31 自己紹介
「入部希望?」
「はいっ」
お団子の子、元気いっぱいに返事。
想定の何倍くらいも、はやい入部希望者だった。
「すごいねぇ、みき」と、ゆかがいう。
「そうだな……今週はまだなにもねーもんだと」
とはいえ、入部希望だというならこばむこともない。むしろ、大歓迎である。
さっそく、入部届をとりだして、お団子の子にわたす。すると、跳んだり、駆けたり。なんか、大はしゃぎである。
で、ロングの子のほうはどうなのか。訊いてみると、ちょっとなやんでから、
「あたし、楽器とかできないんですけど」
「だいじょうぶ、わたしも高校からはじめたし」
「へっ!?」
お団子の子に、驚かれた。
「それ、すごくないですか? あんなにうたえて弾けるって、経験者かと」
「うん? ありがと」
「じゃあ、あたしにもできるかな」
「できるよ、シーちゃんなら世界とれるっ!」
「世界……」
それは、どうだろう。みきには、保証しかねる。
「なら、その、迷惑でなければ」
「迷惑だなんて」
はい、と入部届をわたしてみる。ロングの子、じいっともらった紙をみて、「うん」となにかに納得したふうにいった。
「えっと、じゃあ、自己紹介、するぅ?」
新入部員のふたりを見て、さっきから、ずっとにやけてるゆか、提案する。それがいい、ということで、てきとうな椅子ひっぱりだして、座ってから、まず、
「わたしは部長の夏井みき。ギターとボーカルやってます」
「玉原しお。ベース。よろしくー」
「戸殿ゆかだよぉ。えっとね、ドラムを叩いてます。仲よくしようねぇ」
と、二年生組。
つづけて、新入部員の子、まず、お団子の子が、
「わたしは大矢かうなっていいますっ!」と、自己紹介。「中学のころからギターやってて、音楽が好きです! あと、そうだな。お菓子が好きです! 毎日たべてますっ」
「だからふとるんだよ」
「ううっ」
うめきごえだった。
「しかたないじゃん……だって、おいしいんだよ……?」
ちからないつぶやきである。気の毒なんだけれど、みき、笑えてくる。
「笑われてるよ」
「そんなあっ」
「ごめん」笑いをかみ殺しながら、「つぎ、つぎおねがい」
ロングの子、うなずく。
「チェン・シーハンです。父が中国人で、母が日本人です。えっと、なにいえばいい?」
「好きなものとかっ」
「好きなものは……牛ちゃんです。あ、牛ちゃんっていうのは、このお団子の、ちょっと残念な子のあだ名です」
ちょっと残念な子。みき、苦笑する……いや、わからないでもないのだが。
かくいうかうな、やはりというか、不服そうである。まあ、残念な子といわれたら、だれでもそうなる。
でも、なんだかんだで、好きといわれているわけで、たいして気を害してはなさそうである。
「あ、そうだ。あたしを呼ぶときは、シーって呼んでください。昔っから、ずっとそう呼ばれているんです、日本では」
「うん。シーちゃんでいいんだね」
「はい」
「わかった。よろしくね」
と、ひととおりの自己紹介がおわって、どうしよう。とりあえず、楽器でもさわる? と、みき、訊くと、かうな、すぐ立ち上がった。シーも、わりと、たのしそうに席を立った。
【大矢かうな 高校一年生】
いつでもどこでも元気な子。
幼馴染のシーに学校で毎日髪を結ってもらう。
両親が釣り好きで、その影響でかうなもよく釣りにいく。魚はイトヨリが好きらしい。




