表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝を歩け。  作者: 維酉
3rd Single【夏への扉】
82/176

77 もうすぐ

 みき、月曜日は部活もないので、はやめに帰っていたら、


「あ、おねえちゃん!」と、うしろから声をかけられた。


 はて、わたしにいもうと、いたっけかな。おもいつつ、ふりむくと、ランドセルを背負ったおんなのこがこちらに駆けてくる。


「やっぱり、このあいだのおねえちゃん!」


 いわれて、おもいだした。つい最近、まいごになっていたところをたすけた、ちいさなおんなのこ――新藤さつきだ。


「こんにちは」と、あいさつしてみる。「いま帰り?」

「うん! おねえちゃんも?」

「そうだよ」


 じゃ、いっしょに帰ろう! と、屈託のないえがおでいわれる。みき、子どもにはよわいので、間を置かずにうなずいている。


 ということで、六月の暮れ、ならんで歩きながら、


「このあたりには、もう慣れた?」と、訊く。

「うん! まいごにはなんないよ!」さつき、自信たっぷりに。「いっぱいボーケンしたから!」

「冒険?」

「もくようびは、四時間でおわりだから……はやくかえって、パパとボーケンしたの」

「そうなんだ」


 聞くと、どうやらあたり一帯をていねいに散策したらしい。このあいだ、まいごになっていた公園をはじめ、バス通りから、ちょっと離れたみきの団地まで。


 だから、もうまいごにはならない。そう繰りかえすさつき、満面のえみである。


「そういえば、おねえちゃんって」と、こんどはさつきから、「こうこうせい、なんだよね」

「うん、そうだよ」

「さつきのおねえちゃんもね、こうこうせいなの」

「へぇ、おねえちゃん、いるんだ」

「うん。でも、いま、りゅーがくしてるから、あえないんだ」

「留学? 外国にいるってこと?」

「そう! あ、でも、もうすぐ帰ってくるんだって。このあいだ、電話でいってた」

「たのしみだね」

「うん!」


 で、ちょっと〈おねえちゃん〉の話をきいてみる。イギリス留学しているらしいその子は、なにか交換留学のプログラムで一年ほど向こうにいっているとか、なんとか。


 その留学期間がそろそろおわるみたいで、さつき、うきうきしている。


「ちなみに、もうすぐって、どれくらい?」

「三日後だって」

「え⁉」おもってたより、ずっとはやかった。「そっか……うれしいね」

「うん!」


 というか、そもそも、七月ってそんなにすぐなのか――と、みき、あたまのなかでカレンダーをだす。もう、文化祭基準で、あと何週間、あと何日……とだけ考えてたせいで、日付感覚も微妙になっている。


 と、どこからか五時のサイレンが鳴った。まずい! と、さつき、寄り道しすぎたとくちばしって、


「いそごう、おねえちゃん!」

「わっ、うん」


 いきなり走るので、みき、小学二年生の足にがんばってくらいつく。けっこうはやい。さすがにまかれることはないし、むしろ余裕なのだけど、小学生の元気がありあまっているかんじと張りあうのは、意外としんどい。


 というか、おもわずついていってるけど、わたしの家、べつの団地なんだよな。まぁいきなり走りだすような小学生は、放っとけないし、送るぐらいはしようか。みき、いちおう安全に配慮しつつ、伴走する。


 で、無事に到着。若干、息をきらしつつも、まじめに体育を受けておいてよかった。らくに走れた。


「じゃあ、バイバイ! おねえちゃん!」


 と、さつきは手を振って家にはいっていく。みき、すっかり息を整えて、手を振りかえす。


 ――走るのはわるくない。体力はあるし。


 ただ、ひとついうなら、いま、ずいぶん暑い。たしかに七月、夏はもうすぐらしかった。



【夏井みき 高校二年生】


 毒舌だが根はやさしい高校二年生。

 子どもによわい。


 最近のマイブームは落ちものパズルで、暇な時間によくやっている。うめとねねもおなじゲームをやっており、うめがいちばんうまい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ