表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝を歩け。  作者: 維酉
3rd Single【夏への扉】
95/176

90 確保

 みき、出先から帰っていると、見覚えのある影をみつけた。公園で、女子高生と小学生が、シーソーで遊んでいる。


「あ、おねーちゃーん!」


 と、気づかれた。新藤さつきだ。もうひとりは、後輩のシー。


「こんにちは」と、みき、近づいて、「ふたりで遊んでるの?」

「うん! シーちゃん捕まえたの」

「はい、あっさり捕まりました」


 聞くと、たまたま散歩で足を伸ばしていたシーを、さつきが見つけたのだという。


 で、確保してから小一時間、シーをあちこち引っぱりまわしているらしい。


「おねえちゃんも、シーソーやる?」

「うん、いいよ」


 ということで、さつきとみき、ふたりでシーの向かいに座り、ぎっこんばったん。


 さつき、たのしそうにケタケタ笑っている。


「くづねぇも来たらよかったのに!」

「くづねぇ……くづきちゃんか。おうちにいるの?」

「ううん、おかーさんとおでかけ。ジュクの見学だって」

「へぇ」

「かきこうしゅう……受けるんだって! らいねん、ジュケンだから」


 みき、まじめだなぁ、と、ひとごとのように思う。来年に受験が控えているのは、じぶんもおなじなのだけど、まだ実感がわかない。


「だから、あんまり遊べないんだって」

「そっか。ちょっとさみしいね」

「うん。つまんない」


 みき、ちょっと苦笑い。きもちはわからないでもないが。


「おねえちゃんたちは、なつやすみ、遊べる?」

「どうだろ。八月のさいしょは部活があるけど……」

「ぶかつ?」

「うん。わたしたち、軽音楽部なんだよ。バンド組んでるの」

「え、すごい! 楽器ひけるの? シーちゃんも?」

「そうだよ。上手なんだから」

「いえいえ、そんな」シー、かぶりを振って、「ついていくので精一杯です」


 謙遜しているが、シー、はじめて数か月とは思えないほど上達している。もとの器用さもありつつ、なにより、努力家なのだろう。


 それから、たまに部活の話をしながら、しばらく遊んだ。いい時間になったので、さつきを家まで送って、みきとシーも帰ることにする。


「コンクールって」と、帰り路で、シー。「八月はいってすぐ、でしたよね」

「うん。そう考えると、あんまり時間ないね」


 前田先生が応募していた、コンクール。期末試験もおわったし、いよいよ、そこに向けた練習が本格化する。


 本番は、八月三日。いまが七月もおりかえしたところなので、だいたい二週間くらいの猶予がある。


 とはいえ、演奏曲は、文化祭で披露したものから選んでいる。本番まで、練度をあげることに集中すれば、恥ずかしくない演奏もできると思う。


「コンクールのあとは、なにか予定、ありますか?」

「え? うーん、いまのところは、とくに」みき、ちょっと悩んで、「たしかに、なにか目標があるといいのかもね。演奏できる機会があれば、練習にも身がはいるし」

「はい。それに文化祭、たのしかったですから……」と、シー、目をほそめる。「コンクールがおわっても、またどこかで、演奏できたらうれしいです」


 まえむきなことばに、みき、ちょっと心が弾む。そのねがいは、どうか叶えてあげたいと思う。


「ま、考えとくよ」と、みき、肯いて。

「いまは、コンクールに集中、ですね」

「期待してるからね」


 ほどほどでおねがいします、と、シー、いつもみたいに飄々と答える。七月の太陽はまだ高く、うっすらとした日暮れの気配に、あざやかな風が吹いた。



【夏井みき ボーカル、ギター担当】


 軽音楽部の部長。

 毒舌だが、頼れるリーダー。


 成績が良く、素行も〇。軽音楽部のなかではいちばんの優等生だが、隠れてバイトをするなど、したたかさもある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ