51 おなじ①
「準備は?」
「だいじょうぶですっ」
かうな、はつらつにいう。ほか、軽音楽部四名、みきを見て、うなずく。
みき、「よし」といって、ゆかに目配せ。すると、スティックを鳴らして、
「ワン、ツー、さん、はい」
イントロから、入っていく。『恋と渦巻き』と銘打たれた曲、部員、練度があがってきたので、試しに合わせてみるのだ。それに、本番一か月前、そろそろ一度はやっておかないと。
たいへんなのは、みき、自分で演奏しながら、ほかの部員もそれなりに詳しく見ないといけないこと。音を聞くよゆうはあるけれど、こまかいところまで問題なく、といわれると、すこし自信がない。
とはいえ、聞いていると、ゆか、しおの二年生は、けっこうちゃんとしている。こういうしっかりしたところは、やはり、音楽経験者と自称・天才なのである。むしろ、みきのほうが危なっかしいかもしれない。
一年生はといえば、もうひとりのボーカル、ねねは、まったく問題なさそう。それどころか、演奏中なのに聴き入ってしまいそうだ。うまい、と素直に感心する。
シーは、初心者でぎこちないところはあれど、なんとついてきている。器用な子である。譜面はあるていど簡素なものに、ゆかが修正したそうだけれど、それでもすごい。
さて、残りのひとり。ギター経験者のかうなである。
正直、問題はこの子かもしれない、とみきは思った。なんとなく、ずれてる。
――演奏がひととおりおわった。
とりあえず、完走はできる。文化祭まで一か月、それがわかっただけ上出来である。
あとはここから完成度を高めていく作業だが、これ、入念にやらないと、まずい。たぶん、顧問の前田先生に聞かせられるレベルには、いまのところまったくなっていない。
というか、ぎゃくに聞いてもらって、さんざんダメ出ししてもらいたい。
が、今日のところは無理なので、この総評は二年生できめるほかない。頼りになるのは、ゆかである。
いったん休憩にして、そのあいだ、二年生であつまる。部室を出て、廊下ではなしあい。
「さて、ゆかさん」と、みき。「いかがでしょうか」
「うんとねぇ」ゆか、目線を右斜め上に。「そうだねぇ。思ってたより、できてた?」
「なるほど」
「でも、へただからね、すっごく」
とてもストレートな言葉がきた。
「一年生は、じぶんのことで精いっぱいというか……ぎゃくに、みきはまわりを気にしすぎじゃない?」
「そうかな」
「そうだなー」しお、うなずく。「めっちゃわたしのほう見てたじゃん」
「見てたっけ」
「見てた。凝視してた。もちろんほかの部員のこともね」
「うん。まぁ、なんていうか、バンドの演奏じゃないんだよ。あと、これはわたしの所感なんだけど……かうなちゃんが、危ないかもしれない」
お、と思った。みきが思ったことといっしょだ。
「具体的にいったら、自己中なんだよねぇ」
しかも辛らつだ。
「きっとすごく楽しくやってると思うの。それは伝わる。でも、自己中すぎて、まったくひとの音を聞けてないんだよねぇ」
「……だとしたら、どうしよう?」
「スキルの問題じゃなくて、意識の問題だから……練習すればどうにかなる、シーちゃんとか、ねねちゃんとちがって、むずかしいんだよ」
「意識の問題か」
「そう。だから……たぶん、アレがいいんじゃない?」
「アレか」
みき、うなずいた。
「なるほど、アレだなー……」
しお、わかってなさそうに、うなずいた。
【大矢かうな 高校一年生】
天真爛漫なギター担当。
シーからは牛ちゃんと呼ばれている。
軽音楽部のムードメーカー的存在。いつもシーと結託してなにかしらやっている。最近はねねも巻き込む。




