20 三連勝
「もし海外行くならさ、どこ行きたい?」
お昼どきに、しおがいった。
「海外行くなら、フランスかなぁ」と、うめ。「きれいそう」
「やっぱヨーロッパかー」
「うん。アメリカとかもいいけど……ニューヨークとか。しおちゃんは?」
「あたしはタイ」
「どうして?」
「地質調査」
「ふぅん……?」
うめには、よくわからない。ジョークなのはわかる。
「真に受けなくていいぞ」と、みき。「鯛はタイの赤土が千切れた魚だとかいう謎のギャグの延長だから」
「あ、そういう……。なんていうか、粋だね」
「面白くないなら面白くないといってくれ」
「面白くねー」
「あたしもそう思ってた」
「わたしはしおのそういうとこ、好きだよ~」
「それ、フォローになってるのかな……」
うめ、苦笑い。
「わたしね~、ロシア行きたい」
「寒いぞ」
「寒いけど~、暑いよりはいいかなって~」
「ロシアといえば……あ、思い出してしまったぁ……」
「なにをー?」
「トラウマ……」うめ、げんなりする。「ロシア、カエルで検索かけたわたしが馬鹿だったんだよ、笑って……」
「うーん」想像のついてない、しお。「まあ、ドンマイ」
ロシアといえば、ボルシチだよ、とゆか。食のことしか頭にないのか、どうなのか。でも、食べたことないんだけどねぇ。なんだそれ。
「みきちゃんは?」
「わたし? ……インドかな」
「どしてー?」
「カレーでしょ~」
「いや、なんとなく」
実際、たいした理由もなかった。ぱっと思いうかんだ国のなまえをいったら、ぐうぜん、インドだっただけである。
けれど、ゆか、インドをどうしてか気に入ったようで、「インドかぁ」としきりにうなずく。
で、しおの二の腕をつついて、
「本場のカレーって、どんな味するんだろうね?」
「ん? めっちゃからいんじゃない?」
「スパイシーなのかぁ」
「日本のやつとはぜんぜん違うって、きいたこと、あるよ」とうめ。
「あぁ、そうらしいね」こんどはみき。「ゆか、からいの得意だっけ?」
「うーん、あんまりかなぁ」
「甘口カレーとか、むこうにあんのかなー」
「あまくちって、いい文化だよねぇ」
「ゆかちゃん、甘党?」
「そうでもないよ?」
「好きっちゃ好きなんだっけ」
「好きだけど、好きじゃないんだよ」
「んー……?」
うめ、よくわからないといったふうに、首をかしげる。それを見たみき、苦笑い。
「そうなるよね、やっぱり」
「どういうことなの?」
「さあ。しおならわかるんじゃね」
「わかるよーな」
「わからないような~」
ゆかがそれをいうのか、みき、思ったがつっこまず。なんか、つっこんだら負けのような気がして、おしとどめてしまった。
「う~ん、ケーキが食べたいね?」
「いや、食べたいねっていわれてもよ」
「こんどいくかー?」
「いいねぇ」
「あ、おいしいとこ、知ってるよ」
「ほんと~?」
「みきのおごりかー」
「ありえねぇよ」
「あ、そんなに高くないから……」
「おごれってか」
「じゃんけんで勝ったらおごってくれる~?」
「三連勝したら考えてやる」
「よぉし」
じゃんけん、一戦目、みきがグーを出す。ゆか、パー。一勝目である。
で、第二戦。こちらはみき、パーを出した。すると、ゆか、チョキを出している。まさかの二連勝である。
これはまずい、とは思いつつも、ゆか、とてもやる気で、場ももりあがってきた。退くに退けない。しかたない、勝てばいいのだ。じゃんけん、ぽん。
みき、チョキで。
ゆか、グーだった。
「やりぃ~!」
「……マジかぁ」
ほんとうに三連勝されるとは。なにが起こるか、わかったもんじゃない。みき、かるく頭痛がしたが、腹をくくった。財布がちょっと、心配だった。
【玉原しお 軽音楽部部員】
面倒くさがり屋のボケ&ツッコミ担当。
わりとやきもち焼き。
食べ物の好き嫌いはあまりないが、唯一、いちじくが苦手。いちじくを文字通り「煮ても焼いても喰えないやつ」といったところ、ゆかに「ジャムはおいしいよ~」といわれ、食べてみたところ、ふつうにおいしかったらしい。




