59 お化け
「クラスの出し物は、喫茶店?」と、うめ。
「そうそう」みき、うなずく。「うめちゃんのクラスはなにするの?」
「シンデレラの劇をやるとか」
「へぇ、いいなー」と、のの、たのしそうに、「うめちゃんがシンデレラ?」
「あ、ううん。わたしは継母役」
「えっ」
みき、のの、ふたりしておどろく。あんないやな感じの継母役を、まさかうめがやるとは。
「そ、そんなにへんかな?」
当の本人、おどろくふたりに困惑ぎみ。
「へんっていうか……うめちゃん、ひとをいじめた経験ある?」
「ないよ!?」
「だよね。人畜無害な雰囲気だもん」のの、腕組みしてうなずく。「ちなみに、どういう経緯できまったの?」
「くじ引きで……シンデレラにならなくてよかったかな」
「えー、似合いそうなのに。ねぇ、みきちゃん」
「うん。シンデレラでも似合うとおもうよ」
「うーん、うれしいけど、わたしは継母で心が落ち着いちゃってる」
「そっか。新境地って感じでおもしろいかもね」
みき、いいつつ、あたまのなかで継母なうめを想像してみる。シンデレラに向かって嫌味をいったり、ひどい扱いをしたり……うん、しっくりこない。
「そういえば、ゆかはなにするの?」
「ゆかちゃんは音楽つくるらしいよ」
「劇でつかうの?」
「そうそう。意外とみんな、軽音楽部で曲つくってるの知ってたみたいで」
「へぇ、あ、そうだったの?」のの、首を傾げる。「それは知らなかったな」
「三曲くらい発注されてたかな。あ、でも、おかねとってたよ。数百円だけど」
「ちゃっかりしてんなぁ」
まぁとにかく、ゆか、クラスでうまくやれているようで、みき、安心する。このついでで、すこしくらい友達をふやしてくれるといいのだけど。
うめ、
「喫茶店はさ、なにを出すの?」
「ハーブティーを仕入れて、いいかんじに」みき、思い出しながらいう。
「あ、けっこうぼんやりだね」
「みきちゃんって、こういうときはてきとうだよね。もうちょっと具体的になってたよ」
「ま、まぁ、準備になったらちゃんとやるから」
「ほんとかなぁ」
「ハーブティーかぁ。おいしそうだね」
「時間が空いたらぜひ来てよ。サービスするからね」
「うん、じゃあ、きっと行くね」
と、そんなこんなで休憩時間おわりそうで、うめとわかれて教室にもどる。
途中、のの、
「玉原さんのクラスはなにやるの?」
「なんだっけ。お化け屋敷とかいってたかな」
「おー、たのしみ」
「好きなの、こわいやつ」
「大好き。お化け屋敷もそうだし、ホラー映画とかゲームとか……」
みき、そういえばこの子は絶叫系も好きだったな、と思い出す。びっくりしたり叫んだりする、スリルがあるやつを好むのだろう。
「みきちゃんは、こわいの得意?」
「苦手ではないかな」
「じゃ、文化祭のときは一緒にいこうよ」
「そうだね。わたしもあいつのクラスは気になるし」
というか、もしあいつがお化け役で出るんだったら、見てみたい。
このあいだはゾンビの被り物が存外にあっていたし、きっと面白い。
「文化祭、たのしみだね」と、のの。
「うん」
みき、うなずく。文化祭まで、あと二十日もなかった。
【戸殿ゆか 高校二年生】
軽音楽部のドラム担当。
天然だが、けっこう手厳しいところがある。
しおの誕生日には木彫りのハツカネズミをあげた。とくに理由はないが、しいていえばしおの誕生日プレゼント以外に用途がなかった。




