88 勉強会④
伸びをして、のの、
「疲れたあ!」と、たのしげにいう。
「もう無理~」
反面、ゆか、ばったりあたまを伏せている。時刻も六時ちかくなり、勉強会もそろそろお開きということで、みんなゆっくり帰り支度をはじめる。
「ゆかちゃんがんばってたし、来週のテストはばっちりだよね」と、うめ、片付けながら。
「たぶんね~」
「そこは断言してくれよ」
みき、消しカスやらお菓子の包装やら、ゴミをビニル袋にまとめる。うちで捨てるよぉ、と、ゆかがいうので、そうしてもらう。
「先輩」と、トートバッグを肩にかけたシーがきて、「お菓子、けっこう余っちゃったんですけど……」
「ぜんぶ持って帰っていいよぉ」ゆか、うなだれたまま、「どんどん持ってけ泥棒ぉ」
「疲労でテンションおかしくなってるな……」
みき、とりあえずビニル袋をみっつわたす。お菓子は一年生でわけて、そのまま持って帰ってもらおう。
「あらみんな、もう帰っちゃうの?」
ふりかえると、ゆかのお母さんがリビングにはいってくるところだった。ゆかの親であるだけに、やはりおっとりした雰囲気で、それに美人だ。
「晩ごはんもたべていけばいいのに」
「そこまで厄介になるのは……」みき、苦笑して、「でも、今日は本当にありがとうございました。こんな大人数で押しかけちゃったのに」
「いいの、いいの。にぎやかなのはすきだから」
のほほんと、ゆかに似た表情で笑む。やっぱり親子だ。
みんな帰り支度をととのえて、「お邪魔しました」と戸殿邸を去る。
「また学校でねぇ」と、ゆかが手を振り、
「またいらっしゃいねぇ」と、お母さんも見送ってくれる。
いちどう、あいさつしてから、それぞれの帰路に就く。
みきは、方向がおなじ、くづき、うめといっしょに歩く。帰りしな、
「みなさん、よい方でした」
と、くづき、にっこり笑う。ほのかな夕陽に短い髪が透ける。みき、うめ、顔を見あわせて、
「わたしもそう思う」と、うめは大まじめに肯いた。
みき、やがてふたりとも別れて、我が家にたどりつく。まだお父さんは帰っていない。
部屋着に着替えていると、携帯が鳴った。
見ると、ゆかが軽音楽部のグループラインに、だれかの忘れ物の写真を送っている。二年生の教科書だ。
みき、かばんを覗いて、じぶんの忘れ物でないことを確認する。
「名前書いてないの?」と、訊くと、
「すごくきれい」と、返事がある。
「あたしじゃないなー」
「おねえちゃんも、違うそうです」
「じゃ、うめちゃんか、くづきちゃんだね」
とはいえ、どちらのものかは、じつのところ見当がつく。しっかりものに見えて、意外と抜けているほう。
くづきに連絡すると、やっぱり彼女の忘れ物だった。持ち主がみつかったと、グループラインでも報告する。
「来週、学校で受けとるって」
「ゆかが家に忘れそう」
「わたしが家に忘れそう~」
「しっかりしてくれ」
みき、くすりと笑う。夏の夕暮れである。
【大元みい子 シンガーソングライター】
O-Mot名義で活動中のシンガーソングライター。
だんだん知名度があがってきた。
最近のマイブームは、家庭菜園。多忙の日々のなか、ベランダで野菜を育てることにハマっている。我ながら寂しい趣味だと思っている。




