116 ツインテ
三日目の朝。おのおの、部屋で支度をしていると、
「みき先輩、髪型かえてみませんか?」
と、シーにいわれる。みき、困って、
「いや、ちょっと、わたしは、ほら……」
「シー、やめてやれ」と、しお。「ほんとうに似合わないんだ、こいつ」
「うっ」
いつもの毒舌が飛んでこない。ゆか、にこにこして、
「も~、だめだよぉ、わりと気にしてるんだから」
「繊細だもんなー」
「うっせ」
「でもでも、ポニテ以外にもしっくりくる髪、あるかもしれませんしっ!」
反面、一年生はやる気いっぱいである。みき、気乗りしないが観念して、鏡のまえに座る。
「みきをおもちゃにして遊ぶ回」
「しお、おまえはマジでやめてくれ……」
「まーまー。ツインテとかどう?」
簡単に括ってみる。びみょう。似合わないというか、なにかちがうといった雰囲気で、コメントに困る。
「みきさー……」
「わたしがわるいのか? これ」
「さいしょにツインテやるのは、冒険しすぎだよね~」
「わたしとおそろいとかどうですかっ?」
「お団子か。やってみましょう」
シー、いつもかうなの髪でやっているように、さっくり結ぶ。
これもびみょう。やはりどう反応すればよいかわからない。
「うーん、かわいいんですけど……」かうな、腕を組んで、「やっぱりイメージが強すぎるのかな」
「それはあるかもね。みき先輩といえばポニテ、みたいな先入観」
「というか、みき、なんでずっとポニテなんだー? たまにちがうの試してるけど」
「おまえらが似合わないっていうからだろ……」
「だって、わたし、ポニテすきなんだもん~」
ようするに、ゆかの好みだった。
「あ、じゃあ、ポニテを残しつつアレンジするとか……」
「ナイスねねちゃん、それいいかもっ!」
ねね、慣れた手つきで三つ編みのポニーテールをつくる。いままでより、ずっといいかんじ。
「ゆかさん、どうでしょう」と、しお。
「これならゆかちゃんも納得~」
「そう……」みき、なんともいえない表情で、「でも、このくらいなら恥ずかしくないし、いいかも」
「本音が漏れてるぞー」
「ねねちゃん、ほかにもあるっ?」
「えっと、そうだな……」
「あ、ごめん、ちょっと待って」みき、ほどかれるまえに、「しお、わたしの携帯で撮っといてくれない? 後学のために……」
「よかろう」
で、いろいろと髪型を教えてもらう。もちろん、すべてカメラに収めておく。
結局、気に入ったのはさいしょの三つ編みアレンジだった。今日いちにちは、これで過ごしてみることにする。
「ありがとうね、ねねちゃん」と、みき。「わたし、こういうのはあんまり得意じゃなくて」
「い、いえ、大したことは……!」
「ねねちゃんはすごいね」と、シー。「わたしの髪も結んで」
「あ、う、うん」
頼まれると、断れない。
「ツインテにしよう」と、かうな、たのしげに。「ぜったいに!」
「ぜ、ぜったいに……?」
「とびきりかわいいのにしよう、ぜったいに!」
ねね、困惑しつつ、ツインテを編む。シー、まんざらでもなさそうだった。
【大元みい子 平川高校教諭】
平川高校の教諭。
いろいろとルーズな、軽音楽部の顧問。
今年の夏の目標は「運動すること」……なのだが、めちゃくちゃ暑くて一日目にして嫌になり、ほとんど運動できていない。




