ってみるか。虎穴に入らずんば虎子を得ず、と言うからな。9割がた好奇心なのは否めないけど。


「気を付けるのですよ」

「ああ」


 ゆっくりと足を踏み入れる。内部も外と同じように金一色だ。金にはレンガのような模様が彫ってある。良くこれだけの量をそろえられたな。一応金を生成する魔法も存在するが魔力消費と見合わない。しかし、綺麗な光景だな。

 入ると直ぐに下向きに階段が続いている。階段自体の長さはそれほどでもなく、ほんの10m程度だ。ゆっくり、ゆっくりと1段ずつ降りていく。意識せずとも鼓動が波打つのは、好奇心からか、期待からか、はたまた恐れからか。

 すぐに最終段まで辿り着いた。正面に目を向けるとそこには、


「白骨化遺体、か。何となく予想はできていたが……。歴史の存在するであろう遺跡だ。生身の人間がいる訳が無い」

「どうしてここにいるのです?きっと寂しいのですよ」

「そうだな、せめて弔おう。見つけた者の責任だ」


 詮索はしたいが、死者への冒涜は望むところではない。

 そうして、遺体まで近づいていくと地面に掘られた文字に目が行った。黄金の床に不自然な黒色の文字。何で書かれたのかは分からないが、この文章はここにたどり着いた人に対するメッセージなのだろう。所々か擦れてしまって読めないが、リースがある程度は解読してくれた。


『闇神が……者よ……逸脱せし……汝に告ぐ……破滅…………を踏破し、怨敵を討ち給え』


 殆ど読めないが、何かを倒すような指令が書いてあることは分かった。

 そしてもう1つついでのように書かれている文章があった。


『継承者たる汝に、これを授ける』


 その文章が指し示す先には1冊の本があった。白骨化した遺体が手に握っている。

 一礼をして本を受け取る。どうしてか本には全くと言っていいほど重さが無い。6㎝近くの厚さがあり、表紙には豪華な装飾が過度な程に施されているにもかかわらず羽の様だ。それに本が開かない。確実にページは存在しているのに、本は閉じたままだ。

 そして、文中にある『継承者』の文字。これが黒の継承者そのものを指しているかどうかわからないが、俺にも無関係ではないだろう。

 差し当たってこの本についての研究が必要だ。リースに頼んでみたが、この本自体に強力な保護魔法がかかっていて今すぐ解析することは難しいとのことだった。


「これからどうするのですか?」

「この遺跡について調べたいが、そこまで時間も無いんだよな。日暮れまでには黒国まで到着しておかなければならないし。この人の弔いだけ済ませよう」

「分かったの、にゃ!?」


 その時だった、いったん外に出ようと遺体に背を向けた瞬間。

 草原に立っていた。さっきまでの密閉された空間とは打って変わって全身を心地よい微風が撫でる。

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良ければよろしくお願いしますm(__)m

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