15 フォアボール
「雪だ~!」
ゆか、校庭を走る。一面、真綿のようなきれいな雪でうすく覆われている。
「まあまあ積もったな」と、みき。
「雪合戦できるかな~」
「難しいんじゃない?」
いいつつ、しお、雪玉をつくり出す。
それを真似る、ゆか。とはいえ、雪、そこまでたくさん降ったわけでもない。うまくつくれないで、四苦八苦していた。
「もうちょっと積もったら、面白かったのに」
うめ、いう。
「まあ、暖冬だからね」と、みき、返す。
「地球温暖化ってやつだね」
「うん? そうかも」
そのあたり、よくわからないけど。
「だとしたら、やっぱり、温暖化って敵だよぉ」ゆか、不満そうにいった。
「じゃ、環境改善しないとな」
「二酸化炭素を食えたらいいんだけどなー」
「おいしいのかなぁ」
「おいしいんじゃない?」
「なんの根拠があって……」
「“期待”っておいしいじゃん」
「重いよ」うめ、ぽつり。
「うめちゃん、闇、闇」
「ダークサイド・うめ」
「あ、冗談だよ」
「ていっ」
「うおっ」
ゆか、いきなり雪玉をみきに。ちいさな雪玉、ぱっと弾けて、はらはらと地面に落ちる。
「やったな」
みき、すぐさま雪玉つくって、投げ返す。避けようとする、ゆか。でも失敗。
「ゲームスコアは一対一。解説のうめさん、どうでしょう、この状況」
「へっ?」困惑しつつ、「あ、ゆかちゃんの不意打ちが決まりましたが、すぐ同点に追いつけました。最高のリカバリーですね」
「そんな丁寧に付き合ってやんなくてもいいんだよ、バカなんだし」
「ひでー」
「しまった、つい本音が」
いいつつ、みき、二弾目を製作。ひょいっと投げる。ゆか、ぎりぎりで避けて、反撃。
雪玉、明後日の方向へ、弧を描く。
「その発言、審判のうめさんが見逃しません。な?」
「わたしひとりで何役やるの?」
「ざっと五人」
「解説と審判と、あとなんだよ」
「隙ありっ」
「制球に難あり」
「実況席のほうに飛んできました」
「わたしに当たりました」
「災難だな……」
「ご、ごめんね~?」
「ツーボール、ワンストライクです」
「ストライクが入らない~」
「また投げました。ボールです」
「ひと昔前のカープみたい」
「この一球に、すべてを~」
「ボールを選びました」
「投手交代じゃね」
「あたしがやってやるか」
しお、前に出て、雪玉をつくる。
「Worldボール!」
「なにそれ~」
「球が分身するんだよ」
「どうやって打つの?」
「一球入魂したら打てたよね」
「へぇ……」
「ファイアトルネード!」
「サッカーじゃん」
「ゴッドハンド!」
「もはやキーパーじゃん」
「ふつうの雪玉!」
「低めのストレート」
「あ、当たった~」
「ふつうの雪玉で」
「シンプル・イズ・ベストってやつかー」
「そうかも」
制服についた雪、手ではたき落とす。
「……うん、寒いな」
「あたしはあたたまったぜ」
「もどろっか、教室」
「だな」
「あ、雪の味見を~」
「やめとけ」
【夏井みき 野球派】
毒舌な女の子。
運動神経はいいほう。
スポーツにはあまり興味がないが、小さいころから父にプロ野球を見せられたため、ある程度詳しいらしい。




