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朝を歩け。  作者: 維酉
はじめてのEP【S・S・G】
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54 高利

「もうすぐ梅雨だね」と、のの、曇り空を見上げながら。

「うん? そうだね」みき、床を掃きながら、「雨はやだな」


 教室の掃除はたいくつらしい。のの、さっきからぼーっとして、そろそろぐずりそうな空を窓から眺めている。


「今日って雨降るの?」

「どうだろ。降るかも」

「そっか、早く帰らないとな」

「自転車だっけ」

「そうそう」のの、振りかえって、「みきちゃんは?」

「バス。歩いてもいけるけど」

「バスか。バスガス爆発って三回いえる?」

「バスガス爆発、バスガス爆発、バスガス爆発」よどみがない。「いえるもんだね」

「すごい。うちは無理」

「ののちゃんならできるよ」

「うーん。バスガス爆発、バスガス爆発、バスガス爆発」いえた。「できたね」

「おめでとう。机運んでね」


 ようやっと、のの、うごきだす。で、きちんと机を並べていって、五分もしたらすっかり終わった。掃除当番、みんな帰っていく。


 と、そこで、


「あ、雨」のの、ぽつりと外を見て。


 それが、途端にけっこうなざあざあ降りで、あからさまに帰れない。このなかを自転車で行こうなんて、ちょっとばからしい。


「どうする?」

「どうしよ。これ、やむとおもう?」

「弱まりはするかも」

「じゃあ、ちょっと様子見しようかな」

「バスという選択肢もある」

「おかねがない」

「貸そうか」

「利子は」

「三十パーセント」

「やむなしか……あれ」


 のの、なにかに気づいて、とことこ走っていく。みき、そのさきを見ると、うめがいる。


「笹田さーん」と、のの。

「うわっ」条件反射でのけぞるうめ。


 高利を避けようと借りにいったらしい。なんだか交渉しているみたいで、みき、それをうしろから眺めている。


 そういえば、あのふたり、けっきょくどうしてあんな関係になったのだろう。うめ、ののに対しては、人見知りとかいう反応とちょっとちがうし。


 ちょうどいまも、困ってるふう。たすけてあげる? まぁ、そうしようか。


「ののちゃん、カツアゲするな」と、みき、うしろからほっぺたをつねる。

「してないよー」

「あ、みきちゃん」

「やっほ」

「えっと……」うめ、苦笑いしながら、「あ、三百円でいいん……でしたっけ?」

「うん、ありがとう! ちなみに利子は」

「へ? ゼロだけど」

「みきちゃん、やさしさって、こういうことをいうんじゃないかな」

「そうかもね」


 おかねの受け渡しがおわり、いつのまにか付箋でつくっていた契約書みたいな紙切れをののがうめに渡す。で、のの、感謝しながら帰っていくので、うしろすがた見ながら、みき、


「そういえば、なんでののちゃんとは微妙な感じなの?」

「へ? うーん、恥ずかしいからあんまりいいたくないけど……ちょっとまえに、おとうさんとけんかしちゃって」


 で、いきおいで家を飛び出し、それも暗い時間帯で、いろいろ心細くなって公園で泣いていたら、コンビニ帰りだったののに見つかったらしい。


「なんか、それ以来、弱みをにぎられてる感じがして……」

「あぁ、わからなくはないかも」

「あと、あまりにもいいひとすぎて、気後れする」


 とかいったところで、きゅうにふっとわらって、


「まぁ、わたしが人見知りなだけなんだけど」

「そっか」

「仲良くなれるかな」

「うん? なれるよ。すくなくとも向こうは、もうなってるつもりだとおもう」

「あはは、そうなのかな」うめ、頬をかく。「あ、みきちゃん、いまから部活?」

「うん。うめちゃんも?」

「そう。がんばってね、文化祭たのしみにしてるね」

「ありがと」


 ふたり、今日のところはさよならをする。いつのまにか、雨は小降りになっていた。



【握津のの 高校二年生】


 みきのクラスメイト。

 軽音楽部のねねの姉。


 だれとでもわけへだてなく話せる。みきとは休みの日によく遊ぶ仲。どこか抜けているところがたまにある。

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