21 スケジュール
部活で、セッションをおえて、ひといきつく。軽音楽部の部室で、しお、床にねっころがる。ゆかもそれをまねる。
「きたねーからやめろって」と、みき。
「じゃあ、おふとんもってこようかなぁ」
「お、いいねー」
「よかねーよ」
「ケチー」
いいつつ、ゆか、起き上がる。しおもそうする。で、ゆか、しおの背中のほこりを見て、わらった。そんなゆかの背中にも、やっぱり、よごれ。おたがいにぱたぱたはたいて、落としてあげる。
それを横目でながめながら、みき、水分補給である。あ、わたしものど乾いたかも。あたしもー、としおが立ち上がる。
で、おしりのほこりを見て、ゆかが笑って……と、さっきみたいなことをまた繰り返していた。なにやってんだ、とか思いつつも、みき、口には出さない。
「そういえばさ」と、しおが炭酸のふたを開けながらいう。「もうすぐ学校おわるけど、春休みも部活やるよね?」
「ん、やるけど」
「どんぐらい?」
「どうしような。なるべくなら、ぜんいんで集まりたいけど」
「ゆか、スケジュールの空きはー?」
「わたし? うーん、今年はけっこうひまだよぉ」
「そうなのー? めずらしいね」
「おとうさんがね、ともだちとあそびたいだろって~。部活やりたいんだけどねぇ、じつは」
ゆかはながい休みになると、家の用事でいそがしいことが多いらしい。みきは、しおに夏休みのころそう聞いていた。
「じゃあ、ちょっと多めにできる?」
「かもねぇ」
「日程くむよ。ひまな日、教えて」
とりあえずカレンダーつきの手帳をとりだして、この日と、この日、あとその日かな。スケジュールをうめていく。二週間ほどある春休みで、四回くらい、合わせができるらしい。
「ねぇ、せっかくならさ~」
と、ゆか、三月の末の練習予定日をゆびさして、
「ここさ、わたしの家でやらない?」
「うん? いいけど、どしたの」
「あのね、おにいちゃんがね、留学先から帰ってくるから……」
「あ……そういや前、いってたっけ」
じゃ、この日はゆかの家で。そういうふうに手帳に書きこむ。あとでそれ、コピーしたのちょうだいね、とふたりにいわれる。アナログでいいの、と訊き返すと、それがいいんじゃん、とのこと。
なにより、みきの字ってのがポイント高いね。しおがいうと、ゆか、同意のうなずきをみっつ。
「ま、いいけどさ。コピー代はもらう」
「え~、ケチぃ」
「十円」
「……はーい」
「よろしい。しおも」
「あたし財布を忘れて」
「前も聞いたことあるぞ、それ」
「ざんねん」
「おい」
さて、日程も決まったし、練習にもどろうか。
ギターを持ち上げたところで、みき、ふと思いだす。
「あ、バンド名」
「……あ」
「忘れてたな、決めるの」
しお、ベースをいじりながら、
「この際、決めちまう?」
「それがいいかも……つっても、だれかいいの、思いつく?」
「う~ん……」
みんな、おしだまる。だれも思いつかないし、これまたけっきょく、あとまわしになった。はやめに決めないとな、とみき、思うけれど、かといって、いいバンド名が浮かぶわけでも、やはりない。
「……ま、練習すっか」
いちおうのところ、いまはそうすることにした。
【戸殿ゆか 軽音楽部副部長】
マイペースな女の子。
海外に行くことが多く、実は英語が堪能。
理系科目が大の苦手で、成績は悲惨。しかし英語が得意なので、英語科の先生にはずいぶん褒められるらしい。




