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朝を歩け。  作者: 維酉
はじめてのEP【S・S・G】
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58 本日の主役

 しお、放課になって、教室を出るなり、


「どうも、ちゃんしお先輩」


 と、声をかけられる。見ると、ハロウィーンになると百均で売ってそうなチープなゾンビの被り物した、女子がいる。


「おー……」ちょっと考えて、「だれ?」

「まぁまぁ、よってらっしゃい見てらっしゃい」

「えぇ?」


 ぐいっと腕を引っ張られる。抵抗するのもめんどうで、そのままついていくと、軽音楽部の部室の前。


 ゾンビ、


「安いよ安いよ」


 と、いいながら、部室を指さす。ことばの意味はわからないが、とりあえず入れということらしい。


 部室が売り払われたかなー、とか思いながら、開けてみる。


 そしたら、途端にクラッカーの音が響いて、


「お誕生日おめでとう!」なんて、たくさんの声。


 しお、めずらしくびっくりして、うしろからは、


「おめでとうございます、ちゃんしお先輩」


 と、ゾンビの被り物を外したシーの祝福。


 今日は六月八日、しおの誕生日だった。


「おー……」うまく言葉が出ない、しお。

「なに~、そんなにびっくりしたぁ?」ゆか、面白そうに。

「いや、なんつーか……覚えてたんだなと思って……今日はうめにしかいわれなかったし……」

「おう、なんとか忘れなかった」

「またまたみき先輩! このあいだばっちりプレゼント買いにいってたじゃないですか!」

「そういうとこだよ、みき~」

「うっせ」


 そう、つい先日、出かけさきでかうなに会ったとき、プレゼントを買いに隣町に行っていたところで。


 そのことを話したら、楽しいこと好きのかうな、こういうサプライズを企画して。


 軽音楽部のみんな、それに賛成して、いまに至る。


 ねねは、


「せっかくなら、こういう会をつくって、日ごろの感謝を伝えられたらなって……!」

「そういうことです、ちゃんしお先輩」


 シー、どこからともなくタスキを取り出す。『本日の主役』と書いてある。それを無理やりかけさせて、


「いつもありがとうございます」

「あ、ありがとうございます!」

「わたしからも! 感謝のしるしに、お菓子の詰め合わせですっ!」

「いい後輩もったな、しお」


 みき、半分からかいながら、そういってみる。


 するとしお、おもむろにシーからゾンビの被り物をとって、ずぼっとあたまに。


「あ~、照れ隠しだぁ」ゆか、指さす。

「わたしより似合ってますね、先輩」シー、腕組みしてうなずく。

「似合ってるけど、今日のところは」


 みき、苦笑いしながら、


「とりあえず奪え!」

「おー!」


 かうながとびかかる。シーもおいかける。ねねは盾にされる。


 しお、かうな、シーの三人、ねねのまわりをぐるぐるしながら、楽しそうにやってる。


「これ、成功かなぁ」ゆか、のほほんとした面持ちで。

「大成功だろ、たぶん」


 みき、『本日の主役』(ゾンビ)を見ながら、そういった。



【玉原しお 高校二年生】


 軽音楽部の面倒くさがり屋。

 とはいえ真面目にやるときはしっかりやる。


 天才肌だがやる気がないのでどうしようもない。十七歳の誕生日プレゼントはたくさんもらったが、中でもゆかからもらった木彫りのハツカネズミが意味わからなくて気に入ったらしい。

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