25 ハンカチ
うめに連れられて、おしゃれなカフェにやってくる。かわいい店員さんに席まで案内してもらって、ゆか、メニューを開いてちいさく歓声。みき、しお、のぞきこんでみる。
ショートケーキにチョコレートケーキ、チーズケーキ、ロールケーキ……いろいろあって、どれもおいしそう。ゆかの目、とってもきらめいている。
「おごりだったよね? みきの~」
「まあ、そうだけどさ……」
「何個まで~?」
「いくつでもくえよ」
「いいの~?」
にぱあ、とゆか、すごく明るいかおをする。あ、まずい。前言撤回、といおうとしたが、ゆかのほうが早かった。
いつになく俊敏なうごきで、呼びだしのベルを押す。え、はやくない? とうめ、いったが、ゆか、
「時間との勝負だったから~」
といって、笑顔を絶やさない。
みきにとっては、ちょっと、いやかなり、こわい笑みである。
さっきの店員さんがやってきて、注文をとる。ゆか、つぎつぎと、これと、これと、これと……みたいな、欲張るかんじで注文していく。みき、しお、うめも、自分がたべたいもの、選んで、いう。
店員さんがはなれて、
「みきちゃん」と、うめ。「えっと……だいじょうぶ?」
「だいじょうぶ。お金はたくさんもってきたから」
「うーん……」
「抑えたよぉ?」
「抑えてたかー?」
「……あ、そうだ。軽音楽部、どう?」
「うん? あぁ……まあ、なんとか」
「新歓ってなにやるの?」
「オリ曲いっこと、カバーをひとつ」
「へぇ……あれ、二年生って見れたっけ」
「どうだったかな……」
「もしだめだったら、音漏れとか、期待してねぇ」
「いや、それは……ありかも。授業ぬけだして」
「こらこら」
いってたら、飲み物がきた。みきとしお、ブラックのホットコーヒー。うめ、アイスミルクティー。ゆか、オレンジジュース。
「んーでも、聞きたいなぁ」
「そう? まあ、文化祭もステージ出るつもりだからさ」
「そっか。気長にまとっかな」
続々と、ケーキも運ばれてくる。で、そのほとんどが、ゆかのもの。
大きなイチゴがちょこんとのったショートケーキから、ゆか、手をつける。フォークでぐさり、イチゴをとって、ほおばった。うまそう、と、みき、チーズケーキを食べながら思う。
「あー……そういえばさ、みき」
「うん?」
「誕生日、おめでとう」
「あ? ……あぁ、うん。ありがとう」
「あ、今日だったのっ?」
「ううん。一昨日」
「忘れてたんだよなー」
「えぇ、わたしはちゃんと電話したのに~」と、ゆか、いってから、「あ、プレゼント渡すんだった~」
「べつにいいのに……」
「はい、どぉぞ」
プレゼント、見てみると、すみっこに柴犬がデザインされたハンカチだった。いぬ……いぬか。いいな、これ。つかわせてもらおう。
「ありがとうな」
「ううん~」
「おめでとう、みきちゃん。あ、でも、わたし、なんにも用意してなくて……」
「いいよ、きもちだけでうれしい」
「うー……あとでなにか買いにいこう!」
「そう?」
「あー。じゃ、あたしもそのときでいっかー」
「おまえは……まあ、いいよ」
「そのいいかたやめて。ごめん。ほんとうにごめん」
みき、くすりと笑う。で、しおのケーキ、一口ぶん盗んでから、
「まあ、ゆるしてやろう」
と、いった。
【玉原しお ベース担当】
面倒くさがりな女子高校生。
四月から二年生になる。
四月からの抱負は『できる限りの省エネ』であり、なるべく静かで平和な一年にしていきたいらしい。




