43 自慢
「ごめんね、付き合わせてばっかで」と、観覧車のなかで、のの。
「ううん。楽しかったよ」みき、笑顔で返す。
開園したばかりの遊園地は盛況で、とにかくにぎやかだった。のの、今日のおめあてはジェットコースターだったらしく、全制覇をめざし、朝からずっと絶叫系。
みき、苦手ではなかったし、むしろ好きな部類だったので、楽しみながら乗りまくり、ついに制覇。
で、帰る前に、一度くらいは観覧車にでも乗ろうということで、いまに至る。
「うーん、やっぱりあれがいちばん面白かった」
と、のの、指さした。この遊園地のイチオシで、『最恐!』と銘打たれたジェットコースターである。高低差が売りの、落下がすさまじかったやつだ。
「あれね、下りた後の、ののちゃんの髪が……」
思い出して、吹き出してしまう。
「みきちゃんもぐちゃぐちゃになってたよ」
「ののちゃんほどじゃなかったよ」
「そんなことなくない?」不服そうに、のの。「写真撮っとけばよかったなぁ」
「わたしは撮ったよ」
「へ? いつ。消してよー」
みき、スマートフォンとりだす。向かい合って座ってたのを、のの、みきのとなりまできて、覗きこむ。
「これ。なかなかじゃない?」
「なかなかだね」のの、照れ笑い。「ほんと消してほしい」
「やだ」
「んー……」
のの、うでぐみして、ちょっと考える。で、また、みきのスマートフォン覗きこんで、
「やっぱだめ?」
「どうしようかな」
いたずらげに笑う。ののに目をやると、けっこう、至近距離。どきっとする。
それを感じ取ってか、
「ねえ」と、ののがいう。「実は朝から思ってたんだけど」
「うん」
「ちょっとデートみたいじゃない?」
「えっ」
「ん?」面白そうに、のの、「顔赤くなってるけど、どしたの?」
「べつに……」
どうしたものかな、と、みき、思いながら、
「本気にしてみようかと思って」
かえって、ののが赤くなる。
「あ、えっと、それは……」
「冗談だよ。なんで赤くなったの?」
「もおー……」
「ごめんって」みき、くすくす笑う。「かわいいね、ののちゃん」
「やめてよ、こっちこそ本気にするよ?」
「してもいいよ」
「むう」
うまく丸めこまれてしまった気がする。
観覧車、ぐるりと一周まわって、「あ、そうだ」と、のの、
「『いまから帰ります』の写真撮らせて」
「なにそれ。いいけど」
ふたり並んで、大きな観覧車と夕焼け空をバックに、ピースサイン。
「ねねに自慢するの。みきちゃんと一日楽しみましたって」
「自慢すること?」
「うん。うらやましがるだろうなぁ」
ちょっと悪そうな笑い方して、のの、写真付きでメッセージを送る。返信はけっこうはやくて、『わかった』だけと淡白だったが、
「やいてる、やいてる」と、ののは面白そうだった。
【握津のの バレー部の聖人】
高校二年生で、軽音楽部員であるねねの姉。
実は妹を溺愛している。
人当たりがよく優しいためか、一部の女子からはなぜか聖人と呼ばれている。相談するよりされることのほうが多く、逆にのの自身は愚痴を聞かせられる人を探している。




