16 お兄ちゃん
「なんか……急に寒くなったよな」
みき、教室のストーブに当たりながら、ぽつりという。
となりのゆか、うんうんと頷く。しお、うめに引っ付きながら暖を取って、
「まあ、二月だしー」と、気の抜けた声。
「あ、動きづらいよ、しおちゃん」
「やめたれ、しお」
「あったかいよ、うめ」
「そうなの~?」
聞いて、ゆかまでうめに引っ付くしまつ。みき、ためいきひとつ。
「ほんとだ~、カイロみたい~」
「生きるカイロ」
「あ、それ、どうなの? ほめちゃいないよね」
「ほめてるぜー」
「ほめちぎり~」
「いーから、離れてやれって」
「みきもきなよ~」
「あ、え、えー?」
「はあ……しかたない」
救いの手、差し伸べる。
わけでもなく、みきもしおたちの団子に加わった。お、たしかにいいかも。でしょ? おしくらまんじゅう~。いや、なんにもよくないって、動きづらいよ。
しばらくそんなことをしていたら、暖まってきた。みき、さいしょに離れようとしたが、しおに手を掴まれる。しかたなく、続けてみる。
「そうだ。そーいえば、うめちゃん」
思い出したように、みき。
「あ、うん?」
「生物の小テスト、どうだった?」
「ギリギリ追試回避」
「え~、ずるい~」
「引っ掛かったのかよ、ゆか……」
「じゃ、今回はゆかだけかー」
「しおも合格だったの~?」
「あったりまえー」
「うらぎりもの~」
ゆか、平常運転というか、なんというか。苦笑いのみき。
団子の中心で、うめがそろそろ暑がりだした。みき、離れると、それを合図にふたりも離れて、今度はストーブからも距離をおいた。
かえって、ちょっと暑いくらい。
「この月を乗り越えれば、春だよ」
うめ、手で顔をはたはたやりながら、いう。
それを聞いて、ゆかが嬉しそうに、でもどこか残念そうに、
「春だねぇ」といった。「雪遊び、もぉちょっとしたいけど」
「わたしはもういいよ。寒いのはこりごり」
「今年はかまくら作ってねーや」
「あ~、そうだねぇ」
「ん、なに?」みき、意外そうに訊く。「去年まで作ってたとか?」
「あぁ、うん、まぁね。ゆかと、ゆかのお兄さんに手伝ってもらって」
「へ、ゆかちゃん、お兄さんいたの?」
「うん、いるよぉ。いまはアメリカだけど」
「留学ってやつ?」
「そうだよ~」
「へー、そうだったのか……」
「みきちゃんも知らなかったの?」
「うん。こいつらは小学校から一緒だったらしいけど、わたしは高校で初めて会ったから。ゆかについては、しおのほうが詳しい」
「わたしのおにいちゃん、かっこいいんだよぉ」
「そうなのか?」
「あぁ、うん。それはほんと」
「しおがそういうってことは、なかなかだな」
「そっかあ……ゆかちゃんもかわいいもんね」
「照れちゃうな~」
ゆかの顔がちょっと赤いのは、暖まったせいなのか、どうなのか。
ともかく、兄の話がでて、ちょっとなつかしそうな顔をするゆかとしお。それを見て、みき、うめ、顔を見合わせて、ふふっと笑う。どんなひとなんだろうな。さあ、会ってみたいね。じゃあ、今度、帰ってきたら家に呼ぶよ~。あ、あたしも久しぶりに会いたいね。もちろんしおも呼ぶって~。
次の帰省は、三月下旬らしい。春が、すこし待ち遠しくなった。
【玉原しお サッカー派】
なんでもそつなくこなす天才肌。
運動神経は並み。
野球かサッカーならサッカーのほうが好きだが、スポーツ自体、汗をかくのが嫌いであまり好まないらしい。




