表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝を歩け。  作者: 維酉
Debut Single【朝を歩け】
24/176

19 たまに

 気付いたら、三月だった。若干の寒さもやわらいできて、春らしく、なっているようにも思う。

 廊下を歩きつつ、


「そういえば、ことし、あんまり雪ふらなかったね」と、うめ。

「そうだよぉ。楽しみにしてたのに」


 ゆか、口をとがらせていう。不満そうである。不完全燃焼、という感じだ。

 遊び足りなかったなぁ、とゆかがぽつりとつぶやくと、うめ、


「かまくらとか、作れるぐらいにふればよかったのに」

「かまくら? いいねぇ。おもち焼いたりして~」

「意外とあたたかいんだよね、あれ」

「そうそう~。あとは、そうだなぁ。雪だるまもおおきいの作ればよかったかなぁ」

「そうだね。だいたいこのくらいの丈で」


 そういって、うめ、自分の胸あたりの高さを右手で示す。もうちょっとおおきくても、いいんじゃない? そうかな、じゃあ、こんくらい。――うめ、ゆかの額あたりに手をやった。


「いいねぇ。これくらい、作りたかったなぁ」

「また来年があるよ。ことしは、もう、ふらないと思うけど」

「暖冬だったなぁ……」

「あ、そういえば、テストどうだったの?」

「……う~ん」


 うなった。

 だいたい、察しがついた。そしてふと、みきちゃんにも訊かれたんだろうなぁ、と思った。


「みきに怒られるくらいの点数だったぁ……」すごくブルーな声。

「あ……ごめんね」

「うぅ、数学……追試だぁ……うめちゃん、勉強教えて~」

「わたしも数学はちょっと……」

「みきに頼むしかないかなぁ……」

「うーん、そうかも。あ、でも、しおちゃんもよかったって聞いたよ」


 たしか、しお、今回の数学はいい点を取ったと聞いた。なんでも、みきからの命令でちゃんと勉強したんだとか。それで、ちゃんと点を取れちゃうんだから、すごい。

 でも、ゆか、


「う~ん」と、またうなった。「分散……偏差……相関係数……」


 どうやら聞こえてないらしい。数学の悪霊にとりつかれたようである。こうなるのも、ゆからしいというか、なんというか。


「ねぇうめちゃん」と、急にゆか。

「なあに?」

「放課後、ペットショップに行かない?」

「……ねこ見るの?」

「うん」


 現実逃避に走りたいらしい。

 けど、そういう気持ち、よくわかる――と、そう思う。わたしだって、そういう気分のとき、好きなものをたくさん見たくなるから。共感できる。


「うん、いいよ。行こう」

「ね、うめちゃんって、ねこは好き?」

「あ、好きだよ。かわいいよね」

「そうだよね~」


 ちょっとだけ上機嫌になったみたいだ。みきちゃんは能天気だって、おこったり、しかったり、するのかな。でも、でも、たまにはいいよね。


 たまに、なのかは、よくわかんないけど。



【夏井みき 軽音楽部部長】


 頑張り屋のツッコミ担当。

 ツンケンしてるが、みんなのことは好き。


 人脈がめちゃくちゃ広く、学校のことならたいてい知っている。いちど友達の数をかぞえようとしたが、百人くらい数えてあきらめたらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ