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朝を歩け。  作者: 維酉
3rd Single【夏への扉】
98/176

93 ずる

 掃除時間、のの、廊下を掃きながら、


「もうすぐ夏休みだね」と、話しかけてくる。「みきちゃんは、なにか予定ある?」

「うん。八月にコンクールがあるし、その一週間後には、海」

「あぁ、ねねもいってたな、それ。海いいなぁ」


 みきも箒を手に、廊下のタイルをさっさと掃いていく。とはいえ、暑さで動きが少々にぶい。


「三泊四日だったよね」

「そう。ゆかのお父さんの別荘に泊まるらしい」

「わ、すごい。島に別荘にプライベートビーチって、さすがにスケールが違うね」

「いやもう、ほんとうに」


 みき、おおきく肯く。誘ってもらえたのはうれしいが、とはいえ、気が引けるところもかなりある。


 それにしても、と、のの、


「あーあ、うちも見たかったなぁ、みきちゃんの水着姿」

「そんないいもんじゃないよ。最近、運動できてないし」

「またまた、謙遜しちゃって」


 いいつつ、ロッカーからちりとりを持ってくる。みきはモップをとってきて、バケツに水をくむ。


「旅行から帰ってきたら、もう予定はないの?」

「え、うん。いまのところは」みき、廊下を拭きながら、「お盆だし、お墓参りとかはいくだろうけど」

「そっか。じゃあどっかでデートしようよ」

「いいよ。どこいくの?」

「うーん」のの、腕を組んで、「せっかくなら、おとななデートがしたいよね」

「なにそれ」


 ののもモップを手に、反対側から拭いてくれる。みき、額に汗がにじむ。


「えー、でもやっぱり、水着が見たい!」

「なんでそんなにこだわるの、水着」

「プールいかない? みんな誘って」

「いいけど、デートじゃなかったの?」

「デートもする。プールにもいく」

「ふうん。欲張りさんだね」


 と、はやいうちに、掃除がおわってしまった。教室のなかの掃除も、ずいぶん進んでいるから、手伝うこともなさそうだ。


 ひとまず、バケツを片づけにいく。


「みきちゃんってさ、うちにはあんまりツッコんでくれないよね」

「え、そう?」

「うん。デートもすんなり受容れちゃうし」

「あぁ、あれ、冗談だったんだ……ふうん……」

「え⁉ うそ⁉ うちっていま、なにか重大なミスを犯しちゃった⁉」

「ふふ」みき、笑って、「ほら、ツッコまないほうが面白いからね、ののちゃんは」

「魔性だ……」


 流し台までいくと、掃除中のうめがいた。たわしを手に、ごしごし磨いている。


「あ、ふたりとも、おつかれさま」

「おつかれ、うめちゃん」と、のの。「ねぇねぇ、おすすめのデートスポット知らない?」

「えっ⁉」うめ、目をぱちくりさせて、「か、彼氏できたの……?」

「どうだろ、みきちゃん」

「いや、わたし男じゃないし」

「じゃ、彼女だ」

「え、えーっと」

「あのさ」と、みき、苦笑して、「うめちゃん巻き込むのは、ずるじゃない?」

「どうしても引きだしたくて、ツッコミ」

「うーん……?」


 うめ、いまいち状況がつかめない。


「あ、でも、隣町の水族館とか、カップルに人気だよね」

「おぉ、たしかに! けっこうアリかも」

「ふたりでおでかけするの?」

「うん。デートだからね」

「そっか。たのしんできてね」


 やさしい笑顔でいわれて、のの、


「なんか申し訳ないかも」

「ほら。いったでしょ、ずるはよくないよ」


 とりあえず、どこかで水族館にいく約束は、した。



【大矢かうな ギター担当】


 軽音楽部の一年生。

 元気いっぱいの明るい子。


 成績はよくもわるくもない。期末試験ではがんばって勉強し、なんとか上位に食い込んだ。同級生や先生に褒められたので、つぎもがんばろうと思っている。

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