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朝を歩け。  作者: 維酉
2nd Single【恋と渦巻き】
56/176

51 おなじ①

「準備は?」

「だいじょうぶですっ」


 かうな、はつらつにいう。ほか、軽音楽部四名、みきを見て、うなずく。


 みき、「よし」といって、ゆかに目配せ。すると、スティックを鳴らして、


「ワン、ツー、さん、はい」


 イントロから、入っていく。『恋と渦巻き』と銘打たれた曲、部員、練度があがってきたので、試しに合わせてみるのだ。それに、本番一か月前、そろそろ一度はやっておかないと。


 たいへんなのは、みき、自分で演奏しながら、ほかの部員もそれなりに詳しく見ないといけないこと。音を聞くよゆうはあるけれど、こまかいところまで問題なく、といわれると、すこし自信がない。


 とはいえ、聞いていると、ゆか、しおの二年生は、けっこうちゃんとしている。こういうしっかりしたところは、やはり、音楽経験者と自称・天才なのである。むしろ、みきのほうが危なっかしいかもしれない。


 一年生はといえば、もうひとりのボーカル、ねねは、まったく問題なさそう。それどころか、演奏中なのに聴き入ってしまいそうだ。うまい、と素直に感心する。


 シーは、初心者でぎこちないところはあれど、なんとついてきている。器用な子である。譜面はあるていど簡素なものに、ゆかが修正したそうだけれど、それでもすごい。


 さて、残りのひとり。ギター経験者のかうなである。


 正直、問題はこの子かもしれない、とみきは思った。なんとなく、ずれてる。




 ――演奏がひととおりおわった。


 とりあえず、完走はできる。文化祭まで一か月、それがわかっただけ上出来である。


 あとはここから完成度を高めていく作業だが、これ、入念にやらないと、まずい。たぶん、顧問の前田先生に聞かせられるレベルには、いまのところまったくなっていない。


 というか、ぎゃくに聞いてもらって、さんざんダメ出ししてもらいたい。


 が、今日のところは無理なので、この総評は二年生できめるほかない。頼りになるのは、ゆかである。


 いったん休憩にして、そのあいだ、二年生であつまる。部室を出て、廊下ではなしあい。


「さて、ゆかさん」と、みき。「いかがでしょうか」

「うんとねぇ」ゆか、目線を右斜め上に。「そうだねぇ。思ってたより、できてた?」

「なるほど」

「でも、へただからね、すっごく」


 とてもストレートな言葉がきた。


「一年生は、じぶんのことで精いっぱいというか……ぎゃくに、みきはまわりを気にしすぎじゃない?」

「そうかな」

「そうだなー」しお、うなずく。「めっちゃわたしのほう見てたじゃん」

「見てたっけ」

「見てた。凝視してた。もちろんほかの部員のこともね」

「うん。まぁ、なんていうか、バンドの演奏じゃないんだよ。あと、これはわたしの所感なんだけど……かうなちゃんが、危ないかもしれない」


 お、と思った。みきが思ったことといっしょだ。


「具体的にいったら、自己中なんだよねぇ」


 しかも辛らつだ。


「きっとすごく楽しくやってると思うの。それは伝わる。でも、自己中すぎて、まったくひとの音を聞けてないんだよねぇ」

「……だとしたら、どうしよう?」

「スキルの問題じゃなくて、意識の問題だから……練習すればどうにかなる、シーちゃんとか、ねねちゃんとちがって、むずかしいんだよ」

「意識の問題か」

「そう。だから……たぶん、アレがいいんじゃない?」

「アレか」


 みき、うなずいた。


「なるほど、アレだなー……」


 しお、わかってなさそうに、うなずいた。



【大矢かうな 高校一年生】


 天真爛漫なギター担当。

 シーからは牛ちゃんと呼ばれている。


 軽音楽部のムードメーカー的存在。いつもシーと結託してなにかしらやっている。最近はねねも巻き込む。

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