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裏西遊記

童話と神話が好きなので、試しに書いてみました。更新かなり遅いかもです。

「――またここで死んでしまった......一体どうしろって言うんだよ......」


 俺はそう思いながら自分の魂が完全に体から抜け出たことを感じていた。気分的にはそのまま宙をふらふらと漂っていたように思う。


 「お迎えに参りましたっす!」


 唐突に、明るくもどことなく陰湿そうな声が聞こえた。振り返ってみるとそこには、もう何回と顔を合わせている、馴染み深い二人が立っていた。


「またここで死んだんっすか」

 そうあっけらかんと言ってくるのは黒無常(クロシ)。コイツの声を聞くとなぜかむかついてくる。


「も~っ、これで何回目ですかぁ!」

 たゆん、と胸を揺らしながら可哀想なものを見る目で見てくる白無常(シロク)。実に眼福だ。うん。


(クロシとシロク、こいつらとも随分と仲良くなっ......なってしまったな......)

 この二人は閻魔大王こと閻羅(エンラ)直轄の部下で重要人物の魂を回収する役人だ。俺が“また”死んだから魂を回収に来たのだ。


「かれこれ8回目、もう勘弁してほしいよ。毎回この川でしかも同じ妖物(アヤカシ)に食べられるなんて......」


「はいはい事情はわかりましたから、とりあえず地府(ジゴク))に一回戻るっすよ」


 クロシはそう言って早々に地獄門(ヘルゲート)を開いた。散々転生しているとはいえ、扱いが雑すぎないか?



「というわけで、また転生よろしくお願いしますね」

 

 俺は苦笑いしながらエンラに事情を伝え、転生のお願いをした。


 エンラはため息をつき、疲れた顔で俺を見ていた。


「はあ…ぶっちゃけワシはもうあなた様の転生はこりごりですよ。仮にもあなた様は如来(ヌーラ)様の二番弟子なんですよ。わかってるんですか?」


 痛いところを突いてくる......俺の真名(マナ)舎利(サリラ)、佛神教教主ヌーラ・シッダールダの二番弟子だ。任務を遂行するため、下界に転生しているが、何回も同じところで死んでしまっている現状。正直詰んでいる......


「そんなことわかってるよ。でも毎回転生しても昔の能力が目覚めないんだ。俺だって困ってるんだよ。まったく、地府の転生システムが故障してるんじゃないのか?」


そうエンラに愚痴を言っていると、突如地府内が光に満たされた。

 ヌーラ様!!?と驚いたエンラは王座から飛び降りひれ伏した。教主である師匠が地府にやってきたのだ。


「しっ、師匠!どうしたんですか。わざわざこんなところに......」


 俺は冷や汗をかきながら苦笑いをした。師匠は怒らせるとめちゃくちゃ怖い......


「まだまだ修行が足りん!煩悩を捨てんから覚醒しないのだ!」


 やっぱり怒られた......


「これ以上の延期は厳しい、天界の者たちの発展が早くなっている。次の転生が最後だ。もしまた死んだら今度は今までの分の輪廻も加えて、一万年地府(ここ)で過ごすことになると思え。」


 そう一方的に言い残し、師匠は光の粒になり消えた。地府内も明かりが落ち着いたところで、俺は大きくため息をつくのであった......



「おのれ!俺を離せ!話が違うぞ!畜生道に転生とは聞いてない!」


俺が転生しようと転生門(リバーストンネル)にやってくると地府戦闘員である牛頭(ゴズラ)馬面(メヅラ)が暴れる大男を押さえつけていた。


「どうしたんだ。閻王呼んできた方がいいかな」


俺の声に反応して牛頭馬面はこちらに顔を向けた。


「サリラ様、こいつは玉帝様から畜生に転生させろと命令を受けまして、ちょうど今施刑中なんです。」


ゴズラはそう言いつつ頭を上げようとした大男を下に押さえる。そんな大男は一瞬だけ俺の顔を見てギョッと驚いていた。


「そちらの方は佛神教第二弟子サリラ様とお見受けした!私は天界十万水軍を統括している天蓬将軍、猪野(イノノ)ゴウレツと申します。どうかお助けを!」


ゴウレツは必死に顔を上げて、俺に向かって助けを求めてきた。


「元、天蓬将軍な。罪人風情が。お前は追放されたんだよ観念しろ!」


メヅラは無情にもそう言い放った。

俺は本心驚いた。この男の身分もそうだが、どうして彼は俺のこと知っているのか、それが本当に驚きだっだ。なぜなら俺は…


「あなた様が極秘任務中で存在を公開していないなのは存じ上げております!内容はここでは言いませんが、私は将軍であった身、天界の暗部によって把握しておりました。」


ゴウレツのその発言はさらに俺を驚かせるものだった。俺の秘密任務の内容まで知っているだと......


「今や私は天界に捨てられた身!正直なところ憎いです!私は冤罪で追放されたのです!宴で酒に薬を盛られ、気がついた時は舞姫である嫦娥(ジョウガ)をベッドに押し付けていました。」


なんとなく怪しい感じがした。この事件もそうだが、ペラペラと喋るコイツにも裏がありそうだな。そう思うながら、俺はこの男の話を聞いていた。


「なのに天界は真犯人を探そうとせず私に断罪したのです!それも畜生道で転生など、非道極まりない!どうか私を部下に加えてください!仏界で実績を出し天界に見返してやりたい!きっと任務の役にも立ってみせます!」


なるほどそういうことか......護衛役として配下に置くのもいいかもな、それに......


「よし!いいだろう。お前を俺の弟子にしてやる。が、天罰の方は俺にもどうにもできない。見ての通り俺も今から転生する予定だ。なのでお前も転生して下界で俺を探せ。」


そう言って俺はキョトンとしたゴウレツを畜生道に突き放した。


「なっ!そんな!や、約束ですぞ!かならっ......」


ゴウレツの声は途切れ、そのまま畜生道の中に完全に吸い込まれていった。そして転生門の前に重厚感ある青色の光が残り、散っていった。


「仕事の邪魔をしちゃったな牛頭、馬面。今のは気にしないでくれ。転生の手配を頼むよ」


「は、はい。」と驚き、固まりつつゴズラとメヅラは転生門を人道に切り替えた。


「では、今度は早々に戻ってこないようにしてくださいよ。」


そう言われながら俺は転生門に足を踏み入れようと......


その時、突如青色の光が周囲を明るく照らした。


「この重厚感は!さっきのヤツが残した、元神力(ルーエナジー)!?」


まるで新たな主を見つけたように、その光は俺の中に入っていった。


俺はというと、ビックリしてそのまま転生門に吸い込まれたのであった......



かくして俺は、はじめて元神力(ルーエナジー)をその身に宿し、転生を果たしたのであった。


そして、布教活動とその裏の陰謀に巻き込まれ、大波乱な10回目の人生を歩むことになるとは、まだ知る由もなかったーー

つづく?!

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