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朝を歩け。  作者: 維酉
Debut Single【朝を歩け】
16/176

11 戸殿さん

「みきちゃんって、軽音楽部なんだっけ」


 と、うめ。校庭、サッカーボールをぽんと蹴って、みき、


「そう」と頷く。

「ギターとか、弾けるの?」

「ちょっとはね」

「すごいなぁ」


 サッカーボール、返ってくる。足でトラップして、回転を落ち着かせる。それから蹴り返した。


 ちょっと離れたところでは、ゆかとしおがパス練習をしていた。ゆかの蹴ったボール、明後日の方向にとんでいく。それを追いかけるしお。だいじょうぶかな、あれ。


「わたし、Fのコードで挫折しちゃった」

「むずかしいもんね。あれ、やったことあるの?」

「おとうさんがギター持ってて」

「そうなんだ」

「おとうさん、あんまりうまくないんだけどね……あ」


 ゆかの蹴ったボールが、うめのほうに飛んできた。駆け寄ってくる、しおとゆか。


「ごめんね、笹田さん~」

「う、ううん、だいじょうぶ」


 若干、挙動不審になった。人見知りモードに変わったみたいである。みきとは、ふつうに話せるようになったけれど、そういえば、ゆかやしおとはつながりがない。


「気を付けなよ、ゆかー」みき、呼びかけてみる。

「あ、みき~。がんばるねぇ」


 手を振り返される。

 と、そんなところで、先生の声。四人組になって、とりかごー。みき、うめ、しお、ゆか。ちょうど四人いた。これでやるか、と話が決まる。


 はじめの鬼はしお。自分からとりかごのなかに入った。ボールはみきが持っている。念のため、


「ファウルプレーなしな」釘を刺す。

「サッカーはフィジカルだぜ」

「あってるけどまちがってる」うめがツッコむ。

「うめちゃん」

「あ、うん」うめにパス。

「うめちゃんかー」

「わたしもうめちゃんって呼ぶ~。うめちゃ~ん、ぱすみー」

「えっ、あ、うん」

「ゆかでいいのか……?」しお、鬼なのに不安げ。

「ダイレクトパスってどうするの~?」

「もう足で止めてんじゃん」とみき。

「うめちゃ~ん」

「かえってくるのっ?」いいつつ、受け取る。

「うめちゃーん」

「渡さないって」

「うめちゃ~ん」

「み、みきちゃん」

「おまえら、うめちゃん困らせんなよ……」


 みきが取ろうとしたボール、しおが横からカット。あ、ごめんね、と聞こえる。ゆかはしおに拍手。


「わたしが鬼かぁ」うめが入る。

「うめちゃん、しお相手なら殴っても可」

「え」

「みきも困らせてんじゃん」

「あ、すまん」

「ううん、だいじょうぶ」

「ゆかー」しおのボールがゆかに。

「みき~」

「しお」とボールが渡っていく。


 二巡目、ゆかにボールが渡った。みきにパスするつもりが、ボールに足がかすって、よわい軌道。うめ、それをのがさずパスカット。ゆか、うめに拍手して、「あ、自分がミスったんだ~」と歩き出す。


 ゆか、まんなか。


 これ、終わるかな。みき、思ったが、くちには出さない。しお、うめも、なにもいわない。


「これ、終わるかな~?」そしたら、ゆかがいった。

「がんばって、戸殿さん!」

「ゆかでいいよ~」

「……ゆかちゃん!」

「うん、がんばるねぇ」

「あ、あたしもしおでいいよー」

「しおちゃん」

「そーそー」


 お、なんだかうまくやれそう。ほっと安心するみき。おやみたいな心持ちでうめのことを見ていたことに、ちょっと自分で笑いもする。


「どうしたの、みきちゃん?」

「ううん、なんでも」

「みき、パスー」

「おう」


 とりかごの時間、終わるまで、結局ゆかはずっとまんなかだった。



【夏井みき いぬ派】


 軽音楽部の部長で、ギターとボーカル担当。

 うめと一番最初に仲良くなった。


 しおやゆかと一緒にいることが多いが、実は友達が多い。二組の友だちによく古いバンドのCDを借りている。

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