38 青春の響き
「ピザって十回いって」
「ピザ、ピザ、ピザ、ピザ……」
「イタリア料理の平たいパイは?」
「え……ピザ」
「引っかからないかー」
「引っかける気ねぇだろ」
うめ、にがわらい。昼休憩で、ゆか、追試できえてしまったので、さんにんで時間をつぶす。
それで、うめ、しおへのフォローなのか、
「あ、でも、ちょっと『ひざ』とか『ビザ』とかいいそうになったかも」
「ほら」
「ほらじゃねぇよ」
「そういえば、ゴールデンウィークの予定、ある?」
「軽音楽部でどっか行くみたいなこといってた気はする」
「うめは部活?」
「訊いといてなんだけど、そう」
「部活でどこ行くんだっけ?」
「予定入れすぎてわかんなくなってんだろー」
「それはちょっとある」
「こないだ、島とかいってなかった?」と、うめ、思い出したようにいう。
「ううん。たしかそれはなしになったはず」みき、首を振る。
「そうそう。みんなの予定的に、日帰りだとキツすぎて」
「じゃ、遊園地?」
「だれと行くんだよ」
「ののちゃんとだな……」
「だれだー……あ、期待の一年生のお姉ちゃん?」
「そう。ねねちゃんのお姉ちゃん」
「なんか、忙しそうだね、みきちゃん」
「ほとんど遊ぶ約束だけどな……」
「なんでそんなに予定はいるんだよー」
「知らん。いつのまにか埋まってた」
「人気者だね」
「そんなことないだろ」
「で、部活で行くとこ思い出したか?」
「あれだよな。ピクニックだよな。ゆかがいいだした」
「覚えてんじゃん」
「どこにピクニック行くの?」
「どっかの広めな公園」
「覚えてねーじゃん」
「いや、地図はでてきてる。なんとかなる」
「サンドイッチとか、持って?」
「じゃない?」
「てきとーだな……」
「おまえにいわれたかねぇな……まあてきとうなんだけど」
「晴れたらいいね」
「たしかに。雨天決行とはいかないもんな」
しお、かみの毛をいじりながら、みょうに納得したふうにいう。
で、ちょっと間をおいて、みき、
「思えば、すぐだな、ゴールデンウィーク」
「来週からだぜ」
「あれ……時間間隔おかしいな」
「はたらきすぎなんじゃない?」
「とくにそういうこともないんだけどな……」
「寝てねーんだろ」
「あ、まあ、寝てないかも」
「なにかやってるの?」
「アコギの練習」
「近所迷惑だな」
「……まあ、なぁ。まだ苦情はいってないけど」
「ちゃんと寝なきゃ」
「うん。気を付ける」
「てか、弾き語りでもやんのー?」
「うーん、それもいいんだけど、バンドにもアコギのパート入れられないかと思って」
「……ゆかがいたらよかったな」
「あとでいってみるよ」
「なんか、青春だね」
「ん?」
「バンドって、青春の響き」
みき、かたをすくめる。
「そんなことないよ」
あるかもしれないと、かけら思いはしたが。
【笹田うめ 自称ハイルーフのファン一号】
みきたちとの一年次でのクラスメイト。
人見知りするが、最近、初対面の人とも少しは話せるようになってきた。
親に頼んでみきのバンドの歌を音源化してしまうなど、軽音楽部と距離は近いが、バリバリの卓球部員である。昨年度は県大会に出場した。




