86 勉強会②
「数列わかんないよ~!」
と、ゆか、絶叫している。さっきまで黙々と勉強していたのに、休憩にはいったとたん、これである。
お昼ごはんをみんなでたべてから、勉強会がスタート。いまのところ一時間が経ち、とりあえず十分ほどの休憩をとろうとあいなった。
「まぁ、数列はむずい」と、みき、なぐさめつつ、「でもけっこう解けてるじゃん。基礎問とりこぼさなきゃ、赤点はないだろうから」
目標がひくい気もするが、赤点さえ回避できれば、このさいどうとでもなる。
「くづきちゃんは、やっぱり勉強得意なんだね」と、のの、ノートを見せてもらいながら、「字もきれい。ノートもすごくわかりやすい。え、天才?」
「いえ、そんなことは」
謙遜しつつ、後頭部に手をやって、あきらか照れている。わかりやすい。
うめ、
「だれかと勉強すると、集中できるね」と、緑茶を飲みながら。
「だね」みき、しおやゆかを見ながら、「こいつらも意外とまじめにやるし」
「しおちゃんだって、やるときゃやります」
「いつもそうならいいのに」
やりとりに、うめ、くすくす笑う。ペットボトルに蓋をして、
「それにしても、すごくひろいおうちだよね」と、あたりを見回す。
勉強会では、戸殿邸のリビングを使わせてもらっていた。二年生はダイニングテーブル、一年生は巨大なテレビのまえに固まって、期末対策。
「東京ドーム何個分だろうね」と、のの。
「そこまでじゃない」
「いつもふしぎなのですが」くづき、首を傾げて、「東京ドーム一個分って、どれくらいの面積なんでしょう」
「え、どうだろ。実物見たことないしなぁ」
「想像つかないね、たしかに」
くづき、のの、うめ、腕を組んで考えこんでしまった。東京ドームって、ズムスタよりおおきいのかな。おおきいんじゃない、単位になるくらいだし。
「となると、このくらいでしょうか」
くづき、両手いっぱいで円を描く。そうかもしれない、と、ののとうめ、賛同する。みきにはついていけない。
「ゆかは東京ドーム、見たことある?」と、しお。
「あるよぉ。だいたい、このぐらい」
ゆか、くづきが描いたものよりひとまわりおおきい円を空に描く。おー、と、感嘆の声があがる。みき、やっぱりついていけない。
「敵地ながら、あっぱれ」と、のの。「東京いってみたいなぁ。市内よりぜんぜん都会なんだよね」
「そうだねぇ。わたしはあんまり、すきくないけど……」
「そうなの?」
「あんまりのんびりできないんだよねぇ。ひともいっぱいだし」
「そっか。都会の時間は地方とはちがうんだね」
「うん、うん」
ゆか、しきりに肯いている。そんな彼女を見て、うめ、
「じゃ、ゆかちゃんがいったなかで、すきな町は?」なんて、訊いてみる。
「いろいろあるけど、けっきょくは広島がいちばんだよ~」
「あ、住みなれたところだもんね」
「大阪はどうですか?」
「たこ焼きがおいしい~!」
「ですよね!」
「みき、たこ焼きたべたくなってきた~」
「いわれてもな」
と、みきのスマホが震える。十分経過を報せるアラームだ。休憩時間はおわりらしい。
「うーん」ゆか、うなりつつ、「がんばるかぁ」
「えらい」うめ、ノータイムで褒める。「いっしょにいい点とろうね」
「うん~」
なんだかんだ、しっかり勉強会になっている。おのおの勉強にもどるのを見て、みきもシャーペンを手にとる。
【新藤さつき 小学二年生】
くづきのいもうと。
最近、みきの近所に引っ越してきた。
最近のマイブームは、英会話。家ではくづきに教えてもらって、イギリス生活の雰囲気をたのしんでいる。




