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朝を歩け。  作者: 維酉
はじめてのEP【S・S・G】
58/176

53 くじ引き

「負けちった」と、しお、ベンチに座りながらいう。

「おつかれぇ」

「おつかれさま、しおちゃん。お茶のむ?」

「さんきゅー」


 うめからペットボトルいりのお茶をもらって、ぱすりとふたを開ける。のどに流して、それからグラウンドをみわたして、


「つぎ、みきのクラス?」と訊く。

「そうだよぉ」ゆか、ゆったりうなずく。「勝てるといいねぇ」

「わたしたちみんな、初戦敗退だもんね」

「かなしいなー」


 五月末、球技大会の時期である。ことしの種目はソフトボールがえらばれて、一ゲーム三回表裏のきまりで、トーナメント戦。しおのクラスも、ゆかとうめのクラスも、一回戦であえなく敗退ということで、のこすはみきのクラスを応援するのみである。


 と、どうやら試合がはじまった。みきのクラスが先攻で、一番バッター、二番バッターと出塁する。


 ノーアウト、ランナーは一塁二塁。そこで三番バッター、みきがあらわれる。


「みき~、がんばれ~」


 と、ゆか、声をはりあげると、どうやら気づいてくれたらしい。こちらを見て、ちょっと笑って、手を振ってくれる。


 で、構える。相手ピッチャーが投げて、初球打ちだった。きれいなフォームでバットを振れば、打球はセンターの真上を抜けていく。


 一塁、二塁のランナーはホームに帰って、みきは二塁。さっそく二点先取だ。


「やるなー」と、しお。「しおちゃんの応援がいきたな」

「そうだねぇ」てきとうに答える、ゆか。「ねぇねぇ、うちわとかあったら、よかったかな?」

「面白そうだけど」うめ、ちょっとかんがえて、「あとでみきちゃんに怒られそう」

「たしかにねぇ」


 みきのクラス、そのままの調子で点を重ねて、三回の表がおわるころには、六対二の状況。裏もきっちりおさえて、快勝する。


 もどってきたみきに、しお、


「一回戦突破、おめでとー」

「お、あんがと」

「お茶どうぞ」と、うめ、なんだか野球部のマネージャーみたいな。

「すごいねぇ、打ってたねぇ」

「たまたまだよ」

「希望の星だねぇ」

「なんで?」

「ほら、わたしたちもう、敗退しちゃったから」

「あぁ、そういう」お茶をのみながら、みき、「でも、敗者復活とかあるじゃん。別枠でトーナメントやるんでしょ」

「そうなの?」

「まぁ参加クラスはくじ引きで決まるんだけど」

「あ、じゃあ、当たらないね。クラス多いし」


 うめ、肩をすくめる。そこに、


「戸殿さーん、笹田さーん」と、ふたりを呼ぶ声。振りかえると、ふたりのクラスの体育委員が、「くじ引き、当たったよー」なんて。


 まさか。うめ、ゆか、びっくりしてしまう。


「いってらー」と、しお。「あたしのぶんも楽しんで……」

「そういやおまえ、今日の成績は?」

「内野フライとピッチャーゴロです」

「あ、わるい……」

「あやまるなよ!」

「あはは」うめ、みきとしおの会話に苦笑いしてしまう。「あ、じゃあ、行こっか、ゆかちゃん」

「そうだねぇ」


 ゆか、あんまり乗り気じゃないみたい。みき、その肩をぽんと叩いて、


「ま、てきとうにやればいいよ」といってみる。

「そうだねぇ」能天気なへんじ。「応援しててねぇ」

「おう」


 にへらと笑みをうかべて、ゆか、クラスに戻っていった。



【夏井みき 高校二年生】


 面倒見のいい女の子。

 口はわるいが、けっこう親切。


 まわりからポニーテール以外の髪型が不評で、あまりおろさないが、年に数度は挑戦してみることがある。でも結局ポニテにもどる。

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