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朝を歩け。  作者: 維酉
はじめてのEP【S・S・G】
66/176

61 初見

「わ~、濡れちゃったぁ」


 と、ゆか、校舎の入口で。文化祭の買い出しは、つつがなくおわったものの、学校にもどるとちゅうで雨がふりだした。


 そのせいで、びしょ濡れ。つづくシーとかうなも、似たようにびっしょりである。


「うお、ずいぶんだな」


 と、みき、タオルを持って駆けつける。うしろから、しおとねねも現れる。


「ほら、ちゃんと拭け。ふたりも」

「ありがとう~」


 買い出し組、ひとまず髪を拭いたりしながら。で、濡れた服はどうするか、ということで、まぁ部室でジャージに着替えるのがよろしいなんて話になる。


「ねねちゃん、ねねちゃん」


 と、シー、濡れた髪を貞子みたいにして、


「雨の日に現れる妖怪」

「ひえっ!?」


 カテゴリがかなりアバウトだが、ちゃんと驚いてくれる。


 かうな、スカートを絞って、


「荷物も濡れちゃったかもしれません」と、うつむきがち。

「しかたないよ。それより部室にいこう。風邪ひいたらいけないし」

「うぅ、すみません」

「いいってば」


 みき、びしょびしょのお団子あたまを拭いてあげながら、なぐさめる。


 すこしして、部室にもどってくると、もう午後五時のサイレンが鳴る。


「傘忘れちゃいました」と、髪をほどいたかうな。「うーん、やっぱり梅雨はきらいです」

「あたしも傘忘れたわー、みき」

「どうしてこっちを見ていうんだよ」

「ねねちゃん、ねねちゃん」と、部室のすみでシー。「雨の日に出る妖怪、ちょっと乾いたバージョン」

「ひえっ!?」


 二回目で、しかも乾きかけて貞子っぽくもないのに怖がってくれる。


 三人、ジャージに着替えてしまって、制服はてきとうなところにかけるなどしておく。そのあいだに、みき、買い出しの品とレシートのチェックをおえて、問題ないことを確認する。


 ゆか、自分のジャージすがたを見ながら、


「ちょっと新鮮かも~」

「たしかに、部室でジャージって、ちょっとテンションあがりますっ!」

「じゃ、いす取りゲームやるか」

「いいですね」シー、うなずく。「燃えてきました」

「え、またやるのかよ」みき、呆れている。「もう並べはじめてるし」

「六人でやるなら楽しいんじゃねえのー」

「まぁ三人でやるよりかはな……」

「曲流すのは~?」

「よし、ねねちゃん」

「ま、またうちですか……!?」

「えっと……いす取りゲームって、なにやるんですか?」

「え?」


 かうなのひとことに、一同、かたまる。まさか知らないわけあるまい、とだれもが思ったが、かうなの顔、本当にわからなくて困惑しているかんじ。


「えっとね」と、最初に口を開いたのは、シー。「いすをめぐるサバイバルゲームだよ」

「サバイバル? 面白そうっ! ルールは?」

「まず……いまは六人だから、ひとりふるい落とすためにいすを五つだけ並べるね」

「ふるい落とすために」

「すると死のカウントダウンが流れ出すから」

「死のカウントダウン」

「それが流れているあいだは踊りくるう。そしてやがてきたる曲の終焉に――」

「終焉に――?」

「座るんだよ……いすに!」

「い、いすにっ!?」

「そんなに驚くところかなぁ」と、みき。

「とにかくやるのがはやいよ」と、結局はシー、身もふたもない。


 で、想定外のいす取りゲーム初見ひとりを含む、六人で開始した。


 熱戦のすえ、ゆかが優勝した。



【大矢かうな 高校一年生】


 軽音楽部のリードギター担当。

 いつでも明るいムードメーカー。


 はっちゃけているわりに普段はけっこうしっかり者だが、たまにとんでもない大ボケをかますことがある。シーとは幼馴染。

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