19 たまに
気付いたら、三月だった。若干の寒さもやわらいできて、春らしく、なっているようにも思う。
廊下を歩きつつ、
「そういえば、ことし、あんまり雪ふらなかったね」と、うめ。
「そうだよぉ。楽しみにしてたのに」
ゆか、口をとがらせていう。不満そうである。不完全燃焼、という感じだ。
遊び足りなかったなぁ、とゆかがぽつりとつぶやくと、うめ、
「かまくらとか、作れるぐらいにふればよかったのに」
「かまくら? いいねぇ。おもち焼いたりして~」
「意外とあたたかいんだよね、あれ」
「そうそう~。あとは、そうだなぁ。雪だるまもおおきいの作ればよかったかなぁ」
「そうだね。だいたいこのくらいの丈で」
そういって、うめ、自分の胸あたりの高さを右手で示す。もうちょっとおおきくても、いいんじゃない? そうかな、じゃあ、こんくらい。――うめ、ゆかの額あたりに手をやった。
「いいねぇ。これくらい、作りたかったなぁ」
「また来年があるよ。ことしは、もう、ふらないと思うけど」
「暖冬だったなぁ……」
「あ、そういえば、テストどうだったの?」
「……う~ん」
うなった。
だいたい、察しがついた。そしてふと、みきちゃんにも訊かれたんだろうなぁ、と思った。
「みきに怒られるくらいの点数だったぁ……」すごくブルーな声。
「あ……ごめんね」
「うぅ、数学……追試だぁ……うめちゃん、勉強教えて~」
「わたしも数学はちょっと……」
「みきに頼むしかないかなぁ……」
「うーん、そうかも。あ、でも、しおちゃんもよかったって聞いたよ」
たしか、しお、今回の数学はいい点を取ったと聞いた。なんでも、みきからの命令でちゃんと勉強したんだとか。それで、ちゃんと点を取れちゃうんだから、すごい。
でも、ゆか、
「う~ん」と、またうなった。「分散……偏差……相関係数……」
どうやら聞こえてないらしい。数学の悪霊にとりつかれたようである。こうなるのも、ゆからしいというか、なんというか。
「ねぇうめちゃん」と、急にゆか。
「なあに?」
「放課後、ペットショップに行かない?」
「……ねこ見るの?」
「うん」
現実逃避に走りたいらしい。
けど、そういう気持ち、よくわかる――と、そう思う。わたしだって、そういう気分のとき、好きなものをたくさん見たくなるから。共感できる。
「うん、いいよ。行こう」
「ね、うめちゃんって、ねこは好き?」
「あ、好きだよ。かわいいよね」
「そうだよね~」
ちょっとだけ上機嫌になったみたいだ。みきちゃんは能天気だって、おこったり、しかったり、するのかな。でも、でも、たまにはいいよね。
たまに、なのかは、よくわかんないけど。
【夏井みき 軽音楽部部長】
頑張り屋のツッコミ担当。
ツンケンしてるが、みんなのことは好き。
人脈がめちゃくちゃ広く、学校のことならたいてい知っている。いちど友達の数をかぞえようとしたが、百人くらい数えてあきらめたらしい。




