61 初見
「わ~、濡れちゃったぁ」
と、ゆか、校舎の入口で。文化祭の買い出しは、つつがなくおわったものの、学校にもどるとちゅうで雨がふりだした。
そのせいで、びしょ濡れ。つづくシーとかうなも、似たようにびっしょりである。
「うお、ずいぶんだな」
と、みき、タオルを持って駆けつける。うしろから、しおとねねも現れる。
「ほら、ちゃんと拭け。ふたりも」
「ありがとう~」
買い出し組、ひとまず髪を拭いたりしながら。で、濡れた服はどうするか、ということで、まぁ部室でジャージに着替えるのがよろしいなんて話になる。
「ねねちゃん、ねねちゃん」
と、シー、濡れた髪を貞子みたいにして、
「雨の日に現れる妖怪」
「ひえっ!?」
カテゴリがかなりアバウトだが、ちゃんと驚いてくれる。
かうな、スカートを絞って、
「荷物も濡れちゃったかもしれません」と、うつむきがち。
「しかたないよ。それより部室にいこう。風邪ひいたらいけないし」
「うぅ、すみません」
「いいってば」
みき、びしょびしょのお団子あたまを拭いてあげながら、なぐさめる。
すこしして、部室にもどってくると、もう午後五時のサイレンが鳴る。
「傘忘れちゃいました」と、髪をほどいたかうな。「うーん、やっぱり梅雨はきらいです」
「あたしも傘忘れたわー、みき」
「どうしてこっちを見ていうんだよ」
「ねねちゃん、ねねちゃん」と、部室のすみでシー。「雨の日に出る妖怪、ちょっと乾いたバージョン」
「ひえっ!?」
二回目で、しかも乾きかけて貞子っぽくもないのに怖がってくれる。
三人、ジャージに着替えてしまって、制服はてきとうなところにかけるなどしておく。そのあいだに、みき、買い出しの品とレシートのチェックをおえて、問題ないことを確認する。
ゆか、自分のジャージすがたを見ながら、
「ちょっと新鮮かも~」
「たしかに、部室でジャージって、ちょっとテンションあがりますっ!」
「じゃ、いす取りゲームやるか」
「いいですね」シー、うなずく。「燃えてきました」
「え、またやるのかよ」みき、呆れている。「もう並べはじめてるし」
「六人でやるなら楽しいんじゃねえのー」
「まぁ三人でやるよりかはな……」
「曲流すのは~?」
「よし、ねねちゃん」
「ま、またうちですか……!?」
「えっと……いす取りゲームって、なにやるんですか?」
「え?」
かうなのひとことに、一同、かたまる。まさか知らないわけあるまい、とだれもが思ったが、かうなの顔、本当にわからなくて困惑しているかんじ。
「えっとね」と、最初に口を開いたのは、シー。「いすをめぐるサバイバルゲームだよ」
「サバイバル? 面白そうっ! ルールは?」
「まず……いまは六人だから、ひとりふるい落とすためにいすを五つだけ並べるね」
「ふるい落とすために」
「すると死のカウントダウンが流れ出すから」
「死のカウントダウン」
「それが流れているあいだは踊りくるう。そしてやがてきたる曲の終焉に――」
「終焉に――?」
「座るんだよ……いすに!」
「い、いすにっ!?」
「そんなに驚くところかなぁ」と、みき。
「とにかくやるのがはやいよ」と、結局はシー、身もふたもない。
で、想定外のいす取りゲーム初見ひとりを含む、六人で開始した。
熱戦のすえ、ゆかが優勝した。
【大矢かうな 高校一年生】
軽音楽部のリードギター担当。
いつでも明るいムードメーカー。
はっちゃけているわりに普段はけっこうしっかり者だが、たまにとんでもない大ボケをかますことがある。シーとは幼馴染。




