表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝を歩け。  作者: 維酉
にまいめのEP【時間の踊り場】
175/176

170 お友達

「来月は修学旅行だね」と、のの、始業前に。

「あぁ、そっか。もうそんな時期か」


 みき、あたまのなかのカレンダーを呼び起こす。来月、11月は、第一週に軽音楽部のステージがあって、第三週には修学旅行だ。


「どこいくんだっけ?」

「うそ! みきちゃん、それはさすがにだよ」

「冗談だって。京都だよね」

「よかったぁ、高校生の一大イベントだからね。ちゃんと覚えてないと」


 教室、やや人数がふえてきて、そのなかにくづきもいる。のの、呼びかけると、


「くづきちゃん、修学旅行だよ!」

「来月ですよね」と、肯く。「どこいくんでしたっけ?」

「くづきちゃんまで……」

「わかんなくなるよね」

「はい、ふふ。京都ですよね」

「よかったぁ、高校生の一大イベントなんだからね」

「うんうん。最後のたのしみだよ」

「来年は受験ですからね」

「やなこというー!」


 のの、みきの机にぐったり伸びて、


「やだよー、いまはみきちゃんとの京都デートしか考えたくない……」

「現実を見なよ」

「ふふ、ののさんは、やっぱりみきさんがお好きなんですね」

「おぉ……くづきちゃんにいわれると、なんかはずいな……」

「なんで?」

「冗談にならない気がする」

「えっ、冗談だったんですか?」

「ひどいよね」

「う、冗談じゃないんだけどぉ、なんていうかぁ……!」


 くねくねして、困っている。みき、くづき、顔をみあわせて、笑って、


「みきさんは、もう志望校はきめましたか?」

「うーん、東京の大学受けようと思ってるんだけど……」

「へー、東京! いいねぇ、どこ住む?」

「いっしょに住まれるんですか?」

「そうらしいよ」

「うち、片道三時間くらいまでなら、ぜんぜんみきちゃんにあわせるから」

「いっしょの大学受けるんじゃなかったの?」

「万が一ということもあるでしょ」

「あんまり想像したくないですね……」

「縁起でもないこといわないでよ」

「京都で合格祈願、しましょう!」

「うんうん! 京都ってそういうスポットたくさんありそうだし」

「くづきちゃんは、京都、詳しい? 大阪から近いし」

「そうですね。なんどか行ったことはあります」

「じゃ、くづきちゃんがいたら、自由行動も完璧だね!」

「え、わたし、お邪魔していいんですか? おふたりのデートは……」

「ののちゃん……」

「じぶんでじぶんの首しめてるなぁ、うち」


 とはいえ、じっさいにも班行動だろうし、このさんにんで動けたらたのしそうではある。


 などと思っていたら、


「ずっと気になってたんですが」と、くづき。「みきさんのほうは、ののさんのことをどう思っているんですか?」

「えっ⁉」

「ちょ、くづきちゃん⁉」

「あ、あれ、わたし、まずいこといいましたかっ?」

「これが本物のピュアってやつか……」

「どうっていわれても、答えようがないからな……」

「そうだよ。表ではただの友達で通ってるんだから」

「裏では?」

「ただの友達だけど」

「うちとは遊びだったってこと⁉」

「ほら、こんな面倒くさいこというから、だめなんだよ、その話題は」

「な、なるほど……」

「でも、うちのこと、すきだよね?」

「すきだよ」

「お友達ですもんね」

「そうそう」

「あれ?」


 のの、なにか微妙な表情。が、チャイムが鳴ったのでじぶんの席にもどっていった。



【大本みい子 シンガーソングライター】


 O-Motという名義で歌手活動をしている。

 前田あおばたちと学生時代にバンドを組んでいた。


 よくもわるくも裏表のない性格で、みきに懐かれている。みい子自身もみきのことは気に入っており、なにかと相談に乗ることも多い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ