47 戦い
しお、部室にいちばんのりしてしまい、鍵をとりにいかねばならない。しかたないので、いくしかあるまい、動き出したところに、シーがきた。
「あ、しおちゃん先輩。鍵ない感じですか」
「ない感じー……あ」と、なにか思いついた。「よし、ここはじゃんけんだ」
「いいですね。決着をつけましょう」
なんの決着か、よくわからないが、しお、気にしない。
むしろ、向こうが乗り気なのはありがたかった。
「最初はグーからいこう」
「はい。最初はグーですね」
「パーでもなく」
「チョキでもない」
おたがいにうなずく。
「一回勝負にしますか?」
「そだねー。そのほうがはやいし」
しお、じぶんの両手をにぎりあわせて、ぐるり回して、すきまを覗く。それを見て、シー、同じようにする。
「チョキが見えました」
「ほほう」しお、よゆうげ。「あたしはグーだった」
「まずいですね、これでは負けです」
腕を組んだ、シー。
で、ちょっとうなり、天をあおぎ、
「では、やりましょう」と、しおに向き直る。
「よしよし」
両者のあいだ、緊張がはしる。どちらともが真剣な目つき、負けられない戦いがここにある。
にらみあいのすえ、ついに、「最初はグー!」
じゃんけん、ぽん。
シー、チョキ。
しお、グーである。
「やはり……運命を超えることはできませんか」
やけに悔しそうにする、シー。
いっぽうで、しお、彼女にゆっくり歩み寄り、
「いい戦いだった」と、握手を求める。
「ふふ、ありがとうございます。でも、敗者に慰めは……不要です」
「……」
「思えば、長い戦いでした」遠い眼をする、シー。「たくさんの仲間と出会い、すすむ道は光にあふれていた……だのに、わたしは、みんなを傷つけて……」
「シー……チェン・シーハン……」
「……最期に、あなたのような強い戦士に出会えて、よかった」シーは、微笑む。「さようなら、しおちゃん先輩。わたしは、いかねばなりません」
「ダメだ! いくな、チェン・シーハン!」
「今度……会ったときは、また同じ……誇り高き戦士として……」
「いっちゃダメだ、チェン・シーハン! チェン・シーハンー!」
「なにやってんの、おまえら」
と、しおの背後から、聞こえる。
ふりかえると、部室の鍵をもった、みきがいる。
「熱い戦い」
しお、即答する。
「そうですね。熱い戦いを」
シー、それに同意した。
「そうか」みき、気にしないようにして、部室の鍵を開ける。「入らないの?」
なぜかすぐ部室に入らない、しお、
「んー……入る」
と、結局はすんなり。
「そうですね。入ります」
シー、それに続いた。
【陈诗涵 高校一年生】
一見クールな女の子。
中身は不思議ちゃん。
実のところ芸人気質で、だいたいのフリとか悪ノリに対応できる。化学が好きで生物が嫌い。




