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朝を歩け。  作者: 維酉
はじめてのEP【S・S・G】
75/176

70 0.5ドーナツ

 お昼どき、屋外でやっている出店の、焼きそばを買って、いつものメンバーでたべる。みき、しお、ののはソースで、うめ、ゆかは塩焼きそば。


 いいかんじのベンチを見つけたから、そこに並んで座っている。


「大成功だったね、シンデレラ」と、のの、箸を割りつつ。「うめちゃんのお芝居よかったよ」

「あ、そうかな……?」はにかんで、うめ、「大根じゃなかった?」

「大女優だったなー」しおも会話に加わって、「『こんなところにほこりがたまってますわ、シンデレラさん』……って」

「あ、やめてよぉ。恥ずかしいからぁ」


 シンデレラの劇で、うめ、継母役だった。シンデレラをいじめ抜く役柄が、意外にもしっくりきてしまうほど、演じきっていた。


「実は本性、あっち?」と、みき。

「へっ? そ、そんなことはないと……おもいたいけど」

「役と演者の人格はわけて考えるべきだよ、みきちゃん」

「湯葉と豆腐がちがうようになー」

「たとえがわかんねぇよ。酔ってんのか?」

「みき~」と、ゆか、いつもどおりマイペースで、「あそこにベビーカステラがあるよぉ」

「いや、あわねぇだろ、焼きそばに」

「食後のおやつだよぉ」

「まぁいいけど。食いすぎてドラム叩けないとかはやめろよ」

「善処します~」

「不安だ……」


 ゆか、焼きそばをみきにあずけて、ひとり屋台にきえていく。そのうしろすがたを眺めて、確認するように、うめ、


「軽音楽部の出番は、三時からだったよね」

「うん。ま、集合はもうちょっとはやいけど」

「うち、たのしみだな」のの、焼きそばをのみこんで、「みんなの演奏、はじめて聴くし。ねねも出るしね」

「わたしももちろん、観にいくよ」

「ありがと、ふたりとも」

「親御さんとかきたりするの、やっぱり」と、のの。

「あぁ、わたしのおとうさんは仕事はやあがりでくるとか、なんとか」

「あたしの親はきてたな、もう」しお、なんともなげに、「お化け屋敷も見にきたし。あとは、そうだな、みきの人脈がものをいう」

「まぁ、いろんな子に応援はされたけど……」

「そっか、なら客席満員かな」と、のの、しきりに肯いて。

「ベビーカステラ買ってきた~」


 ゆか、おおきな紙袋を抱えてもどってくる。どれだけひかえめに見積もっても、食後のおやつ、という量ではなさそうである。


 ゆか、焼きそばを受けとって、


「なんの話してたの~」

「客席埋まるかなって話」と、みき。「ゆかは家族とか、くるのか?」

「両親ともどもくるよぉ」

「おー、緊張するなー」

「そうだねぇ、緊張するねぇ」

「ゆかはともかく、しおはねーだろ」

「おまえ、あたしをなんだとおもってるんだ」

「するのか、緊張」

「しないけどー」


 いまさら緊張してもしかたないしなー。しお、あっけらかんといいやがる。


 まぁ、そういうところが、たのもしいのだけど。


「そういえば、ドーナツもあったんだよねぇ」

「え、ベビーカステラだけじゃなかったのか?」

「うん~、ののちゃん、たべる?」

「いいの? じゃあ1ドーナツもらおうかな」

「うめちゃんは~?」

「あ、じゃあ、1ベビーカステラで」

「なんなんだ、その単位」

「しおは~?」

「1.5ベビーカステラ」

「刻むなよ」

「みきにも~」

「あー……まぁ、0.5ドーナツで」

「みきも刻んでんじゃん」


 食後のおやつに、ドーナツとベビーカステラを、それぞれたべる。ゆかは、はてしない量をたべていたが、胃が無尽蔵なので問題なさそうだった。



【握津のの 高校二年生】


 みきのクラスメイト。

 明るく人当たりのいい女の子。


 軽音楽部の一年生、ねねの姉で、妹のことをずいぶんと溺愛している。妹とは対照的に行動力があって、人と話すのがすき。

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