79 グローバル化
「ということで、もうすぐ期末なわけですが」
と、のの、昼休みに単語帳をもって、
「みきちゃん、勉強してる?」
「そこそこね」
「そこそこかぁ。わたしもそこそこ」
「そこそこの点をとれればいいかなって」
「うんうん、そこそこの成績で充分だよね」
「そうそう」
「みきちゃん」
のの、まじめなかおで、
「そんなこといいながら、毎回いい点とるじゃん!」
「そこそこだよ」
「あれがそこそこなら、うちの成績はどうなるんですか!」
「わたしといっしょぐらいじゃん」
「えへへ」のの、クールダウンして、「でも今回はほんとうにヤバイ」
「英語が?」
「うん。アイムジャパニーズだからイングリッシュはノーオーケー」
「ゆかに教えてもらったら?」
「ゆかちゃん?」
「あいつ、英語だけは得意だから。ネイティブだから」
「えー、すごい! かっこいいね!」
のの、単語帳を意味なく繰りながら、いつ教えてもらおうかなー、などと呟いている。みき、お弁当を片付けて、
「ヤバイ教科は英語だけ?」
「ぶっちゃけ、漢文もヤバイ」
「あ、それはわたしもヤバイかも」
「漢文得意なひとはしらない?」
「どうだろ。うちの部のシーちゃんは中国出身だけど」
「さすがに漢文すらすら読めるってことはないんじゃない?」
「まぁ、結局は古文だしね」
ぱたん、と単語帳を閉じて、のの、あきらめたようである。で、そういえば、とうわさ話をひとつ。
「うちのクラス、ひとり増えるらしいね?」
「あぁ」
みき、あいまいに返事。今朝だったか、たしかに、だれかからそんなうわさを聞いた気がする。
「増えるって、どういうことなの?」と、みき。「転校生?」
「いや、転校ってわけじゃなくて……なんだったかな。留年?」
「え、留年?」
「うん。留学して、留年?」
「あ、そういうこと」
「一年ぐらい海外にいたから、帰ってきて、また二年生のクラスで、みたいな話だったかな」
「そっか。なら英語得意なんじゃない?」
「あ、たしかに! 英語圏かは知らないけど!」
頼るアテが増えたとおもって、のの、盛りあがっている。でも、英語圏の留学かがわからないなら、ぜんぜん、ぬかよろこびもありうる。
それにしても、と、みき。そういう一年くらいの留学をして近く帰ってくる、という話は、なんとなくどこかで聞いた覚えがある。
「どうしたの、みきちゃん」と、のの、のぞきこんで。「考えごと?」
「いや、だいじょうぶ。なんでもない」
「そう?」のの、明るい調子で、「それにしても、国際色豊かになってきたねぇ」
「国際色?」
「ゆかちゃんは英語ペラペラだし、軽音楽部には海外出身の子がいるし、さらに留学帰りの子が増えるわけでしょ」
「うん」
「みきちゃんのまわり、けっこう国際色豊かになりつつある」
「あぁ、そういわれると」みき、肯きつつ。
「グローバル化の進展だね」
「地理Bだね」
「ぶっちゃけ地理Bもヤバイ」
「ぜんぶヤバイじゃん」
チャイムが鳴るまで、ささやかな勉強会になった。
【戸殿ゆか 高校二年生】
マイペースな高校二年生。
たべるのがすき。
最近のマイブームはとくにないが、食とねこに対する思いはかわらない。近所にねこカフェができるといううわさを聞きつけてからは、毎日がるんるん気分。




