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朝を歩け。  作者: 維酉
Debut Single【朝を歩け】
12/176

07 長話

 冬休み。課題をすすめていたみき、ふと窓の外を見ると、雪が降っていた。どうりで、寒い。


 たぶん、初雪だった。しんしん、しんしん、降っている。


 ながめていたら、携帯に着信。見てみると、グループ通話。


「もしもし」

「みき~、雪だよ、雪」ゆかの声。

「そうだな」

「積もるかな~」

「どうだろうなあ」


 それほどたくさん降っているわけでもない。あまり、積もらないかも。


「うーっす」しおも参加した。「どしたのみきー」

「はじめたのはわたしじゃねーよ」

「じゃ、ゆか?」

「ねぇねぇ、しお、雪が降ってるよ~」

「え、まじで?」


 電話口の向こう、カーテンを開ける音が聞こえる。


「うお、ほんとだ。寒そう」

「すごく寒いよ~」

「外にいるの?」とみき。

「補充授業~」

「そっかあ……」

「授業終わったのかー?」

「終わったよ、今日で最後なの」

「おつかれー」

「おつかれ」

「ありがとお」


 きのう、学校でね、クリスマスパーティーしたの。一日遅れの、ハッピークリスマス。ゆかがいった。担当の先生から、出席者、みんなおかしをもらったらしい。


「ふたりも来ればよかったのにい」

「行きたかねーよ」

「ギリギリで追試合格しちまったんだよなー」

「裏切り者~」

「非情なしお」

「みきはもっと非情だろー」

「ちょっと真面目なだけだよ」

「あ、焼き芋だ~」

「焼き芋?」

「ゆか、あたしのも買っといてくれ」

「わたしのも」

「しょうがないなぁ。みきの家に集合ね~」

「またかよ」

「一昨日行った」

「じゃあ、わたしの家? それともしおの家?」

「うちくんの?」

「わたしは構わねーけど」

「いいぜ。ふたりがそんなにあたしん家に来たいってんなら」

「しゃーねーなあ。行ってやるよ」

「焼き芋~、みっつ~」

「掃除すっかなあ」

「じゃあ切るぞー」

「それはダメだよ~」

「なんで」

「だって……みきの声、ずっと聞いてたいもん」

「おまえはわたしの彼氏かなにかか」

「みき依存症」

「まさにそれかも~」

「はた迷惑な病気だな」


 いいつつ、勉強机のうえ、広げたテキストたちを片付ける。ゆかも、しおも、通話、やめる気がないらしい。

 ずっとしゃべっている。なに着て出ようかなと、考えながら。


「彼氏かあ」

「どしたの、ゆか」

「みきの彼氏さん……」

「どーせイケメンだろ……」

「面食いじゃねーし。そもそもいねーし」

「みきみてーな完璧超人、嫁にこねーかなあ」

「夫の間違いだろ」

「みきと結婚したい~」

「うっせ」

「ツンデレでー」

「料理がおいしくて~」

「かわいくてー」

「ポニテが似合って~」

「……うちにこない?」

「いまから行くよ。友達としてな」

「友達から始めましょうっていう」

「あのパターンだねえ」

「ちげーって」

「この電話、いつまで続けよっかあ」

「ゆかの裁量」

「じゃ~、あと二分!」

「びみょい時間だなぁ」


 二分なんて、あっという間。

 ちょっと話したら、ゆか、「あ、もう二分」。


 すぐ行くよ。みき、しおにそう告げてから、電話を切った。


 準備を終えたら、玄関、開け放つ。寒風吹きすさぶ中、小さな雪の粉、マフラーに触れて消える。


 一月が――年の瀬が、もうすぐそこにいた。



【戸殿ゆか Dr.】


 軽音楽部、ドラムス担当。

 成績は控えめ。


 軽音楽部を再開させようといった張本人。幼少からピアノを習っており、腕はなかなかのもの。ドラムはなんとなく選んだ。

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