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第12話 ご主人様はズルい

「よろしいですかご主人様? 普通の方は、一つのクラスをカンストさせるのにすんごく時間がかかりますの。複合クラスの優秀な方でも、二つのクラスをカンストさせるのにとぉ~っても苦労してますの。物凄く大変ですの」


 中級クラスになれなかった俺は、中級や上級クラス以上で選択肢に現れる複合クラスについて詳しくない。

 だが実際は、ローゼの言うとおり凄く大変なのであろう事は想像できる。

 ローゼの母は、複合クラスの【魔剣姫】だ。それは剣士と魔術士の複合で、剣も魔術もどちらも一流と言えよう。

 母が【魔剣姫】を取得するのに並々ならぬ努力をしていた事を知っているローゼだからこそ、俺はおかしいと言っているに違いない。


「でもほれ、一般クラスは10レベルで初級クラスにチェンジできるし、上限は15レベルじゃん?」

「はいですの」

「そんで初級は20レベルで中級クラスにチェンジできて、上限は30レベルだろ?」

「そうですの」

「で、中級が上級にクラスチェンジするには40レベルが必要で、上限は55レベル」

「ですの」

「最後に、上級から超級クラスにチェンジするのに70レベルが必要で、上限は100レベル」

「険しい道程(みちのり)ですの」

「だろ? だから上限レベルといっても、55とか100までレベルを上げる上位クラスと比べれば、30レベルなんてたいした事ないぞ」

「……たいした事あると思いますの」


 各クラスは必ず1レベルからスタートし、クラスチェンジ可能レベルで即クラスチェンジをした場合、総合レベルは上級で70レベル、超級では140レベル分の経験値が必要となる。

 これがクラスの上限レベルまで上げてからクラスチェンジをした場合、総合レベルは上級で100レベル、超級では200レベル分の経験値が必要だ。

 また、クラスチェンジ可能レベル以降は、レベル上限まで上げても新たな固定スキルは得られず、あくまで基礎強化値を上げる行為でしかない。



 クラスチェンジ可能レベルと総合レベル

・一般 1~10 1~10

・初級 1~20 11~30

・中級 1~40 31~70

・上級 1~70 71~140

・超級 1~  141~


 クラスレベル上限と総合レベル

・一般 1~15 1~15

・初級 1~30 16~45

・中級 1~55 46~100

・上級 1~100 101~200

・超級 1~   201~



(そういえば『管理師』って【■級】だったけど、どのクラスに属するんだろ?)


 俺は思案する。

 女神アンネミーナが、”神の拘束”を解除したと言っていた。それは初級縛りの解除を意味している筈なので、きっと上位のクラスにチェンジしている……と思われる。

 初級クラスではあるが、ローゼは『攻魔術士』という見慣れないクラスにチェンジしていた。――便宜的にレアクラスとしておく。

 それを踏まえると、クラスの階級は不明ながら、俺の『管理師』もレアクラスであろう。

 ”神の拘束(しょきゅうしばり)”の解除の事を考えると、『管理師』は中級のレアクラスだと思われる。


(さすがに上級や超級ってのはない……よな)


「ご主人様はお持ちの初級クラスを、すべて上限まで育てていると聞いてますの。では、幾つの初級クラスをお持ちですの?」

「ん~、軽戦士、重戦士、拳士、槍士、弓士、盗賊の6個かな。……あ、【収納】目当てに小荷駄も取ってるから7個だな」


(まあ、数だけあっても所詮は初級だしね)


「初級だけでも210レベル分もありますの。総合レベルだけでも超級クラスですの」

「確かに数字だけ見ればそうだけど……」


 俺が18年も苦しんだのは、女神アンネミーナに”神の拘束”で縛られていた所為だが、それは中級にクラスチェンジができないだけの加護だと思った。

 当初、加護の意味を理解していなかった俺は、どうせ上位に上がれないと諦めていた為、初級クラスをカンストさせたのは、再び冒険者に戻ったここ5年での事だ。

 中級や上級クラスの高レベル帯では必要経験値が多くなる為、単純比較はできないが、それでも5年で200レベル以上の経験値を獲得するのは、普通に考えて異常と言えよう。


 ならば”神の拘束”は、敢えて上位クラスへ上がれないようにして、俺に多くのクラスを経験させ、この世界を学ばさせる為のものだったのかもしれない。

 なんといっても、女神自身が今までの俺の生活をチュートリアルだと言っていたのだ。

 なんならチュートリアル期間中は、経験値ブーストをかけてくれていた可能性もある……いや、取得経験値的にその可能性は大だ。そう考えると、多くのクラスでレベル上限まで育てられた事に納得がいく。


 チュートリアル期間が女神の想定を超えてしまっていたようだが、期間中も俺はずっとサポートされていたのだろう。

 会話のキャッチボールができない残念な女神だったが、チュートリアル中の気遣いを考えると、アンネミーナは癒やしを具現化したような見た目どおり、慈悲深い女神なのかもしれない。――アンネミーナ様マジ女神!

 ただし、説明不足だった点は誠に遺憾である。


「もしかして俺って、中級クラスになれない可愛そうな人じゃなくて、初級スキルをたくさん持ってるラッキーな人なのかな?」


 中級クラスになれず、不貞腐れて約10年もヒモ生活をしていたが、見方を変えれば俺は恵まれていたのかもしれない。


(そう思えるようになるまで長い年月がかかったけど……)


「なんとも言えないのですの。ただご主人様はズルいですの」

「ズルくはないな。でもまあ、俺がいくら多くのスキルを持っていても、戦闘能力は所詮初級クラスしかないし」


 この世界はより上位のクラス、そして上位クラスで得られるスキル、これらが非常に大事なのだ。

 俺の職業が冒険者である以上、初級クラスのスキルを呆れるほど持っていても、ちょっと器用な初級クラス者でしかない。中級や上級クラスの者からすると、俺の戦闘力的では足手纏でしかないのだ。


(だから俺はアイツラに……)


「でもご主人様は、ゴブリンをバシバシ斬ってましたの。あれはスキルではないんですの?」

「あ~、あれは……」


 試しに【斬】スキルは使ってみたが、そうでなくても一撃で仕留められていた。

 自分なりの結論としては、身体強化の恩恵のほうが強いと判断していたが、よくよく思い返せば、【斬】の使用感も以前より上だった気がする


 スキルというのは、現行のクラス――ステータスに表示にされているクラス――以外で得たものは、効果が5割減になってしまうが使用できる。

 ちなみに、初級クラスの『小荷駄』で得た【収納】スキルは、保有魔力量で収納量が変わるのだが、効果が半減してる現状でもアホみたいな収納量だ。


(魔術が使えないのに、どんだけ無駄魔力を持ってるんだ俺は……)


 それはさておき、【斬】は軽戦士クラスで習得したスキルであり、俺はしばらく軽戦士クラスのままだった。それを考えると、現在『管理師』クラスの俺は、効果が半減したスキルを使っていたにも拘わらず、違和感ないどころか使用感が上に思えた事が違和感だ。


(そういえば、俺の身体強化って【超】に属するスキルなんだよな。普通の身体強化の効果をしらないからなんとも言えないけど、【超強化】って目茶苦茶効果があるのかな?)


「確かにスキルは使ったけど、結局はローゼが弱らせたゴブリンだったからな」

「わたくし、お役に立ててましたの?」


 ローゼは俺の指示を無視してゴブリンに突っ込んでいった為、ガッツリ説教をされただけだ。俺が意図的に褒めなかった為、彼女は自分が役立たずだと思っていたのだろう。


(少しくらい褒めてあげたほうが良かったな)


「十分にな。むしろローゼが一端の魔術士になってくれないと、雑魚い俺なんてすぐやられちゃうんだぞ。だから早く立派な魔術士になって、ローゼが俺を守ってくれよな」

「――! わかりましたの! わたくしがご主人様を守って差し上げますの!」


(ちょろいな)


 よくわからない僻み根性を剥き出しにしていたローゼだが、俺に頼られた事で簡単に言いくるめられていた。


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