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朝を歩け。  作者: 維酉
3rd Single【夏への扉】
88/176

83 優勝

「へぇ、くづきちゃんって」と、のの、興味津々で、「大阪出身なの?」

「はい。府民です、元」


 くづき、はきはきした調子で肯く。教室にひとつ増えた机を囲み、みき、のの、くづきでお昼ごはんをたべている。


「中学生のころまで大阪にいたんです。気をぬくと、まだ関西弁がでちゃって」

「えぇー、聞いてみたい。みきちゃん、ちょっとくすぐってやりなさい」

「ひゅわっ」


 関西弁ではなかったが、かわいい悲鳴がでた。わき腹がよわいらしい。


「……」くづき、赤面して、「す、すみません……」

「いや、わたしこそごめん……」みき、申し訳なさそうに、「でも、ののちゃんにいわれたら従うしかなくて」

「うん。人質にぎってるからね」

「えっ、そうなんですか⁉」

「ちょっと奥さんと子どもをね……」

「妻子がいるんですか、みきさん⁉」

「いやいや」


 おもしろい子だな、と、みき、苦笑する。どこまで本気なのかわからないが、表情を見るかぎり、へたな嘘を信じこんでいそうな気配がある。


「天然だね、くづきちゃん」と、のの。

「はぁ」よくわかっていなさそうなかおで、「ちなみに、お子さんはおいくつなんですか?」

「ののちゃんのせいだよ、これ」

「ごめんごめん」


 のの、嘘だとバラすと、びっくりしたような表情をされてしまう。おもいのほか、天然というか、ひとを信じやすいたちなのかもしれない……心配になるほどに。


「よし、悪趣味な嘘はもうやめよう」と、のの、ひとり肯き、「ここからは、くづきちゃんクイズのお時間です」

「わたしのクイズですか?」

「第一問、くづきちゃんのすきなたべものは?」

「チョコミント味のアイスクリーム」と、みき、すかさず答える。

「ふむふむ、正解は?」

「た、たまご焼きです!」

「ざんねん、みきちゃんマイナス1ポイント!」

「誤答バツあったんだ」

「す、すみません。チョコミントはどうも苦手で……」

「すききらいわかれるよね、やっぱり」

「では……第二問」


 のの、ウインナーを口に放りこんで、ちょっと間があく。なにを訊きたいか考えているらしい。


「第二問です」おもいついたみたいで、「ずばり、くづきちゃんにはお兄ちゃんがいる、マルかバツか」

「バツ」

「正解は?」

「バツです」

「おー、みきちゃんプラス3ポイント!」

「けっこうもらえる」


 これで、みき、所持ポイントは2になった。だからといって、どうということもなさそうだけど。


「ちなみに、いもうとちゃんはいるよね」

「はい、小学生のいもうとがいます」

「そうなんだ。追加情報もバッチリだね。プラス3ポイント!」

「ルールがゆるい」


 では、第三問――と、のの、あらたまっていうが、やはり問題を考えるのに数秒の間がある。


「んん、いきます、第三問。くづきちゃんが留学していたのはイギリスのどこ?」

「あれ、どこだったっけ。朝の自己紹介でいってたよね」

「はい。いいました」

「みきちゃん、意外とこまかいところ覚えるの苦手だからなあ」

「う」痛いところを突かれる。「いや、覚えてるよ。えーっと……」

「さぁ、どうだ――⁉」

「みきさん、がんばって――!」

「イギリスの……」記憶をたぐりよせて、「そうだ、ヨーク」

「おぉ、正解です!」


 くづき、諸手をあげてじぶんのことのようによろこんでくれる。そこまでうれしそうにされると、みき、なんとか当てられてよかったという気になる。


「くづきちゃんが大よろこびなので、プラス5ポイント!」

「やっぱりゆるいな、ルール」

「ということで、優勝はみきちゃんです」

「おめでとうございます!」


 優勝もなにも、とおもわなくもなかったが、みき、ありがたく祝われることにした。



【笹田うめ 高校二年生】


 ひかえめな性格の高校二年生。

 卓球部所属。


 最近のマイブームは落ちものパズルで、ねねに誘われてはじめた。パズルゲームがもともとすきで、しっかりハマってしまったが、自制もしっかりできている、つもり。

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