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黒の継承者は太平を望む  作者: 米の王
第1章 黒の継承者
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第12話 猫獣人の真価


 思ったよりも時間が経っていたようで、ゴブリンの間近まで来ていた。

 小声でステアと情報交換する。


「もうそろそろゴブリンとの戦闘だ。最初に3体程俺が魔法で削る。恐らく激怒してこっちに向かってくるだろう。ステアはそのタイミングで残りの2体を殲滅してほしい。危なかったら直ぐに助けに入るから安心してくれ」

「頑張るのですよ!」


 ゴブリンが群がっている付近の茂みに身を隠す。そこまで感知能力に優れた魔物では無いからこの程度の距離なら音さえ出さなければバレない。以外にも今回のゴブリンはこの森特有の特殊個体では無くて、普通の奴っぽいし。

 静かにゴブリンを観察してみるがそこまで気になる装備はしていない。ボロ布を纏っているがあれでは防御にはならないだろう。武器もそこら辺にある木の枝に石を付けただけの石斧だ。先が研磨されている訳でもないから殺傷能力もほとんどないはず。それでも、急所を殴られればマズイ。

 石斧を持っているのは2体だけだ。あれは俺が殺しておこう。他の3体は素手と、木の棒を持っている。


「よし、俺が魔法を撃ったら、突撃してくれ」

「分かったのです」


 今回使う魔法は風属性魔法だ。ここが森の中と言うのもあって今のところこの魔法が一番使いやすい。制御も容易いしな。因みにマンティコアを倒すときに使った魔法も風だ。

 さて、どういう攻撃をイメージするか、だが、5体いる内の攻撃していいのは3体だけ。他の2体に当ててはならないとなると風の弾丸辺りがいいかな。単発の攻撃だが、その分破壊力と貫通力に特化した攻撃だ。鎌鼬や散弾だと狙いの敵外にも当たってしまう。

 もう魔法も慣れたものだ。最初の頃のように原理が~、イメージが~、と言うことは無い。


「『風弾・突』」


 解放された風は不可視の弾丸となり襲い掛かる。音で危機が迫っていることに気が付いたようだが、もう遅い。逃げられると思うなよ。

 弾丸は寸分の狂いなくゴブリン達の頭に吸い込まれていく。綺麗に貫通し悲鳴を上げる間もなく死んだ。


「行くのですよ!」


 それをを確認した瞬間、隣から20㎝程まで発達した爪を携えて飛び出す影が。ステアだ。


「はあ!」


 飛び出した速度のまま、身を屈めた状態でゴブリンの内の1体に肉薄する。


 ゴブリンも、ステアも身長がそこまで変わらないために、俺よりも懐に潜って攻撃はしやすいはずだ。


 よく見ると既に爪には雷を纏っている。ある程度距離があっても爪の周囲に青白い雷がほとばしっているのが分かる。あれで引っ掻かれれば血液を通して全身を雷が走り回り全身を焼くだろう。炎バージョンも見てみたかったが森の中だから火属性は使いにくい、という判断に違いない。最悪燃えても俺が消火すればいいだけの話だけれど。


 懐に潜り込んだステアは、対応できていないゴブリンを尻目に頸動脈目掛けて爪を振る。体に依存している武器だからか、体感がぶれることもなく綺麗に振るえる。首を狙って放った一撃は寸分たがわず、急所である頸動脈を切り裂いた。

 魔物の生命力では、急所を攻撃した後も少しは動いて攻撃してくるものだが、雷がそれを許さない。血液量が多い所と言うのもあり体内に多量の電気が入り込み全身を焼く。肉の焼ける―決して良い匂いではない―がここまで漂ってきた。


 その時点でステアはもう1体の方と対峙している。さっきのような奇襲じみたはもう使えない。今度は正真正銘1対1の戦闘だ。

 最後に残ったのは木の枝を持ったゴブリンだ。全長40㎝ぐらいの棒だが、遠心力を加味すると凶器になりうる。

 それを悟ったのかステアの体にも緊張が透けて見えた。


「ステア、安心しろ。俺がいる」


 前を向いたままでその様子は分からない。だが、さっきよりもステア頼もしくなった気がした。


「行くのです!」


 最初と同じように声を出し喝を入れる。見合っていたゴブリンも突撃してくるのが分かったのか身構えている。

 ステアが接近した瞬間、ゴブリンがその棒を横一文字に振るった。薙ぎ払いだ。普通に攻撃するよりも回避が難しい。ステアに当たってしまうと思ったその瞬間。


「なっ!?」


 急に後ろに体を倒し回避した。頭は地面についてしまうのではないかと思ってしまうぐらいまで体を逸らし、そのままの勢いで倒れてしまうかと、危惧した。

 だが、そんな心配は杞憂に終わる。

 その勢いを今度は前方に持って行ったのだ。加速した勢いのまま爪を前に突き出す。放たれた攻撃はゴブリンの喉に刺さりそのまま貫通した。先と同じように雷の魔力が全身を駆け巡る。全身を焼かれたゴブリンはなす術もなく崩れ落ちた。


「凄いな……」


 思わず感嘆の声が漏れた。あの身体能力と魔法が、獣人の戦闘力を作り上げているのか。戦闘力としては列島種族と言われる猫獣人であれだもんな。

 人間では決してマネできない芸当だ。

 ステアを見ると息を切らしながらも満面の笑みでこっちに向かってくる。


「倒したのですよ!!」

「本当にいい戦いだった。お疲れ様、ステア」


 誇らしげに胸を張っている。可愛い。思わず頭に手が伸びた。

 なでなで、なでなで。


「うにゃ~。気持ちいのですよー。ところで私は旅の役に立つですか?足手まといにならないのです?」

「なる訳ないだろ。十分だ」


 なでなで


「嬉しいのですよ」


 なでなで、なでなで。っていつまで撫でてるんだ。

 申し訳なくなって手を放す。


「にゃっ。もっと撫でて欲しかったのです」


 ステアが何か言ったが声が小さくて何と言っているのか分からなかった。


「何か言った?ごめんねずっと撫でてて」

「な、何もないのですよ」

「そう?」


 何にせよ目標は達成できた。ステアの能力も見ることが出来たし、いつも道通りの目標に切り替えても大丈夫だな。


「それじゃ、森の出口目指して進もうか」

「はい!なのです」


 また同じような日々が始まる。ただし、仲間のいる日々が。



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良ければよろしくお願いしますm(__)m

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